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48 最後の

人工呼吸器をつけだしてから
母は言葉を発することもままならなく

もちろん飲み食いはできなくなった。

最後に口にしたのは、オロナミンC。

母が必死に、何かを私たちに伝えようとしてくれた時
頑張って聴き取った言葉が『オロナ』だった。

嚥下機能は低下していて、誤嚥性肺炎の危険もあった。
吸う力だってもう殆どない。

家族みんなで、オロナだって!!どうしよう!!と考えて
口腔スポンジにオロナミンCを染み込ませて口に入れた。

ガブっと噛んでしまうのでスポンジを噛み切ってしまわないか
ハラハラしたが、かすかに口を動かし吸ってくれた。

なんか、シュワシュワのみたいな〜!
って前はよく言ってたっけ。

この世で最後の飲み物はどうだったかな、少しでも味わえてたらいいな。


夜には、言葉にならない声を頑張って発して私たちに
伝えようとしてくれることが度々あった。


伝わらないもどかしさ、イライラ、悔しさ。

わかってあげられなくて、ごめん、ごめん、ごめんね。

体力を使って、必死に伝えてくれてるのに

喉は空気だけが通る。
言葉になりきれなかった、乾いた音だけが響く。

呼吸は体全身で行っている。喉を通る空気は細く音をたて、
どうしても苦しそうに見える。

終末期の患者さんは苦しそうに見えても実際は苦しく感じていないという。
(自身の二酸化炭素濃度を上げて、意識を朦朧とさせて痛みを感じないようにしている、とか何とか。。)

お医者さんも
「苦しそうに見えても、実際は痛みを感じていません。なので表情を見るようにしてください。眉間に皺が寄っていたら苦しいかもしれませんが、そうでなければ大丈夫です。」と言っていた。

「痛い?」「苦しい?」眉間に皺が寄っていなくても、どうしても聞いてしまう。
そんな時、母はしっかり首を振ってくれた。

私たちの声、届いてる!
私たちを心配させないように、必死に伝えてくれているんだ。

「ちゃぴも疲れたよ〜!寝ろは!って言って〜」

「。。。。」


お母さんの口パク「ね ろ は」

しっかり私に届いたよ。




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