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55 テレビの時間


一人暮らしのアパートで、私はテレビは見ない。

しかし、実家に来てからは母の部屋でテレビをよく見ていた。


母がいなくなって数日経った夜。

リビングで流れるテレビをみて、

「あれ?この番組いつも見てたっけ?」

独り言を言って気づいた。
この時間にテレビをみていなかったのだ。

ーーー21時。
寝そうな母を起こしながら歯磨きをしたり
体を拭いたり
顔も身体も保湿をした。

母と話しながら出来るときもあったが
殆どが寝ていた気がする。

姉と二人でやることもあれば
私一人で行う日もよくあった。

ーーー

あぁ、この時間だったからか。

毎晩、
母のケアをする時間。
母と触れ合う時間。
母との大事な時間だった。


呼ばれれば駆けつけ、
部屋に誰もいなくなってしまえば
私がそばに行くようにした。

もう、遠い遠い昔のように感じている。
随分昔から母は居なくなってしまったようにも思う。

どういう理由でこの気持ちになっているのだろうか?

受け入れたくない気持ちからなのか、
それとも本当は「受け入れ」に近づいているのか。

本当のところよくわからない。

しかし
元の生活に戻りたくない、そんな寂しさは  まだしばらく私の中に、居たいらしい。



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