見出し画像

なりたい自分になる――他人のカネで

自分磨きにかける金などない

金がない。

筆者は、元より強烈なギャンブラーであった。
結婚した時には借金が信じられないほどあったし(しかも親に肩代わりしてもらった)、子どももすぐ生まれた。

加えて、筆者は自己啓発というものをほとんど憎むレベルで嫌っている。
だいたい、そんなものうまくいかないから自己啓発本があそこまで売れるのだ。なぜそこがわからないのか理解に苦しむ。

ツイッターで「#読書好きとつながりたい」とハッシュタグを入れると大量の「自己啓発本を読書と言い張る連中」がいいねを押してくる。君たちが読んでいるのは文章ではない、ただの文字だということをご理解いただきたいところである。

自分磨きにかける金などないのである。

きっかけは「ブチギレ」

ある時、筆者を心から怒り狂わせるようなことが起きた。
筆者が今、大企業でweb周りの仕事をしていることは先述の通りであるが、自分のプロダクトについてページを作るのをwebデザインチームにお願いしたところ
「無理です」
と一言で返ってきた。

その時に筆者は決意した。「こいつ絶対シバく」と。
確かに筆者は左遷部署の人間である。
だが、正当に幹部の了承も得て行ってきた発注したプロダクトのページを作ってもらえないとあってはたまらない。

実は社の慢性的な問題も表している。
もともとweb周りの部署が左遷部署であるということは、そもそもがネットでプロダクトをどう見せるかとかに全く関心がないのだ。
だが、最近、社のトップが「ネットを強化する」とか言い出した。そこで「デジタル人材募集」みたいな社告が出たのだ。しかも100万円まで出すというではないか。筆者はこれに飛び乗った。

「ワイが作ったオモシロイもんを、ほかのデザイン小僧なんかに触られてたまるかい! ワイが一通(一気通貫)で通したろやないかい」

筆者は怒涛の勢いで会社の幹部に直談判し、部長の推薦状を取り付け、実績を死ぬほどアピールする企画書を作って、そして通った。

募集倍率10倍を通った。むろん、左遷部署では筆者だけである。

会社の研修で講師を務めたこともあるし、査定はほぼ最高評価で通してきたので実績面には自信があった。
問題は権力の構造に押されないかという問題だけ(→参考記事「会社でムカつくことをいわれたら」)だったので、そこは冷静な評価に落ち着いたことを評価したい。

自分の金で自分を磨く愚かさ

そもそも、ネット関連に非常に弱いわが社で、若手は大変な不安に駆られている。
なんかネットっぽいことをかじりながら、日常の仕事に忙殺されている。先日、研修で同期が集まる機会があったがその場でも多くの人間が不安を口にしていた。

期せずして、筆者は左遷部署に行って減った分の給料は、こういう形で回収したし、今通っているwebデザインの専門学校に行く金は会社に請求書払いをしてもらった。今度買ったadobeの関連の一式は会社に金を出してもらうことが決まった。

もともとwebが担務だから当然ではあるが、筆者はなにも不安を抱えていない。むしろ、希望にあふれている。これから新しい武器を手に入れることが楽しみでならない。

すでにかなりの裁量を得ているし、仕事はそれなりにエキサイティングだし、社内で「左遷部署である」ということ以外は居心地が良いのでこのまま会社に居続けるつもりだし、筆者のつくったものを世に知らしめる機会もますます増えていくだろう。

筆者は自分磨きに金をかけない。そんなことをするくらいだったら、幼い2人に服を買ってあげたい。さらに金が余っていたら妻にプレゼントをしたい。筆者は自分に金をかけるべきじゃない。それが、夫であり、父であるものの役目だ。

だから、筆者は仕事で証明する。自分に投資させる。
筆者は自分のプロダクトが生み出した日々日日の収益は常に計算している。損益分岐ラインをしっかりと示し、その上で投資させる。そしてそれを会社に還元する。誰よりも忠実に会社に尽くす。だから、筆者は自分磨きに金をかけない。金は会社に出させる。

だから自己啓発や、なりたい自分を探している人たちは、今一度地に足つけよう。
いくら金をかけても誰も、そんなあなたを求めていない。
いつだって、何者かになりたいのは自分だけなのである。
あなたは、あなたのままで素晴らしい。金は誰かに出させよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?