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「日本型教育」は失敗なのか?令和の日本型教育に向けた成果と課題の整理(中教審答申を読む)

はじめに

<本稿の結論>
中教審答申が示す「令和の日本型教育」を3つのポイントで整理した。
① 日本型教育の強みと課題の整理。
② 「個別最適な学び」と「協働的な学び」の両立。
③ ICTの活用は必要不可欠。

以前の記事では、中教審答申を特別支援に注目して勉強してみた。

そこで本稿では第1部の「総論」に注目し、「令和の日本型教育」とは何かについて,勉強した内容をまとめてみた。

改めて本文と概要のリンク

ちなみに答申の総論は、5つの章で構成されている。

1.急激に変化する時代の中で育むべき資質・能力
2.日本型学校教育の成り立ちと成果、直面する課題と新たな動きについて
3.2020年代を通じて実現すべき「令和の日本型教育」の姿
4.「令和の日本型教育」の構築に向けた今後の方向性
5.「令和の日本型教育」の構築に向けたICTの活用に関する基本的な考え方

全部読むとめんどくさいので,今回は答申の核となる考え方とそれを実施するための3つの方策として整理する。

結論から言えば,今回の答申の核となる部分は、次のように整理できる。

・中教審が提示している「令和の日本型教育」とは抜本的な刷新ではない。つまり、これまでの教育のあり方を根本的に否定するのではなく、これまでの教育が積み上げてきた成果を強化することが目的である。

それでは,令和の日本型教育とは何かを探っていこう。

日本型教育とはなにかーー成果と関わって。

中教審答申によれば、日本型教育とは次のように定義されている。

(「日本型教育」とはー引用者注)学校が学習指導のみならず、生徒指導の面でも主要な役割を担い、様々な場面を通じて、子供たちの状況を総合的に把握して教師が指導を行うことで、子供たちの知・徳・体を一体で育む(中教審答申 2021: 5)

このように、日本型教育とは、子供の知・徳・体を総合的に育むものであると定義されている。こうした日本型教育は、すべての子供たちに一定の教育を保障する平等性と全人教育を特色としているのだ。

加えて、こうした平等と全人教育は、日本型教育が「子どもたちの発達・成長の保障する役割や、人と安全・安心につながることができる居場所・セーフティネットとして、身体的、精神的な健康を保障するという福祉的な役割」を有することに結び付いていることも重要な特色である(中教審答申 2021: 7)。

すなわち、中教審のいう「日本型教育」とは、学習指導と生徒指導を組み合わせた平等かつ全人的な教育であり、それが結果として社会福祉機能をも果たす制度となっている、ということになるだろう。

重要なのは、こうした「日本型教育」を中教審が我が国の教育行政の強みとして認識している点であろう。

家庭の経済状況や地域差,本人の特性等にかかわらず,全ての子供たちの知・徳・体を一体的に育むため,これまで日本型学校教育が果たしてきた,①学習機会と学力の保障,②社会の形成者としての全人的な発達・成長の保障,③安全・安心な居場所・セーフティネットとしての身体的,精神的な健康の保障,という3つの保障を学校教育の本質的な役割として重視し,これを継承していくことが必要である。
(中教審答申 2021: 23)

以上のように中教審答申はこれまでの「日本型教育」を否定し、抜本的に改革するのではなく、継承していくという姿勢は明確である。したがって、答申の中身は基本的に「日本型教育」の強みを強化し,着実に実施するためには,どのようにすればいいのか,という視点で書かれている。

こうした答申の核が分かれば、教員採用試験の正誤問題などは楽に説くことができる。つまり、これまでの日本教育を否定する選択肢は、ほとんど間違いといっていいだろう。

「日本型教育」の課題ー「令和の日本型教育」に向けて

それでは,「日本型教育」の強化版である「令和の日本型教育」に向けて、中教審は今日の教育が直面している課題をどのように整理しているのであろうか。中教審答申は今日の学校教育が抱えている課題を次の5つの項目で整理している。

① 子供たちの多様化
② 学習意欲の低下
③ 教師の長時間勤務による疲弊
④ 少子高齢化、人口減少の影響
⑤ 新型コロナウイルス感染症の感染拡大により浮き彫りとなった課題

このうち、「令和の日本型教育」に直接結びつく諸課題を3つにまとめてみた。

① 子供たちの多様化

・インクルーシブ教育の推進により、特別支援を必要とする子供も通級に在籍し、授業を受けている。
・日本語を母語としない子供の増加
・相対的貧困状態にある子供の増加

② 将来の教育を担う人材の不足

・長時間の時間外勤務が常態化
→病気休職者も5000人/年
・採用倍率の低下傾向が続く。
・教師不足の地域がある。

③ 情報化の加速度的な進展に関する対応の遅れ

・「言語能力や情報活用能力、デジタル時代における情報への対応」などの諸課題がある。
・子供たちにとって、デジタルデバイスが「『遊び』に多く使う一方『学び』には使わない傾向」にある。

こうした課題にどのように対応していくのか。答申の内容を上記の3つの課題に対応して,3点に整理してみた。

「令和の日本型教育」構築に向けた3つのポイント

① 「個に応じた指導」と「協働的な学び」の両立

・新学習指導要領で提示された「個に応じた指導」の一層の充実
⇒子供の実態に応じたカリキュラム・マネジメント。
 生徒理解を第一にし,きめ細やかな指導・支援を行う。
・「個別最適な学び」が「孤立した学び」にならないように,「協働的な学び」の充実をはかる。
・「個別最適な学び」と「協働的な学び」の両立に向け,ICTを積極的に活用していく。

② 教師の人材確保に向けた働き方改革

・チームを意識した組織的・協働的な指導。
⇒学校内だけではなく,地域・家庭との連携も重視。
・人と人の役割分担,人とICTとの役割分担という考えで,働き方改革。

③ ICT機器は必要不可欠。これまでの実践と最適な組み合わせの模索を。

・「令和の日本型教育」にICTは必要不可欠
⇒ICT一辺倒ではなく,これまでの有効な実践との最適な組み合わせを。
・「遊びのICT」だけではなく「学びのICT」も,への価値変換。

以上が,「令和の日本型教育」構築に向けた諸課題である。

最後に,今回の答申の核の1つとなっているICTについてふれ,終わりとしたい。

ICTの活用は不可欠。けど,どうすれば・・・が本音。

答申は、令和の日本型教育を実現するためにはICTの活用を必要不可欠なものとして位置付けている。

ICTの活用について、生徒ができること、先生ができることをまとめてみると、

先生目線

・主体的・対話的で深い学びの授業改善
・学校教育の現代化
・学習履歴(スタディ・ログ)などの教師のデータリテラシー、教育データの蓄積・分析・利活用できる環境の整備

子供目線

・ICTの活用を当たり前にする。
・現実社会で行われていることと同じように学ぶ。
・プログラミング的思考
・情報活用能力

大雑把だが,このように整理できるだろう。

ICTを活用した実践の積み重ねはまだまだである。実践をやり,他の実践に学び,自分の実践の修正というサイクルができるよう頑張ろうと思う。



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