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「コミュニティの効率化を図れ!」は、さすがにポジショントークだよね、って話

さきほど携帯からお客様にメールをした。
プライベートのメールではなく、お客様相手なので

田中様 

お世話になります。
・・・・・
・・・・・・・・・

とした。

最近は、多くの会社で社用メールが携帯から確認できるので、LINEのようなチャット感覚とまではいかないけれど即時のレスポンスが可能でとても便利になった。

5分くらいネットサーフィンしてダラダラした後に携帯を確認すると、先方からすでに返信が届いていた。

やっぱり。
冒頭には「お世話になります」がついていた。

そして僕は当然のごとく、返信メールの冒頭に「お世話になります」を入れる。おそらく次くる返信には「お世話になります」が入っているだろう。

僕と取引先は、この短い時間で何回「お世話になりあう」つもりだろうか。
毎回狂ったように無限の「お世話になります」ループが始まり、その繰り返されるやりとりに僕たちは悲喜こもごもだ。

最初に僕がお世話になった。
次に相手がお世話になってくる。
すると次は僕がお世話になる。
今度は相手。

だから、次は満を持して僕がお世話になる番だ。アメリカ式にHi!やHelloなんて気軽すぎてダメだ。

一日中、「お世話」になり合うことが僕たちの礼儀なんだ!

パソコンではこれを打ちこむのに1秒もかからない。

「o」が押されたのとほぼ同じタイミングで画面上に予測変換の最上位に「お世話になります」が現れてくれる。

即座に「↓」を一回押して「Enter」だ。すると望み通り7文字が表示される。

「お世話になります」

今日もスムーズにできた。

一日に何度も「お世話になります」は明らかにおかしいが・・・

「時間術」を提唱するスゴイ人たちは、短いメッセージをスピーディに、テンポよく回していくのが「できる社員」のコミュニケーションと言う。

一回送信するあたりのメッセージは短く、そして卓球のようにテンポよくラリー。これが大事。

ラフなチャット形態だと言葉が流れるように消費されていくので、形式的な「挨拶」も「細かい敬語」にも気を配らなくて良い。

読み手がリラックスした状態でやさしい気持ちで読んでくれるので、少々の誤字脱字も「愛嬌」で見過ごされるわけだ。

「変身ありがとうございます。」

もう仕事中に、何度もお礼されてきた。
僕は何度も変身している正義のヒーローである。

しかし、この卓球のようなテンポの良いラリーになれてしまうと、古典的なメールでは注意が必要である。

先日、若い女性が担当窓口のパートナー企業から「業務提携の内容確認」を求めるメールが僕に届いた。

「おひさです!儲かりまっか?」
が冒頭でね。
※「儲かりまっか」は、大阪では古くからの商売人魂の挨拶。受けた側は「ぼちぼちでんな〜」がベストアンサー。この時は彼女はワザと面白おかしく使用したにすぎないケド。

普段のメッセージの延長すぎて、さすがに思わずふいた笑

このメールにはPDFも添付されている。
重要な内容で社内の関係各所にこのメールを転送して共有しなければならない。

このまま転送すると、、そうだな、、少し考える、、、、、

「やばいだろ、どう考えても」
となるわけだ。

僕と彼女の普段からのラフなやりとりを知らない人達からは、
「なにこれ。え?若い女の子と既婚のアラフォーおっさんがどんな関係?」
と、あらぬ疑いをかけられるし、

「あの会社の担当窓口は馴れ馴れしい。常識的なメールが書けない」
とか
「非常識なヤツだ」
と悪く言われてしまうだろう。

だからこのメールを受け取った僕は、社内関係者に転送する前に小細工して、彼女の文章を「お世話になります」にそそくさと修正したのだ。

「時間コスパ」のために、メールの「お世話になります」や「電話をかけること」は不要なのか?

「『いつもお世話になっております』をタイピングする時間がもったいない!そういうことを強要する人と付き合わなくていい!」

「突然の電話は人の時間を奪うだけ。メールで残した方が仕事としてはうまくいく。電話なんてとるな!するな!」

こういった成功者や有名人の「時間術論者」の「言い切り」の提言に「ハッ」と考えさせられて圧倒される。

こういう主張はたしかに極端でわかりやすく、なおかつ最先端っぽい雰囲気を醸しだしているので、なかなか若者からウケがいい。
たしかに自分にとって無駄なことに少しでも時間をとられないのは理想ではあるが、、、

よし!明日から電話とらないぞ。
よし!顧客の重役に「さて、要件ですが、、、」から始めよう。

って、なるわけがない。
さすがにこれはポジショントークだ。

実際、ビジネスにおいて効率化を求めようとすると、取引相手との力関係を無視することができないし、これが大半を決定づける。

本を書くような成功者や有名人のように「仕事を選べる人」は、こうしたラフなコミュニケーションに不満をもつ相手とは「一緒に仕事をしない」、「電話に出ない」といった形で、相手を選別することができる。

でも、そんな人はごくごく限られた人で、その限られた特別な人間になれるほどの際立った能力がないその他大勢の僕のような人達は、せめて「お行儀よく」しておいたほうがいい。

ビジネス上でいう「コスパ」は、作業の時短ではなく「信用できる人」と素早く思われることだ。

「メールに『お世話になります』を入れない」ことや「電話をしない」くらいで、時間のコスパが良くなることはないだろう。

むしろ変な誤解を生んで、それをカバーするための立ち居振る舞いにより「時間コスパ」が悪くなるのではないだろうか。

「常識にとらわれない」とか何とか言って、「いつもお世話になっております」程度のことを言う必要がないと考える若者を取引先に紹介できるか?と言ったら、現実問題としてできない。

「電話なんて仕事ができない人のツールだ!」と一方的に言って、簡単に取引先がそれにつきあってくれるとは到底思えない。
緊急事態に「なぜさっさと電話しなかったんだ!」とブチギレされて、「え、メールしましたけど」が通用する会社がどれだけあろうか。

いずれにしてもそのような簡略化が許されるのは、「相手とも信頼関係が築けている」「共通の理解がある」というときだけであり、一方向から「時間コスパ」だけを考えて取り組むことではない。

結局多くの人は、意味はなくとも「いつもお世話になっております」という文面からはじまるメールを打って、必要であれば電話でリアルタイムのやりとりをしながら話を進めてくれる人と仕事したいのだ。

だって、同じような常識やマナーをもっている人とのほうが、仕事がスムーズにいくから。

それを「古い」とか「今どきのITを駆使したコミュニケーションを活用すべし」として、一蹴したいならすればいいけれど、その結果、ただの「インテリぶった非常識な人」に成り下がるかもしれないということは、頭の片隅に置いておいたほうがいいと思う。

効率の話でいえば、「いつもお世話になっております」と予測変換を駆使して1秒で打っただけで「まともな人だ!」と認識してもらえるなら、これって超最強コスパの気がするけどどうだろうか。

コミュニティに関する効率化は、人間関係ができた上で成立する

僕は過去の記事で、社内のマナーや常識、謎ルールにとらわれすぎて旧態依然としている体質を問題視して指摘してきたが、だからといって礼節を軽んじるのはちょっとちがうと思う。

いい仕事をするためには、相手にとって「信頼できるパートナー関係を築くこと」が重要である。そのためには、処世術とされるマナーや常識、礼儀といったやや古めかしくて非効率な要素もまた必要と思う。

作業の効率化に焦点をあてたインフルエンサーの言葉や、ノウハウ本が幅を利かせることで、叩きやすい古臭いもの全てが軽視されている気がして、なんだか心配になる。

仕事の効率化は、先進国で最低の生産性の日本においては最大の課題であることは間違いない。しかし、コミュニティに関わる部分の効率化は、いい人間関係を築いてからではないかな、まずは。

その順番を間違えないようにしないとね、って。そう40代のおっさんは思うが若い子はいかに。

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