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モチベーション低下原因「心理的リアクタンス」と対処法

「選手にもっと強くなってほしい!」「選手にいろいろなことを伝えたい!」

熱い想いを持って指導にあたる【頑張るコーチ・監督・指導者みなさん】にぜひ知ってもらいたい!

良かれと思って熱心に指導している指導者の行動が、実は選手のモチベーション(やる気)を失わせ、下手すると成長を阻害している可能性があるんです。

今回の投稿では、選手の「モチベーション」に焦点をあてて、それを下げる要因になる「心理的リアクタンス」についてお伝えし、選手のチベーション上げるための対処法についてのアイデアを共有させていただきます!


モチベーション(やる気)とパフォーマンス

 心理学の研究では、モチベーション(やる気)とパフォーマンスの関係を調査した研究はたくさんあります。

さまざまな研究で、モチベーションが上がるとパフォーマンスが上がるということは明らかにされています。

スポーツ、勉強、ビジネスなどジャンルは問わずです!!

だからこそスポーツ指導者は、技術・戦略の指導ももちろんですが、選手のやる気をいかに上げられる指導をするか、腕の見せどころということになりますね。

もしかしたら「モチベーションは選手自身で高めるものだ」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、やる気は指導者とのコミュニケーションや周囲・環境に大きく影響を受けるのが事実です。

だから、

モチベーションを選手だけの問題にするのはもったいない!!!

と思うのです。

指導者のサポート次第で、選手の能力の開花の度合いが変わるんですから、やる気を引き出す指導もできた方がよいのではないかと思います!!

ということで、やる気に関してとても分かりやすく読みやすい「モチベーション大百科」でまとめられている研究の結果を用いて、指導現場での事例を、効果的な指導方法を具体的に挙げてみました。

もちろん、状況によって異なる選択が必要になるときもあると思いますので、そこは臨機応変にですが、基礎知識として参考にしてもらえればと思います!


実は選手のモチベーションを下げてるかもしれない熱心な指導

早速ですが、このような指導についてどう思いますか?

例:指導者が、選手の成長に必要だと思ったことがあったら、「これはやったほうがいいからやりなさい!」としっかり強く伝える。

 日常的によくあることなのではないかと思います。でもこの指導、実は選手のモチベーションを失わせている可能性ありです!!

これちょっと衝撃ではないでしょうか!?

この要因として実は、人はもともと「自分で自分の行動を決めたい」という欲求が備わっていて、他人から強制されると無意識に反発したくなる気持ちが出てくることがわかっています。

ジャック・ブレーム博士が研究でこの心理を明らかにしてこの心理を

「心理的リアクタンス(抵抗)」

と示しています。

「早く勉強しなさい!」って言われると、

「いまやろうと思っていたのに、、、」

とやる気がなくなるのもこれにあてはまります。


そのため指導者は、

「だれでも心理的リアクタンスという心理状態になることがある」

ということを知った上で、選手とのコミュニケーションを工夫すると、指導者としての視点が一つ増え、指導の幅が広がるのではないかと思います。


じゃあ、選手に「実行した方がいいこと」を伝えるためにはどうすればいい?

この「心理的リアクタンス」をふまえた上で、指導方法を考えると。指導者が選手に対して、モチベーションを上げて行動してほしいと思うのであれば、

①選手が自ら「その行動を選ぶことが大事だ」と気付くことができるようなコミュニケーションを取ること

②選手が、自主的にその行動を選ぶ過程を踏むこと

が必要なんです!

 例えば、指導者が選手に対して、「もっと走り込みをした方がいい」と考えていた場合

「スタミナが足りないから走り込め」

と言うのではなく、

次の試合に向けた課題を話し合いながら、足りないものを一緒に洗い出し、そこから選手自身に何をするのか決めさせる

というステップを踏めるといいですね。

選手の出した結論が「走り込み」ではなかったとしても、まずはその意思を尊重することがモチベーションの源になります。


指導者からするとなかなか歯がゆいですが、コミュニケーションを取った上で選択させ見守ることが、選手の心の底からのモチベーションが高まる可能性を上げることに繋がります!!


私の反省

 私も自分の指導方法を思い返すと、選手にこれやった方がいい、あれをした方がいいなど、ゴリ押ししていることが結構ありました。

私がもっと、選手の考える力を磨けるようなサポートをしていたら、競技もさることながら、より人間としての大きな成長に繋がったかもしれないと、反省しています(泣)

「時間がもったいない。効率が悪い。」
「間違いを間違いだと教えるのが指導者の役目」
「良くないのに放置するのはおかしい。」
「やらせてれば、だんだん選手もわかる。」

という考えももちろんあると思います。競技を始めて間もない頃は、まず基礎を叩きこむ過程は必要です。

しかし、選手の最大限の成長には、次のステップとして競技に向かうモチベーションを高めることは大きな鍵になります!

選手に対して、いまどのようなアプローチをするのがベストなのか、見極めながら、選手のモチベーションをアップさせる指導をいろいろと試して、経験値を高めていけるといいですね。


補足:私の選手時代の反省

もう一つ、私が選手のときのことを思い出すと、やはり誰かに言われたからやることって、うまくいかないことを自分事にできていなかったと思います、、、

言われたからやるけど、うまくいかないとどこかで指導者のせいにする気持ちが湧いてきてしまいました。

反省していない、失敗から学んでいなかったと思います。。。(泣)


だからこそ選手も自分自身で「心理的リアクタンス」に陥っていないかどうか評価できると、良い選択ができるのではないかと思います。

例えば、選手だったらこんなステップを意識できたらよさそうですね。

①「もっと走りこめよ!」と指導者から言われる

②自分が瞬間的に心理的リアクタンスの状態になり、走り込みたくなくなる。めんどくさい、うざい、やる気がなくなる。

③いま自分が心理的リアクタンスに陥っているかもと疑うようにする

④本当に走り込みをしなくていいのか自分に問う

⑤指導者は自分のことを思ってアドバイスしてくれていることを思い出す

⑥指導者からのアドバイスを踏まえて、いま自分が実践すべきことを自分で決める

心理的リアクタンスは瞬間的に沸き出す「感情」ですから、その感情になるのはしょうがないです。

でも、本当に強くなる選手はこの感情に支配されて終わることがないですよね!

③~⑥のように、一度立ち止まり、謙虚な気持ちで周囲の言葉に耳を傾け、自分の状態を客観視できたら、、、

最善の決断を積み重ねて、一歩一歩着実に成長していける選手になれるのではと思います。


<参考>
・池田貴正(2017)図解モチベーション大百科
・深田博己. (1997). 心理的リアクタンス理論 (1). 広島大学教育学部紀要. 第一部, 心理学, 45, 35-44.
・Brehm, J. W. (1968). Attitude change from threat to attitudinal freedom. In Psychological foundations of attitudes (pp. 277-296). Academic Press.


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