プロジェクトリーダーに必要な”中間地点のマネジメント”とは?
最近、テレビでこんな話が紹介されていました。
ある有名なイタリアのオペラ歌手が、ロックダウン中にベランダで歌唱し、街中を勇気づけた。
しかし、ある時から歌うのをやめてしまった。
増え続ける感染、最前線で戦っている医療従事者、悪化する状況の中で歌う気持ちが湧かない、と。
その後、ロックダウンが解除され、日常が少し取り戻された時、再生の象徴となるべく街に出て再びオペラを熱唱し、多くの人を勇気づけた。
この方の行動にすごく胸を打たれましたが、この話には”開始〜中間〜終了”における気持ちの変化が含まれています。
私たちの日々の生活や仕事の場面でも、常に全力投球している状態が続くということは中々ないと思います。
私の場合、プロジェクトリーダーを初めて任された時、「全力投球するぞ!」と意気込んで失敗した経験があります。
目標を掲げ、課題があればすぐダメ出し、ことあるごとに首を突っ込む、メンバーの声に耳を傾け過ぎる、とにかく何でも自分が管理する、自分の価値観を押し付ける・・・
身の程も知らず、ペース配分もできず、ただ全力投球して結果が伴わない・・・
当然、チームも最短距離で全力疾走してゴールに辿り着く、なんていうことはありません。
最初は勢いで何とかなったり、周りが支えてくれたりしても、結果が伴わなかったり、自分のやり方の弊害が出てきたりすると、求心力やモチベーションも下がってきてしまうのです。
チームをマネジメントするには、自分が全力疾走したり、無理にスタートダッシュするよりも、プロジェクトのゴールに向けて一人一人が最高のパフォーマンスを出せるようにする、要所要所での力の引き上げ方が大事になってきます。
そんなプロジェクトをマネジメントする上で参考になる考え方として、”中間地点のマネジメント”について紹介したいと思います。
中間地点の「おっと大変だ効果」
NBAバスケットボールのハーフタイム時点で勝っていたチームと負けていたチーム。最終的に勝つ確率が高いのはどちらだと思いますか?
答えは、当然勝っていたチームです。
しかし唯一例外があり、1点差で負けていたチームの方が試合に勝つ確率が高いそうです。
前半負けていたチームは、ハーフタイムに戦術を練り、チーム一丸となって後半開始早々に一気に逆転します。
僅差で負けている中間地点で、「おっと大変だ!」「今こそやらねば!」といった気持ちが芽生えてきます。
この心理的効果は、ダニエル・ピンク著『When 完璧なタイミングを科学する』で、”中間地点の「おっと大変だ効果」”として紹介されています。(著者ダニエル・ピンクは、10年後に当たり前になっていることを、誰よりも早く、わかりやすく表現しているので、本当におすすめです。)
”不振を刺激に変える最善の策としては、次の3つがある。1つ目は、中間地点を意識すること。気づかないままにしておいてはいけない。2つ目は、あきらめるきっかけではなく、目を覚ます機会としてそれを用いること。(中略)3つ目は、中間地点で、ほんの少しだけ自分がリードされている、または後れを取っていると考えてみることだ。これによってモチベーションが活性化される。”〈ダニエル・ピンク〉
本書を読んで、この効果をマネジメントに活かすとしたら?ということを考え、2つのアプローチがあると思いました。
1つは、チーム全体に向けて、もう1つは個人に向けて、です。
チームの中間地点 〜サッカー日本代表 岡田監督〜
ワールドカップ南アフリカ大会の直前に、岡田監督は非情な決断をしました。
ゲームキャプテンを替えて、GKを含む何人かのレギュラーを入れ替え、戦い方も従来築き上げてきたスタイルから大きく方向転換しました。
その昔も、ワールドカップ初出場が決まった後、日本代表の中心メンバーであった三浦知良選手、北澤選手を代表から外す、ということもありました。
こうした決断は、大会直前を重要な中間地点として、修羅場のような状況を生み、チームの意識を引き締め直す上で、効果的なマネジメントだったと思います。
個人の中間地点 〜競馬のジョッキー〜
チームに向けた場合とは違って、個人に向けたアプローチは、より一層、個性や長所に寄り添った臨機応変さが求められます。
競馬のジョッキーをイメージすると良いと思います。
馬それぞれ異なる性格や長所をとらえて、力が引き出されるような手綱捌きやムチを入れています。
きっと、馬の個性やレース展開に合わせて、最も良い中間地点で“おっと大変だ効果”を使っているのでしょう。
人それぞれ仕事の中間地点では、「自分はかなり頑張った!」と満足しきっていたり、モチベーションが停滞している時があると思います。
そういう時に、一歩先を行く人の話や、先を行くためのアイデアや問い掛けを提示することで、「よし、もっと頑張ろう!」と再加速させられるのだと思います。
手綱捌きが上手なマネジメントになろう!
本書に書かれていましたが、人の意欲はU字曲線を描くということが証明されているそうです。
チームも個人も、長期間のプロジェクトでも1日の活動でも、人はどこかで緩んでしまう時が必ずあります。
だからこそ、この緩んで落ち込んでしまう時に、再び引き締める中間地点を意識し、ゴールに向けて再加速するようギアを入れ直す、ということが大事なのだと思います。
正直なところ、過去の自分は先行逃げ切り型で失速してしまうマネジメントだったと言えます。
チームに対しても個人に対しても、中間地点を意識した手綱捌きができるようなマネジメントを目指したいと思います。
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