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老々介護で垣間見た「いつもの朝」に感動〜緊急訪問にて〜

〜 訪問看護の緊急訪問でみた光景 〜

朝5時半の緊急電話

布団の中から夢か現実かよくわからないまま、
電話の着信音に反応し、舌がこんがらがりながらも会社名と自分の名前を名乗る私。

電話の向こうでは、
「忙しい時間にごめんなさいねー」と女性の声。
いやいや、忙しくはない(笑)

ご主人がベッドからずり落ちて
尻もちをついてしまい、何度か頑張ってみたけど
無理だったから来て欲しいとのお電話。

認知症のAさんの介護をされている奥様からのお電話だった。
ご夫妻二人暮らし。

今が、何時なのかもわかっていない私だけど、緊急搬送などは必要ないと判断し「はい、できるだけ早く伺いますね。自宅からなので少々お待たせしますが。寒くないようにお布団をかけて差し上げてくださいね」と言った。
今、寝起きだということがバレて気を遣わせないように、
やたら、ハキハキと。

電話を切って、30秒ほど、ボーっ。
夢の中と現実を混ぜ合わせ、眠気を追払い、
少しずつ現実側にシフトさせる。

顔を洗い、歯磨きをして、
ぺぺっと、化粧水を塗り、眉毛を8ミリくらい描き足たし、
ぱぱっと着替えて、5分後には、玄関を出た。

まだ、薄暗く、鼻先に少しツンとした風を感じながら自転車を走らせた。

途中で、職場に寄り、ユニフォームにチャチャッと着替えて、カルテと訪問カバンを持った。
この辺りで完全にスイッチは切り替わり、ナースモードになっている。
職場を出る頃には、明るくなり、街中も少し早めの朝が動き始めていた。

緊急訪問先で

庭一面に色とりどりのお花達がイキイキと植えてある。一日中、忙しい奥様のどこにお花のお世話をする時間があるのだろうといつも感心していた。
そんな庭を見ながら、早朝の玄関インターホンを押した。

「ごめんなさいねー。忙しい時間に」
いやいや、本当に忙しくなかった(笑)
寝てたから…とは、言わないけど。

Aさんは、ベッドの前にキョトンとした顔で座っていらっしゃった。
寒くないように毛布が掛けられていた。
意外にチカラ持ちの私は、ひょいっとベッドに抱き上げた。

血圧が高かったり、お通じが何日も出ていなくて
排便困難もあったので指示中の降圧剤を服用して頂いたり、
座薬を入れて摘便したりと一連のケアが終了した。

朝のルーティーン

帰り支度をしながら、
Aさんご夫妻の毎朝のルーティンを見せて貰う機会を頂いた。

毎朝の流れを伺うと奥様は朝5時過ぎに起床し、
Aさんのお食事に1時間かかるので6時から朝食。

ここで漸く、奥様が早朝なのに私に
「忙しいのにごめんなさいね」と言われた意味がわかった。
奥様はこの時間には既にバタバタと動きはじめている時間だったので
私も当然、忙しい時間だと気を遣われたのだろう。

奥様は、Aさんを手引き歩行してまずベッドから近くの椅子に座らせた。
そして、温かいタオルで全身清拭が始まった。
ん?今日は、デイサービスでお風呂に入るのになんで?と思い伺うと「あら、だって皆さんに看て頂くのに汚れていたら申し訳ないから」と。
私ならその日にお風呂に入れて貰えるからラッキー♪
とこれ幸いに思い、99%拭かないだろうなぁと思った。
そして、手早く奥様が全介助でお着替えを手伝われた。

食事前にお口のうがいをして入れ歯を入れる習慣があるとのこと。
椅子から立たせて、キッチンの流し台まで手引き歩行をして
立ったままで、コップを持たせうがいを手伝う。
座って、奥様がコップを持ってうがいをさせて、
ガーグルベースンで受ければ、当然速いのにそれを敢えてしない。
出来るだけ時間がかかってもご自分でできることを見守る。
1回毎のうがいの度に、顎までヨダレが垂れてしまうので、その都度奥様は素手で拭って差し上げていた。

お次は、いよいよ朝食タイム。
私が訪問に到着した時には既にダイニングテーブルのランチョンマットに朝食が準備してあった。
しかも、奥様は、パン派。Aさんは、和食派で別々のメニュー。
Aさんのランチョンマットの上には沢山のおかずが並んでいた。
通常の訪問時には、食事風景を見ることはなかったので
Aさんがご自分でお茶碗を持ち上げて食べていらっしゃるとは
思っていなかった。
時間はかかるが、意外にもむせもない。

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そして、いつのまにか私の分の朝食も準備してくださっていた。
とっても幸せな朝食に仲間入りをさせて頂くことができて嬉しかった。
朝陽が差し込むダイニングルームで美味しい朝食を図々しく頂いた。
認知症のあるAさんは私が隣に座って、食事をしても違和感がないのか、全く気にすることなく箸をすすめていた。

最初にも書いたように
庭いっぱいに広がっているお花たち。
いつ来てもイキイキとして、大きなガラスの窓から沢山のビタミンカラーが目に飛び込んでくる。
このお花をお世話されているのも奥様。

そして、なんと言ってもお部屋が常に綺麗で、
すっきり整頓されている。
いつ掃除する時間があるのかしらと思う。
お料理も完璧だし。
夕飯はAさんが好きなお魚料理を
必ず料理するようにしていると言われていた。
買い出しに行く時間もあるのかなぁと心配になる。

案の定、昼寝なんてしたことがないと仰っていた。
隙あれば昼寝をしようとする私とは格が違う。

まとめ
普段なら知ることのない時間帯のAさんご夫妻の朝の風景を見せて頂き、つくづく介護って凄いなぁと思った。

長年の病院勤務から訪問看護の仕事に変えた時に「在宅って凄い!」と
嬉しくなった時のような大きな感動が、ザッパーン(これ、波ね…)ともう一回来た感じだった。

勿論、感動だけではなく、それ以上に奥様の重労働には地面まで掘ってしまいそうなくらい頭が下がった。私なら絶対手抜きをしているであろうところを、奥様の性分では、手が抜けないのだろう。
それがまた辛い。

「もう介護も限界だから施設も考えようかなって思ってる」とポツリと言われた。
これを何年もしてこられたんだからね。
この朝のたった1時間を切り取っただけでも、
本当にどれだけのご苦労だったかは痛いほどわかった。

Aさんもきっと、「いいよ、ありがとなっ」て言ってくれてる。
そんな気がする。いや、間違いないわ。

帰り道の公園の朝陽を浴びたお花たちが
素敵な一連の朝を凝縮していたように眩しかった。

最後まで読んで頂き有難うございます。
久々の投稿になりましたが、これからは、また少しずつ
投稿していきます。(予定!)

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