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『365日 #Tシャツ起業家』と新規事業

『食べチョク』を知ったのは、2020年のICCサミットというイベントがきっかけでした。

ボランティアスタッフとして参加していたICC。登壇者として「りんっ!」と振る舞われる秋元さんをお見かけし、「なんて自信にあふれた人なんだろう。。」という印象をもったことを覚えています。(当日は、こちらの動画で後から拝見しました)

ICCには秋元さんのように起業家の方が多数参加しており、『産業を創る』という目線で挑戦しているので、企業の「新規事業プロジェクトを進める」という目線との大きなギャップを体感させてもらいました。

SDGsや社会課題が注目され、企業内新規事業にも「社会とつながる」ことが必要になってきたこともあり、本書を手に取りました。(ついさっきICCの動画をみたので、なんだか背筋が伸び、文章もカチコチと丁寧になりますがご容赦ください)

「あなたのやりたいことはなんですか?」

企業で働く社員には、上司から「やるべき」仕事がふってきて、「やらなければならない」業務に忙殺されてしまいがちです。新規事業もすくなからず同じ宿命となるケースが多いように感じます。

秋元さんはDeNAから飛び出し、起業して食べチョクに挑戦しはじめた当時こんなことを考えました。

自分のアイデアを形にしたい。そんな仕事に就いて、やりがいを感じたい。そう思ってDeNAに入社したものの、わたしは「本当にやりたいこと」を仕事にできているのだろうか。DeNAでは4つの事業を経験しました。どれも面白く、夢中になって働けたのは事実です。でも、その事業領域に一生を捧げることができるかというと、首を縦には振れません。(p.47)

「この人達と仕事をしたい」「この製品に携わっていたい」というこだわりや信念は、社会人として仕事をする上でとても大切なこと。

「この事業領域に一生を捧げられるか?」「やりたいことは何なのか?」を問い、じぶんを見つめ直す視点は、会社で働く社員も必ずもっているはずではありますが、「どうせじぶんには」とか「いまの会社じゃあ」となし崩し的に諦めてしまいがち。。

なんの問題もなく生きる一日一日。それは過ぎ去る、流れ行くものですが、一生の中でみると日々失っていくものなのかもしれません


信用してもらえない個人ができること

食べチョクの開発が進み、生産者さんへ売り込んでいく中で、秋元さんは「負の遺産」にぶつかります。

全国の生産者さんを回りながら、電話やメールも使って「食べチョク」の説明をし、協力を募りました。しかし、門前払いされる日々が続きます。産直サービスは10年以上前からいろんな企業がチャレンジしてきましたが、どこも大きな規模にできず、農家さんの中にはあまりよく思っていない方も多かったのです。「君みたいな人ってよく来るんだけど、うまくいった試しがないから・・・・ごめんね」と断られ続けました。(p.65)

先人たちの失敗の歴史が、次の挑戦者である秋元さんにとっての障壁に。

「君みたいな人」という、あいまいで距離感のある関係性からのスタート。

うまくいくかどうかわからないことに心身を投じ続けることは、どんな人にとっても不安でストレスで、投げ出したくなる、逃げ出したくなること。それに加え「なんとしても役に立ちたい」と思っている相手である生産者から面と向かって拒否され続けることの苦しさは、やるせない、無力感にすらなってしまうものだったはずです。(勝手な想像ですが、「・・ごめんね」なんて言ってくれない生産者もいたことでしょう。。)

しかし、秋元さんの決意は折れず、曲がりませんでした。

わたしにできることは、「食べチョク」の可能性を信じてもらうこと。そして、わたし自身の熱量を伝えることだけです。もちろん、経験の浅いわたしを信頼してもらうまでには相当時間がかかりました。「中途半端な気持ちでやってるんじゃないの?」という目で見られていた方もいるかもしれません。まだなんの実績も出せていないわたしを信じてもらうのは、とても難しいことです。(p.80)

可能性を信じてもらうため、熱量を伝える。

できることの全てを尽くして、真摯に生産者に向かい続けているからこそ、人として高め、出し続けられるものは「熱量」なんだろうと思います。


なんの塊になれるだろう?

本書の半分は「食べチョク」のヒストリー。のこる半分は、生産者や社員からの応援メッセージです。

秋元を見ていて、「いつ寝ているんだろう」と思うことがたびたびあります。誰よりも遅くまで働いているのに、朝も早い。それでいて、決して弱音を吐きません。そして、忙しいのにも拘らず、社員一人ひとりのことを気にかけている。「もっとみんなと話せる時間を作りたい」とこぼしているのを聞いたとき、ものすごいバイタリティの塊だと思いました。だからこそ、ついていきたいと思うのです。(西尾慎祐さん、p.183)

まわりの人に「ついていきたい」といってもらえるかどうか。

それは起業家にとっての生命線でしょうし、新規事業という不確実なことに挑戦する社員にとっても極めて重要な「感じ」です。

秋元さんの魅力の1つはバイタリティ。わたしは周囲へどんな塊にみえているんだろう。そもそも『塊』と思われるほどに、磨かれたなにかにまでなれているだろうか?


社会課題、新規事業、働き方と生き方。

いろんな接点でひきこまれる。豊かな一冊でした。ごちそうさまでした。


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