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事業を創る人の大研究

新規事業の敵は”組織の構造にある"という仮説のもと、新規事業への挑戦が減ってしまうことをいかに防止するか、をテーマにした書籍。

第一章 新規事業は人で決まるでは、経営層が重視している「イノベーション人材に求める重要な能力・素養」の上位が「推進力・構想力・挑戦力」の3つであることが記されている。

「新しい事業のアイデアを構想し、未知の分野に恐れずに挑み、誰がなんと言おうと突き進んでいけるような推進力のある人物像」と、実際の現場の担当者とのギャップに、日々やきもきしていることだろう。

第二章 データでみる創る人の実像には、インドの経済学者の主張を引用して、既存ビジネスの考え方と起業家の思考とを対比している。

オペレーションビジネスはCausationモデルに基づくが、起業家はEffectuationの思考モデルに基づくことが多いという研究結果を発表している。Causationは決定要因の秩序を理解してから実行する、PDCAの考え方である。Effectuationは、実行してから決定要因の秩序を理解するという段階を踏む考え方、今できることは何か、を考えてとりあえずやっていみる挑戦的かつ柔軟な発想である。

既存事業が関連するメリットを活用するにはCausationの併用も必要になるが、不確実な世界においてはCausationのような因果的推論アプローチは機能せず、あえてゴールは設定せず今ある手段を利用して行動していく中で新しいゴールを発見していくという考え方をもつことは重要だろう。

第三章 創る人を発掘し、任せるはとばして、第四章 創る人を支えるに記されている「社外の人との関係をもつことによって得られる効果」を紹介したい。

事業での成果に対する効果
 ①知の探索による外部資源の獲得(知の活用との両利き)
 ②事業アイデアに対する客観的評価の獲得
 ③著名効果(社内政治効果)の活用(権威付け、専門家の支持が社内の意思決定を円滑に)
事業を創る人の成長学びに対する効果
 ④置かれた境遇の相対化(精神的な負担を軽くする)
 ⑤自己の市場価値の認識(自己効力感を高める)
 ⑥自組織に対するエンゲージメントの促進

最後に、第五章 創る人と事業を育てる組織にある、新規事業の捉え方についての紹介で締めくくりたい。

新規というと「画期的なアイデアを創出してこれまでの既存事業にはないものをつくり、組織に変革をもたらす事業」といったイメージが先行し、既存事業部門の抵抗勢力から反感をかったり、ひとごとのようにあしらわれたりしがちなため、本書では新規事業を全社で育てる「育成事業」と捉えるべきと主張する。

そのとおり!とも思う反面、お荷物な響きも残るので、より良い言葉をみつけたいところです。以上です。