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読書感想2冊目:姫神さまに願いを~享楽の宴~/藤原眞莉(集英社コバルト文庫)

 注:感想を書き連ねる間に重要なネタバレをしている可能性があります。ネタバレNGな方は読み進めることをおすすめしません。苦情については一切受け付けません。また、感想については個人的なものになります。ご理解ご了承の上、読んでいただくことをお願いいたします。

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☆享楽とは
〘名〙 (「享」は受けるの意) 楽しみを味わうこと。 思いのままに快楽にふけること

 シリーズ2冊目。
 行脚僧カイと、見た目は美少女巫女、その実態は天下無敵の姫神様であるテンとの二人旅は舞台を変えて琵琶湖から。
 本人の事情がゆえにちょっぴりナーバス状態のカイさんをよそに、テンが提案した次の目的地は、「そうだ、京都へ行こう」というもの。
 目的といえば、「ハルさんに会う」とのこと。
 それはそれはもう、楽しそうにしながら、かの人がけっこうな有名人、とテンはいうけれど「ハルさん」でどこの誰かなどわかるはずもなく。
 いやとも言えない(実力行使必至)まま、京都に向かう一行。道中出会ったのは「ハルさん」ではなく僧侶の集団。
 前回から集団遭遇の時には必ず面倒事になるぞの気配を感じつつ、お前は誰だの言葉に素直に名乗れば、(また?も)有無を言わさず拉致されて……

「……やっぱり、おもしろいことが起こりそうねぇ」
 そう言って、テンはくすくすと笑う。
 昼下がりの生ぬるい風が、百日紅の花を微かに揺らした。

本文33ページより

 この余韻のある感じ!冒頭からなんかあるぞ、とテンだけわかってるのがこう、ああ、かなわないなぁと思うところで個人的にはテン様最強過ぎて好きだなぁという感想です。
 余裕あって綺麗でかわいくて神様。安心感ありまくり。

 さて、さらわれたカイはといえば。
 連れてこられたのは、日蓮宗の寺。そこで軟禁状態に。
 宗派は違えど同じであるところ、でもあんまし仲はよくない日蓮宗に話を聞けば、なにやら「天台宗との抗争」に巻き込まれたと察したカイ。

 自分の出自や天台宗と縁を切りたいばかりの彼としてはなんとか逃げたいところ。であるのに、渦中の人となってしまった彼に、テンは「大人しくしてなさい」と濃厚な色気攻撃をかまして去っていきます。
 そんなところで日蓮宗のとりまとめ役からは「お前に似た顔を知っている。これは利用しがいがあるぞ」などと言われ、いや~な気持ちになるカイ。将軍の落し胤であるところの彼と、現将軍とは異母兄弟。顔も似ているとなればそれはもうカイにとってはいちばん避けたいことにつながりかねない。

 宗教抗争と将軍家のあれやこれに巻き込まれてしまったうえに、テンからは動くなと言われ、体だけは無事(摩多羅神の~~呪い~~ご加護により)ながら、心配はつきぬ状態。

 そんな中、テンはカイに濃厚な色気攻撃を与えたあとに、ある場所で「ハルさん」と待ち合わせ。
 目元涼しげな青年はテンからカイの話を聞いて、興味津々。
 腕に情報収集もできちゃう有能なとかげを巻き付け、飄々とした態度でカイを試験してきたり。

 シリーズ二冊目から不憫街道を突っ走る、カイの運命やいかに!?

「よーくよーく考えてみなさい。……これは、『愛』よ」

本文198ページより

 この後に愛がすべてを救うのよ!とせりふが繋がっていくのですが、これ、発売当時の帯に使われてます。
 愛がすべてを救うのです。テン様いわく。
 え、そうだっけ……?力わz……とか思わなくもないですが、いいのです。我らが姫神様のお導きとあらば、それこそすべてなのです。

 という感じのお話しですが、時代背景としては天文法華の乱が舞台。お話しの中では日蓮宗、いわゆる法華経とカイが属する天台宗と抗争、という感じでお話しが進みますが、史上では一揆と記されているところです。
 カイのしがらみを断ち切ることができる(本人は不詳だし不承諾)とふんだテンと、作戦にのったハルさんとのやりとりが最後にがっつり締めてきます。
 生きてるんだか死んでるんだか、なオチは皮肉がきいてておもしろい。
 そして見所は変幻自在なテン様の艶姿!
 前回は青年姿のイラストが見られたけれど、今回はなんと綺麗なお姉さん!(しゃれこうべつきだよ!)
 表紙にも登場なハルさんはかっこかわいいし、実は、な正体には平安好き、歴史好きにはけっこうにやっとするところも。ただし、えっまさかの!?というお話もあったりするので、個人的にはにやにやポイントが多い一冊です。

 シリーズ2冊目からなかなかのスピード感。そして毎回出てくるかっこいいお兄さんもまた、シリーズものだったり感です。
 そして……サブタイトルのきょうらく、について。冒頭にて享楽の意味を記してますが、作中にて京都のことは京洛、ということがあります。
 読みは「けいらく」ですが、「きょうらく」でも絶対の間違いではない様子……?(自信がないのでここは深く追求しません)
 なので、この音や字の感じが重なるところもセンスが光っていて楽しいです。こういうこだわり、大好き。

 今回の感想はこのくらいで。また読了後にぼちぼちと書き連ねていきます。
 お読みいただきありがとうございました!

*たいへん古いシリーズのため、紙媒体書籍の入手は困難。現在電子書籍は販売中です(2023.4月末現在)

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