見出し画像

#83 ホテルやAirbnbが新しい「ショールーム」になる?

CEREAL TALKでは、毎週月曜日に米国の次世代スタートアップやリテールテックにフォーカスした情報をお届けしています。
ニュースレターで受け取る場合はこちらから。

Briefing

ホテルやAirbnbが新しい「ショールーム」になる?

新しい商品体験の場として、Airbnbをはじめとする民泊やホテルの空間をショールーム化する動きに注目が集まっていると『Fast Company』は伝えている。その流れを加速させているのが、宿泊施設で出会った商品をそのまま購入できるプラットフォームを提供しているMinoan Experienceだ。
Minoan Experienceは、ニューヨーク・ブルックリンの高級ホテルThe William ValeAirbnbに展開する約1万件の宿泊施設で、備品として置かれている電化製品、装飾品・調度品、食器、家具などを購入できる仕組みを提供している。その部屋に実際に宿泊して、商品に触れたり使用してみたりしてみて、気に入ったものがあればQRコードでネット上で買えるものなのかを確認し、それが見つかったら購入ボタンを押すだけで自宅に同じ商品が送られるという仕組みである。
Minoan社は、こうした動きをホテルだけでなくレストランからスポーツジムまで、現実世界のあらゆる場面に広げていきたいと語っている。長引くコロナ渦が終焉しつつある中で、旅行や外食が徐々に回復してきたことで、リアルな場で商品を体験してもらおうとする動きが再燃している。そのリアルな場での体験を購入につなげる「ネイティヴ・リテール」の考え方は、今後のブランドのプロモーションにも影響を与えていきそうだ。

Z世代向けD2Cブランドを運営する経営者・従業員の調査

D2Cブランド向けのアナリティクスソフトウェアを提供しているTydoがZ世代向けD2Cブランドを運営する経営者や従業員を調査を行った。Z世代に人気のあるParade、Bubble、Cadence、Studs、Pzaz、Frontman、4AM Skinなど様々なブランドが5つのテーマについて回答している。トピックはZ世代消費者が好む「バイブス」の意味合い、バイブスより重要視する「機能性」、商品の拡散方法で重要な「コミュニティとインフルエンサー」、卸事業で理解しなければいけない「リテーラーのレピュテーション」、そして過去の世代から学んだD2Cブランドがどのタイミングで上場・売却を考えるべきかの「エグジット」に分けられている。詳細は実際のレポートもしくはポッドキャストで解説している。

Patagonia創業者が会社を手放した理由

米国アウトドア用品ブランド「Patagonia(パタゴニア)」の創業者Yvon Chouinard氏とその家族が、評価額約30億ドルとされる株式を、信託およびNPOに譲渡した。創業半世紀を迎える同社の所有権を異例の形で手放した。当該株式譲渡において、Chouinard氏らは税制上の優遇措置を受けておらず、むしろ贈与税として約1,750万ドルを支払っている。
持ち株の98%の譲渡先であるNPO「the Hold Fast Collective」は今後、再投資に充てられない同社の余剰利益のすべてを、環境保護活動へ還元するという役割を担う母体となる。また残り2%の議決権付き株式を譲渡された信託は、総業者の願いから逸脱せず、同社に責任あるビジネスを継続させることを目的としている。
Forbes長者番付への選出に腹を立てたなど、過剰な富を好まないことで知られるChouinard氏は、自らが退いた後も、会社が生み出す資産を保護活動に回す手段として、会社のNPO化を含む複数の選択肢を検討していた。株式公開もそのうちの一つであったが、上場企業となることで、株主への利益還元が優先され、労働環境の改善や気候変動対策がないがしろにされてしまうとの懸念からそれを許さなかった。
現在、Patagoniaのトップぺージには、「地球が唯一の株主になった」というタイトルから始まる創業者Yvon Chouinard氏のメッセージが大きく掲載されている。


Editor’s View

『ホテルやAirbnbが新しい「ショールーム」になる?』を読んで
ホテルのショールーム化は、MUJI HOTELをはじめ、ブルガリやアルマーニといったラグジュアリーブランドも次々とコンセプチュアルなホテルをつくるなど、ブランド側がホテルをつくるというかたちでコロナ前の時期には盛り上がりを見せていました。しかしホテルはお店以上に初期投資もランニングコストもかかるので、体験のためだけに空間づくりに着手できるブランドはほんの一握りだったことが、大きなムーヴメントになる前に下火になってしまった理由のひとつなのではないか、と個人的には考察しています。しかしMinoanのようなプラットフォームの出現によって、ブランドが費用をかけずに宿泊体験をショールーミング化できる下地が整ってきたので、「ホテルのショールーミング化」のセカンドウェーブがきそう。どんなプロダクトにフィットするか?という話もPodcastで語っているので、ぜひあわせて聞いてみてください。──Asami(@qzqrnl

『Z世代向けD2Cブランドを運営する経営者・従業員の調査』を読んで
オーセンティック(≒自分を作らない、本物)であること。bytesというポッドキャストも運営してるのですが、カバーアートのリニューアルのディレクションをしたときも意識した部分でした。ニュース系番組は、朝のコーヒータイムや朝ランのお供として提案されることが多いのですが、私自身、現実はそうはいかないよ…ということも感じています…笑 もちろんそう聴いてくださる人もウェルカム&尊敬…!ですが、ああ朝早く起きようと思ったけど無理だった…メールチェックしなきゃ、ついでにポッドキャストでも流しとくかみたいなゆるめのテンションでも聴いてもらえたらなというイメージを依頼しました。事例で出ていたVSの話も、トレンドの流れが速く、似ているものも増えているからこそ、オーセンティックかどうかちゃんと見られているのかなと思います。—Miki(@mikikusano

『Patagonia創業者が会社を手放した理由』を読んで
パタゴニアの信念を感じさせる行動をイヴォンさんがとってくれたと感動しました。パタゴニアファンとしてイヴォン後のパタゴニアをかなり心配していたが、これで安心が多少なり出来ます。唯一懸念点があるとすると、恐らく$3B以上の価値で誰かがパタゴニアを買収してもおかしくないと考えると、年間$100Mを環境保護のために使うよりも一気に$3B渡した方がインパクトがあったかもしれないこと。さらに今後パタゴニアはより利益を最大化して環境インパクトを最大化する動きが出るのか、それともそこは気にせず運用されるのかは気になる。ーTetsuro(@tmiyatake1


Podcast

Briefingで紹介した3本の記事をポッドキャストでもディスカッション。CEREAL TALKのnoteやこのニュースレターでも執筆・編集担当している最所あさみさんを加えて、収録しました!

「Editor’s View」でご紹介したそれぞれの視点に加え、それぞれの3つのニュースについてディスカッションしているのでぜひあわせて聞いてみてください。


News


▼米国の次世代ブランドやリテールテックの情報はニュースレターでも配信中。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?