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千慶烏子『VERNISSAGE』01

あなたは妹の黒い靴下をはき、わたしはお兄さまの革のベルトをしめて、おたがいの胸乳をおのおのの口に吸い合うのです。あなたは妹の黒いリボンをつけ、わたしはお兄さまの黒い靴紐をしめて、おのおのの口に青い鱒をつりあげるのです。水しぶきをあげて勃起している青い魚をおたがいの口にさがしあてては、それをおのおのの口に吸い合うのです。そうしてあなたはわたしの野良猫のようにまるいおなかに、そうしてわたしはお兄さまの牝猫のようにきれいなおしりに、杜撰な虚言を突き立てあってはおたがいの青い鱒をおのおのの口に吸い合うのです。

 

わたしたちの吐息はおおむねわたしたちの手によって黒くされているのですから、わたしはお兄さまの書き物机の鍵を井戸にしずめて、あなたはわたしの衣裳箪笥の鍵をポケットにひそめて、ときどき子供みたいにくすくすわらっておたがいの孤独の不意を襲っては、わたしたちの凄惨な美貌をおたがいの胸乳に、ときどき子供みたいにくすくすわらっておたがいの孤独の不意をついては、わたしたちの凄惨な無気力(アパテイア)をおたがいの苦悩(アゴーニア)に、まるで交尾して果てることのない恋人みたいに、まるで交尾していつ果てるともしれない恋人みたいによりそわせ合うのです。


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