【140字/空想】神々の住まう国で
白い帆掛け船は軽々と風に乗った。
滴る緑が映り込む水面を滑るように進む。
光と闇を結んで魂を運ぶもの。
心配しないで。
ずっとずっと昔から誰も僕らには追いつけない。
船べりに並んだ黒い犬たちの言葉に私は頷いた。
遠い日の王妃のように青い花をそっと捧げる。
永遠の夜を背負って立つあなたのために。
ファラオ・ツタンカーメンの棺の上に
妻アンケセナーメンが置いたもの。
それは愛する人に贈るヤグルマギクの花束。
そんな青い花のロマンスも真実ではないと
今では証明されているわけですが、
第二の棺の上に置かれていた花は存在します。
それは、ヤグルマギク、マンドレイク、
蓮、柳、オリーブ、野生のセロリの花輪です。
いいじゃないですか、あるじゃないですか。
ちらりと青、それだけで素敵だと思います。
ヤグルマギクの青は1本だって目を奪う色。
もしかしたら彼女が摘んだかも?
とそれくらいは想像したっていいですよね。