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エンタメスタートアップ1人目デザイナーの現実(BUMPローンチ編)

emole株式会社でプロダクトデザイナーをしています佐々木と申します。
ショートドラマ配信アプリ「BUMP」を開発しています。

このnoteは前回のnoteの続きです。

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プロダクトを作りながら6作品並行コンテンツ制作スタート(2022年7月)

無事に5000万円の資金調達を実施し、最高のシードラウンドのスタート!とはなりませんでした。

この期間が人生で一番辛い時期でした。

この時の会社のメンバーは代表の澤村含め4人。
基本的には澤村+この3人で回していました。

澤村は代表の妹です笑

「BUMP」はショートドラマ配信プラットフォームなので、アプリを作るだけではサービスとして成り立ちません。
アプリ内に配信するコンテンツも必要です。
当初の「BUMP」は知名度0、プロダクトもないので信用されず、コンテンツを外部から調達するのは不可能でした。
ユーザー投稿型にするアイデアもありましたが、コンテンツの質を担保するのが難しく、初期は面白くクオリティ高い作品を社内で制作するしかありませんでした。
アプリ公開時に「6作品を公開する」という目標を定め、コンテンツ制作を本格スタートしていきます。

この意思決定は、「調達した金額のほぼすべてをコンテンツに投下する」という経営判断でした。

公開時の6作品がバズってくれないとアプリも伸びませんし、プレAの調達もできるわけもなく、スタートアップとして死にます。
そのため、この時期は社内の全リソースをコンテンツ制作に投下していたと思います。
メンバー全員気合いを入れてコンテンツ作りをスタートしました。

簡単に作れるクリエイティブはないのですが、ドラマも制作過程は本当に長いし、過酷です。
ドラマの制作は大きく分けて3つのステップがあります。

①プリプロ(2~3ヶ月)

プリプロはドラマの話のタネになるアイデア出しや企画作り、各話プロット、脚本を制作する期間です。
脚本ができると監督、キャスト、スタッフを決めて、予算内に撮影とポスプロが進むように調整していきます。

②撮影(4〜5日)

撮影前準備、撮影当日、撮影後片付けが含まれる期間です。
必要な機材のピックアップと返却、ロケ地の美術などのセッティング、スタッフやキャストのサポート、撮影当日のサポート(制作部や車両部)、撮影後のスタッフの送り迎え、レンタル品の返却、ロケ地のバラシなどをしながら、撮影当日は基本的に朝から晩までひたすら撮り続けます。
「BUMP」の撮影では全員で30名ほどのチームで撮影していました。

③ポスプロ(1〜2ヶ月)

ポスプロは撮影した素材を編集する期間です。
撮影した素材整理、編集、カラコレ/カラグレ(色味の調整)、劇版、SE(効果音)、MA(セリフなどの整音)を行い、エンドロール挿入などを進めながら公開できる状態(完パケ)に仕上げます。

プロダクト職種の方にわかりやすく伝えると、1つのドラマを作るのは1つのプロダクトを作るのとほぼ同じ労力です。
それを6作並行で行うのは初めから炎上覚悟でした。(もちろん大炎上しました。)

業界関係者に6作品同時並行で進めていることを話すと笑われるか、絶対無理だと言われるかのどちらかでした。

当時手伝ってくれたパートナーにはめちゃくちゃ感謝しています。

追い討ちをかけるようにアプリ開発でも問題が発生していました。
①スタートアップあるあるだと思うのですが、方針が変わってしまい、細かな仕様変更や機能追加などが起きてしまうことによるスケジュール遅れ。
②デザインドリブンな開発により、途中で考慮漏れが発覚し、出戻りが発生する。
このような状況で当初のスケジュールから大きな遅れが発生していました。

PMとデザインを自分が担当していたのですが、コンテンツチームのサポートやバックオフィス業務なども行わなければならず、当時は完全にキャパオーバーしていました。

撮影が近くなるとコンテンツチームの遅れをカバーするためにサポートに入る→撮影が終わると撮影期間中のプロダクトの溜まったタスクを消化する→次の撮影が近くなるとまたサポートに入る…
延々とこれの繰り返しでした。

撮影期間は準備含め4〜5日ほど。
フルコミメンバー4人では睡眠時間を確保するのは難しく、1〜2時間睡眠で毎回の撮影期間を乗り越えなければいけませんでした。

撮影備品などで寝る場所がないので床で寝るメンバー

6作品の撮影が全て終わったのは10月末。そこまでの約4ヶ月間は毎日ギリギリの戦いでした。
炎上したら火消し、炎上したら火消しの繰り返し。なんとか乗り越える毎日。
こんな日々に本当に終わりはくるのか?
と本気で考えるほど追い込まれていました。

当時のことを思い出すと動悸と胸が締め付けられて、完全にトラウマになってます笑


「地獄」のリリース準備と「お通夜」のリリース当日(2022年12月)

この期間は人生で二番目に辛い時期でした。

澤村は調達活動に動いていたため、1日の半分はピッチや投資家とのmtgなどに使っていました。

撮影はなんとか終えることができ、編集を行う「ポスプロ」のタイミングだったのですが、編集者が全くと言っていいほど足りておらず、当初のスケジュールから大幅に遅れていました。

ドラマを見ると、劇版やSE、主題歌などの「音楽」の影響がとても大きいことがわかります。
そのためBUMPの作品でも音楽周りはかなりこだわっているのですが、ディレクション工数が大きい範囲でもあります。
音楽関係の仕事をしてきたメンバーがいないこともあり、「この音楽と全く同じにしてください!」とお願いしてもそれと同じものができないのが音楽周りの難しさで、かなり時間がかかったのを覚えています。

編集もかなりの時間がかかります。
地上波のドラマとショートドラマでは1話あたりの時間が大きく異なるため、「ショートドラマ」としての編集が求められます。
しかし、「ショートドラマ」の編集はほとんどノウハウはなく手探りで進めていくしかありませんでした。
全て編集した後に、納得いく編集ができずに全て作り直したこともありました。

編集作業はリリース直前まで続き、自分も編集できたのでリリース日までオフィスに泊まり込みで編集を行いました。
※メイン編集者はオフィスに2週間泊まり込みで作業してました笑

休憩、昼食、夕食の時間がないのでPCから手を離した瞬間スケジュールが押していきました。

このタイミングで千葉道場の石井さんがオフィスに差し入れを持ってきてくれたのですが、寝起きでシャワーを浴びて髪がびしゃびしゃの状態で対応してしまいました。
この場を借りてお詫び申し上げます。

余談です笑

プロダクトに関してはひたすらQAとリリース準備とリジェクトと戦っていました。
編集業務なども並行し、疲労も限界に達していました。コンテンツチームが命をかけて作ってくれたコンテンツをユーザーに届けないといけない使命感でなんとか手を動かし続けていました。

12月に入ってからメンバー全員の睡眠時間がどんどん減っていきました。中旬からは全員がオフィスに泊まり込みで作業を行い、些細なことでもイライラするし、オフィスの中の雰囲気は最悪でした。
それでもシードラウンドの集大成とも言える「リリース」に向けて、本当に最後の力を振り絞ってリリース作業を進めました。

そして、2022年12月28日。
ついにショートドラマ配信アプリ「BUMP」をリリースをします。


が…

直前に出したストアの審査が通らず、リリースの時間に間に合いませんでした。

問題は、キャストの方々にダウンロードリンクの拡散を依頼していたことです。
審査が通っていないので、そのリンクからユーザーはダウンロードすることができません。結果的にリリースして最初の2〜3時間はダウンロードすることができませんでした。

このnoteを公開している段階では、キャストのSNS経由のアプリダウンロードは、効果が薄いことがわかっています。
(リンクからのダウンロード数を計測しました。)

しかし、当時は初速に全てをかけており、澤村とも「初速で10万DL超えよう!」という話をしていたので、リリースをミスった時は本当に絶望しましたし、本気で次の調達は無理だと思いました。

普段は悲観的なメンバーがポジティブな声をかけてくれたので、本当に死んだような顔をしていたんだと思います笑

余談その2

「バズるか、死ぬか」その結末の行方

そうは言っても、落ち込む暇すら与えられないのがスタートアップです。

なんとかリリースはしたものの、
リリース時には外していた機能の実装、不具合修正、CS対応、年明けに決まっていた新作コンテンツ制作、コロナの影響で撮影延期した作品の各所への対応、SNS運用、クラファンのリターン発送、澤村は調達活動にも動かなければいけませんでした。

リリースに失敗し、メンバー全員が意気消沈のなかひたすらタスクに追われる毎日でした。
しかし、神様からは見放されてはいませんでした。

ストアのランキングが急上昇…!!
(この時中田は39度の熱を出してました笑)
年が明けても勢い止まらず…!!

TikTokでバズったのです。
TikTokのバズに合わせてダウンロード数も一気に増えました。
はじめはTikTokだけでしたが、インスタのリールやYouTubeと映像系SNSは一気にハックし、お通夜リリースから2ヶ月で会社の雰囲気は180°変わりました。

この時の社内は大盛り上がりで、シードラウンドではじめてと言っていいほどモメンタムを感じていました。
SNSに投稿する動画のほとんどがバズり、それに合わせてアプリのダウンロード数もどんどん伸びていきました。

  • 今まで積み重ねてきたことが無駄にならなかった

  • 自分たちが作ってきたプロダクトやコンテンツがユーザーに受け入れてもらえた

何よりもこの2つが本当に嬉しかったです。
暗闇の中走り続けて、結果は後からついてくるはず…と頭ではわかっていましたが結果が出るまでは不安で不安で仕方なかったです。
emoleに入る前も、受託の時も目にみえる結果を出すことができなかったのが、自分の中でコンプレックスでした。
これまでの努力が報われ、バズやダウンロード数の増加という形で結果を見ることができ、安心したというのが一番表現としては適切かなと思います。


この期間は何をデザインしていたのか?

正直、よくわかりません。笑

この期間は本当に目の前のタスクをこなすことだけに全リソースを割いていたので、会社や事業を俯瞰して見ることは全くできませんでした。

いわゆるデザイナーらしいことは全くしていなかったので自己肯定は爆下がり。
でも、スタートアップの初期にデザイナーが入るなら、こういった状況も覚悟して入らないといけないのかなと思います。

デザインの力はもちろん信じていますが、コンテンツが作れないとそもそもアプリが成り立たない、アプリがリリースできないと次の調達が行えない=会社が潰れるという状況ではそんなこと言ってられないですよね笑

こんな経験なかなかできないので、今ではネタになってよかったです。


次のnoteチラ見せ

次はプレA資金調達〜現在までをまとめたいと思っています。
以下の内容を検討しているのでお待ちください🙏(内容変わる可能性ありです)

  1. 第三次キャッシュアウト事件

  2. プレAラウンドの行方

  3. 新たな課題

これからも定期的にnoteは発信したいと思うので、よろしければX、noteのフォローもお願いします🙏
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