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トラブル対応にも使える『プロジェクトの火消し』に必要な7つのステップ

サイバーコネクトツーの山岡です。
ゲーム開発会社で管理業務を行っています。

プロジェクトの炎上=悪ではない

ゲーム開発に携わって20年。
いつのころからか開発の終盤を渡り歩くことが多くなり、それなりに炎上プロジェクトを経験してきました。うまくいった事もいかなかった事もたくさん経験しました。

経緯や原因によりますが、プロジェクトの炎上自体は悪だとは思いません。最高のものを作ろうとして必死に頑張っていたら、道に迷ってしまったようなものだと思ってます。開発スタッフはサボっていませんし、不可抗力で炎上する場合もあります。

ただ、炎上した時に正しく火を消さないと開発中止や延期、規模縮小など うれしくない結果につながってしまいます。なによりスタッフのいままでの努力を無駄にしたくはありません。

今回は数々の炎上プロジェクトの経験を元に『プロジェクトの火消し』に必要な7つのステップを紹介したいと思います!

1.現状を正しく把握する

炎上している状況では、チーム全体が目の前のタスクをがむしゃらにこなしていることが多く、進捗がどんどん悪化している状況です。
また、ヤバい状況なのはわかっているが何がどうヤバいのかがわからない状態に陥っています。

目標にしている山の頂上の場所も高さもわからず、地図も持たず自分の位置もわからないまま、懸命に山を登っているようなものです。

最低でも、進捗状況、残物量、問題点は数値や言語で正しく把握して、自身の位置とゴールまでの距離、解決しなければいけない障害を明確にしないといけません。

ただし、炎上時は表に出ていないタスクや問題もわんさかあります!
出しきらないと正しい現状把握にはなりませんので「忙しいから出来ない、整理する時間が無い」なら迷わず作業を止めて整理を優先すべきです。

2.炎上していることを社内外に宣言する

まずチームメンバーに炎上していることを認識してもらい、意識を変える必要があります

遭難しているのに「遭難などしていない!」と通常進行で前に進んでしまうと状況はますます悪化してしまいます。ただし、漠然と「炎上しています」「頑張りましょう」と伝えるのはダメ。何も変わりませんし、逆に生産性が低下してしまいます。

自分たちが置かれている状況とゴールまでの道のりの説明、問題点とやろうとしている対応も合わせて打ち出します。その為にも「現状を正しく把握する」が必要になります。

また、会社やクライアント様にも正しく報告を行います。当然怒られますし、激詰め(詳細報告の要求)されますが、火を消すためには協力を得ることが必要不可欠です。

3.勇者を仲間にする

炎上プロジェクトでは、開発手順や勤怠などのルール順守がルーズになっていることが多いです。チーム規模が大きいと末端までの意識統一や足並みをそろえることはさらに難しくなります。

しかし、火を消すためにはルールや約束事をしっかり守り統制の取れたチーム運営が行える正常な状態に戻すことが必要不可欠です。そのために状況を理解し対策に対して共に協力してくれるスタッフが必要になります。

苦しい局面でも踏ん張れる胆力や責任感が必要なので、誰でも出来るわけではありません。それが出来る人を見極め、やろうとしている事や協力してほしい事をしっかり説明し協力を仰ぎます。
そして、そのスタッフと密に連携して対策を実行していきます。

4.マスター提出(またはデバッグ)に必要なことを優先する

炎上時はあれもこれもやらなきゃいけないという状態なので、タスクの優先を決める必要があります。

膨大なタスクがある中で「これやらないと(解決しないと)マスター提出(デバッグ)できないよね?」というタスクを優先します。

当たり前のことですが、処理負荷が高すぎてまともに動かないとかメモリオーバーでプレイすら出来ないとか。仕様が決まっていない、機能すら無い、ゲームフローがつながっていない、パラメータが空っぽとか。

そんな状態で細部のクォリティアップや要素追加をしても、発売の目途は立たないし、作り直しが発生する確率が高いです。まずは土俵に上がらないと勝機はありません

しかし、優先を付ける際に「すべてが重要」となってしまうケースがあります。そんな場合でも重要度や緊急度で判断すれば優先を付けることは必ずできます。それでも付けられない場合は判断できる人に重要な順に並べてもらうようにしましょう。そして、どこまでできるかは予算とスケジュールとの相談とします。(もちろん商品力の担保も最終的には必要です)

5.ステークホルダーの存在を意識する

プロジェクトの炎上は社内だけでなく社外にも大きく影響します。

チームやリーダーだけが状況を把握していれば良い訳では無く、スケジュールの遅れや予算等で多大なご迷惑を掛けてしまう、または責任がある立場の人が必ずいます。

プロジェクトによりますが、例えば
・自社の代表や役員、マネージャー
・クライアント様のマネージャー(プロデューサーの上司)
・版元様やプラットフォーマー様
・品質管理責任者様
など。

進捗状況や今後の見通しを明確に説明できる(説明していただける)ようにしておくことで、プロジェクトへの協力や重要事項(スケジュールや予算、仕様など)の判断をしてもらいやすい状況になります。

社内外含めステークホルダーが動きやすい、安心できる状況を作り出す努力が火消しにつながります。

6.PDCAサイクルを最速で回し続ける

問題や課題は絶対に放置しちゃダメ。
放置は状況の悪化を招くため、その日の内に対策を決めて実行できる体制を作ります。

いくら忙しくとも「物事を決める」ためのリーダーミーティングを毎日時間を決めて行います。ただ、議題が無い、進捗をヒアリングするだけ、言った言っていないの議論、犯人捜し、という何も決まらないミーティングは時間の無駄。解決に至らなくても小さくても良いので、次の一手を決めるミーティングにしましょう。

そのために進捗状況資料の準備や宿題事項の整理、決定権者や関係者へのミーティング参加依頼や根回しなど「物事を決める」ための事前準備にも力を入れます

とにかくPDCAを最速で回し続けられるように準備や根回し、ファシリテーションを行い、問題や課題の解決に向けて前へ前へ進ませることが必要です。

7.スタッフと向き合う

炎上時は疲弊しているスタッフ、問題を抱えてしまっているスタッフが増えてきます。

多くは真面目に頑張ってくれているスタッフやキーマンで、火消しに必要な存在です。しかし、危機的状態をなんとかしようと頑張ってくれているケースが多いので、問題が表に出てきにくい面があります。
スタッフごとのタスク量や進捗状況、仕事中の様子などを観察してアラートを察知してあげることが必要です。

気になるスタッフがいたら個別にヒアリングするなど問題や困っていることを引き出してあげましょう。そして一緒に問題や課題を解決するなど手厚くサポートを行います。(優秀な人は自分でなんとかするのであまり心配していません。ごめんなさい)

まとめ

■『プロジェクトの火消し』に必要な7つのステップ
 1.現状を正しく把握する
 2.炎上していることを宣言する
 3.勇者を仲間にする
 4.マスター提出(デバッグ)に必要なことを優先する
 5.ステークホルダーの存在を意識する
 6.PDCAサイクルを最速で回し続ける
 7.スタッフと向き合う

①~⑦を1回やるだけでは、燃え上がってしまった火はなかなか消えません。火が消えるまで繰り返し繰り返し行います

炎上しないように開発を進めることは可能ですが、付加価値のあるコンテンツが作れるとは思いません。(もちろん炎上を小さくする努力は必要)
予定通り進まないことを前提に、限られた条件の中でいかに成果を最大化出来るかを考えることが大切なんじゃないかなと思います。

今回は概念的な話になってしまいましたが、それぞれのステップを効果的に進めるために知っておくべき知識やテクニックも必要なので、別の機会に紹介できればと思います!

この「火消しステップ」はプロジェクトだけでなく、セクションや部署単位、トラブル対応などにも当てはめることが出来ますので少しでも参考になれば幸いです。

困難を乗り越えた先には必ず成長があります!
頑張りましょう!

サイバーコネクトツー 執行役員
山岡 寛典