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Cの時代

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私たちが日々感じている「何か」を書き起こした連作小説です。
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#仕事

Cの時代 〜時の流れに身を任せ〜

Cの時代 〜時の流れに身を任せ〜

――2か月後。
「お疲れ~」
「わあ、久しぶり!」
原宿駅の表参道口改札を出てすぐの柱に立っていた二人の友達が私を見つけるなり駆け寄ってきた。年末の原宿は普段以上に人で溢れていた。彼らはやり残したことを今年中に片付けたいというようにどこか急いていた。その流動する空気の中にいると、自身の時間感覚もまた早まっていくような気がした。
「人が多いね~」
「それねー、外国人とか多くない?」
「なんか、海外っ

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Cの時代 〜出逢い〜

Cの時代 〜出逢い〜

10月最後の金曜日。
アミカさんに呼ばれ、渋谷に来ていた。夕暮れのハチ公前広場は相も変わらず人でごった返している。習い事をしている場所が宇田川町なので、渋谷を使うことは少なくなかったが、こうして人と待ち合わせをするのは久しぶりだ。JR山手線の改札前でぼんやりと突っ立っていると、道行く人々が肩で風を切って移動しているのが分かる。その速さは歩くというより強歩だ。
普段の自分もあんな感じなんだろうな。せ

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Cの時代⑧ 〜同人誌即売会と廃情報回収の依頼〜

Cの時代⑧ 〜同人誌即売会と廃情報回収の依頼〜

「部数確認して」
「本、この辺に置けばいいのかな?」
「誰かー、ポスカ持ってる人!」

慌ただしい声が各所で飛び交っている。
開店前のこの熱気が文化祭の前日のような空気を醸し出していて、
一番好きかもしれない。

本日は同人誌即売会。
二次創作もオリジナルもプロもアマも関係なく、渾身の作品を世に出す日だ。
予定のない私は売り子として販売の手伝いに来ていた。

「椅子、もらってきました。

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Cの時代 〜働くって何?〜

Cの時代 〜働くって何?〜

広告代理店での打ち合わせを終えビルの外へ出ると同時に、ポケットからiPhone8を取り出しアシスタントのサトウに電話した。

呼び出し音、3回。

「・・・はい、サトウです」
「もしもし、今、大丈夫?」
「はい、大丈夫です」

サトウは、前の会社に居た頃から僕の仕事の大半を手伝ってくれていて、会社を立ち上げるにあたり、「一緒にやりたい」と言ってくれた社員第一号の28歳の女性だ。

社員になっ

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