Cathie the Cashier

ちいさな物語を書いています。ときどき本や映画の感想。私生活やロック関連はツイッター @…

Cathie the Cashier

ちいさな物語を書いています。ときどき本や映画の感想。私生活やロック関連はツイッター @roccarokko にて。 https://www.instagram.com/cathie_cashier

最近の記事

褒められたい

思い返すと、ここ最近あまり人に褒められた記憶がない。仕事であれ容姿であれ何であれ。おかげで自己肯定感がハイパー低下している。 励まされること、フォローしてもらえること、慰められることはある。嬉しいけどなんだかなぁ、と思ってたけど、理由が分かった。 励まされるってことは、凹んでるように見えるとか、無理してるように見えるとか、失敗してるとか、上手くできてないってことの裏返しな気がするんだな。実際はそうじゃないかもしれないけど。でもやっぱ、褒められる=できててスゴイ、じゃんね。

    • 財布の中身は607円

      無一文というにはすこし多く、かといってラーメンの一杯も食べられない。そんな絶妙なバランスを秘めているのが、今日の私の財布事情だ。 厳密には財布ですらない。いいところコインケースだろうか。いつだったかオーストラリアの土産物屋で買った、コアラの絵が描かれた黄色のナイロンケース。ライブに行くときによく使っていたものだ。二年ほど前から使っていたピンクのヴィヴィアン・ウエストウッドの長財布には、しばらくおさらばすることにした。特に愛着があったわけでもない。 それにしても、607円で

      • できた、でもしなかった

        禁煙生活は一週間と続かなかった。実際には三日ほどしか続かなかった。三日坊主。坊主といっても、髪型のことではないのだろう。三日天然パーマ。そんな字面を見たことはない。 しばしの禁欲が、蕩けるような快感をもたらすことはよく理解している。碌に食事も取れなかった数日間、そののちに口にするケンタッキー・フライド・チキンの美味しさに驚く。オアシスを聴きながら、タバコの煙とハイボールを喉に流し込む。 そしてまた本に目を戻す。昨日読んだ小説に出てきた、ポール・オースターの『幽霊たち』。柴

        • 愛し合うことを怠った

          『四月になれば彼女は』を読んだ。 「写真」をひとつのテーマとするこの小説には、ほかにも音楽、映画、絵画など、あらゆる芸術作品が登場した。自分の知っているミュージシャンや作家、映画監督が登場するたび、作者とは気が合うかもしれない、と思った。しかし実際には、サイモン・アンド・ガーファンクルもウディ・アレンもポール・オースターも世界中で広く愛されていて、結局は結婚式の食事のように、読者の最大公約数を満足させうるメニューみたいなものなのかもしれないと思った。 やはり、人は死に向か

        褒められたい

          死ねない人間たちへ

          幼稚園の頃から家出癖があった。お母さんに怒られて、嫌になると家を飛び出した。四、五歳程度の足で行ける範囲は限られていて、いつも少し離れた後ろをお母さんが付いてきていて、私はどうにかして目の届かない場所に行きたいと思っていた。それでも終いにはいつも家に帰って、泣き疲れて眠りについて、目が覚めるころにはご飯の時間で、私の機嫌も直っていた。 小学生くらいになると、そもそも家にいる時間が減り、家出癖はあまり出なくなった。代わりに自分の部屋に篭って、この窓から飛び降りて死んでしまえば

          死ねない人間たちへ

          徒然なるカンピロバクター日記

           サノバビッチ。ボサノバと少し似た響きとは裏腹に、その言葉のもつ悪意は強い。その責任は「ビッチ」という言葉にある。当然だ。サノバだけなら、何の息子にだってなり得る。サノバゴッド、でも良いのだ。  カンピロバクターが私の体内でパーティを始め、近隣はとんだ被害を受けている。もしも将来マンションの大家になることがあったなら、入居者はきちんと選ぼうと思う。などと訳の分からないことを言っている暇があるなら、免疫力のひとつやふたつでも上げられないものか。 「吾輩は猫である」偉そう

          徒然なるカンピロバクター日記

          『リリーのすべて』と友愛感情

          『リリーのすべて』という映画を観た。 後天的なトランスジェンダー。単なる女装趣味ではなく、心まで女性になっていくその過程。いろんな意味で難しかった。 ひとつには、もし自分の配偶者が「女性になりたい」と言ったとき、私はそれを受け入れられるだろうかということ。 婚姻関係になくて、ただ友人として、元々トランスジェンダーだとかバイセクシャルだとかってことを知っていたら、それはきっとひとつの個性として受け入れられると思う。 でも恋愛関係にあって、結婚までしている相手が、「男性」でな

          『リリーのすべて』と友愛感情