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徒然なるカンピロバクター日記

 サノバビッチ。ボサノバと少し似た響きとは裏腹に、その言葉のもつ悪意は強い。その責任は「ビッチ」という言葉にある。当然だ。サノバだけなら、何の息子にだってなり得る。サノバゴッド、でも良いのだ。

 カンピロバクターが私の体内でパーティを始め、近隣はとんだ被害を受けている。もしも将来マンションの大家になることがあったなら、入居者はきちんと選ぼうと思う。などと訳の分からないことを言っている暇があるなら、免疫力のひとつやふたつでも上げられないものか。

「吾輩は猫である」偉そうにそんなことを言われたものだから、腹が立って「俺は人間だ、それがどうした」と言ってやった。サノバキャット、それはただの仔猫。返事はなく、ただ猫の語りが続くだけだった。

 頭がおかしいと言われれば、それもそうなのかもしれない。人間は機械と同じだ。不規則で不安定、予測不能だという感情も、適切な整備を施せば一様に同じ動作をするようになる。精神安定剤、催眠術。プログラムを組み込む方法はいくらでもある。

 あなたはどこへ行ってしまったのだろう。そして「あなた」とは誰のことなのだろう。空っぽなのは心ではない、胃袋だ。入ってくるものすべてを拒み、ただ痛むだけ。カンピロバクターという入居者。彼が去るまでの数日を、私はただ黙って耐え忍ぶことしかできない。

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