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智弁和歌山 vs 国学院栃木 どこよりも本気で見どころ紹介

第104回 全国高校野球選手権大会
8日目 第3試合
智辯和歌山(和歌山)vs 国学院栃木(栃木)

柄目監督の原点であり、因縁の対決
久しぶりに流れる「魔曲」の生演奏にも注目

「でも・・・そう遠くない」
2018年のセンバツ2回戦、国学院栃木は智辯和歌山に4-7で敗北を喫した。
これは当時の国学院栃木・柄目監督の試合後の談話の一部である。
「智辯和歌山さんの打線には圧力と集中力を感じました。でも・・・そう遠くない」

柄目監督は国学院栃木の選手として2000年のセンバツに出場し、ベスト4まで勝ち上がった。そして準決勝で対戦した相手が智辯和歌山。
結果は2-10という完敗だった。
その試合後、柄目監督は指導者を目指すことを決め、筑波大に進学後、母校に指導者として戻ってきた。
そして2018年のセンバツで国学院栃木を久々の甲子園に導き、智辯和歌山へのリベンジの機会を得た。それが冒頭の発言につながっている。

4年後の今年、国学院栃木は37年ぶりに夏の甲子園に出場し、開幕戦を見事に勝利。そして2回戦、立ち塞がる相手はまたしても柄目監督の人生を決めた因縁の智辯和歌山だ。この一戦にかける思いは誰よりも強いだろう。

49代表中最後の登場となった智辯和歌山。
対する国学院栃木は1試合甲子園を経験して慣れているというアドバンテージがある。
甲子園練習がない今年の大会、通常であれば甲子園の雰囲気に慣れているのは開幕戦を戦った国学院栃木であるが、何と言っても智辯和歌山は昨年の甲子園優勝校である。塩路、武元のWエースをはじめベンチ入り18人中6人が昨年の甲子園も経験しており、甲子園独特の雰囲気に飲み込まれる不安は無いと思われる。

ともに強力打線が自慢の両チームによる打撃戦が期待される。

投手力

智辯和歌山は計6人の投手で和歌山大会を勝ち上がったが、昨年の夏のマウンドを経験している塩路、武元のWエースが甲子園では中心となるだろう。エースナンバーの塩路は172cmと決して大柄ではないがスリークオーター気味のフォームから140キロ台のストレートと多彩な変化球で打たせて取る投球術が光る。
そして背番号11の武元は187cmの長身から投げ下ろす150キロ近い速球に威力がある。非常に力のある投球を見せる一方でコントロールも良い。春の近畿大会で大阪桐蔭打線を封じ込めた経験は大きな自信になっているだろう。

対する国学院栃木は初戦の日大三島戦で完投した2年生エース盛永が先発すると予測される。中学軟式で144キロを出して注目された存在で、国学院栃木入学後1年秋からエースナンバーを背負っている右の本格派投手だ。初戦では日大三島打線に4回までに3点を失う厳しい内容だったが、尻上がりに調子を上げて5回以降は3安打無失点という好投を見せた。他にも中沢・吉野とリリーフは揃うが、野手に投手経験者が多いのが特徴だ。栃木大会では野手のワンポイントリリーフも多く、智辯和歌山戦でも登板があるかもしれない。

打力

智辯和歌山打線の中心は3、4番を打つ渡部、岡西という昨年の優勝メンバーだ。特に渡部は昨年の甲子園でも活躍しており和歌山大会で3本のホームランを打っているプロ注目の捕手として注目したい。また1番の山口も小柄ながら3本のホームランを打っている強打者だ。春の近畿大会では大阪桐蔭の前田投手からもホームランを放っている。セイバーメトリクスで分析したデータでみるとチームOPS(打線の総合指標)と長打率がともに出場校中3位という好成績を残している。長打力、選球眼に秀でている強力打線と言えるだろう。一方で盗塁、送りバントは多くないという特徴もみられる。ただ2番多田は非常に俊足で、彼が出塁すると積極的に足を絡めてくる攻撃が予測される。一方で和歌山大会では下位打線には上位ほどの迫力は見られなかった。

国学院栃木も打線は活発だ。
初戦ではセンバツ出場の日大三島投手陣から13安打10得点を奪った。栃木大会でも6試合で24本の長打を放っており、決して智辯和歌山に見劣りする打線ではない。初戦でも出塁して相手をかく乱させた原野、槙本の1、2番は智辯和歌山投手陣・内野陣にとっても厄介な存在だろう。チーム全体で積極的な走塁が特に目につき、足を使って1・3塁のチャンスを作るのが非常に上手いと感じた。日大三島の4エラーは全て走者のいる場面。国学院栃木の積極的な走塁が誘発したエラーだと言える。破壊力では智辯和歌山打線がやや上回るだけに、国学院栃木としては初戦同様に臆することなく積極的な機動力を駆使したいところだ。

この試合のポイント

両チームとも打線が活発なだけに投手陣の出来がカギになる。

特に機動力から活路を見出す国学院栃木としては、序盤の大量失点だけは避けたい。機動力は競った展開で大きく効果を生み出すが、点差が開くと選択肢が狭まる。機動力が無効化される展開を回避する必要があるだけに、国学院栃木のエース盛永の立ち上がりに注目だ。
また智辯和歌山の捕手はプロ注目の渡部。渡部vs国学院栃木の機動力という観点からもこの試合は楽しめるだろう。

対する智辯和歌山としては主導権を握り、どっしりと構えた状態で優位に試合を進めたい。
Wエースの塩路・武元ともに安定感があるだけに、本来の投球ができれば国学院栃木の強力打線でもそう簡単には打ち崩せないだろう。
それだけに国学院栃木の機動力に気を取られ、本来の投球を見失う展開は避けたいところだ。

22年前から続く柄目監督の「智辯和歌山に勝利する」という夢は果たされるのか?
それとも再度、智辯和歌山が立ちふさがるのか?

数年ぶりに観客の制限がなくなり、智辯和歌山応援団の代名詞ともいえる「魔曲」ジョックロックの生演奏が鳴り響く甲子園。華やかなブラスバンドの演奏が「因縁の対決」をどう彩ってくれるだろうか?

甲子園ラボ

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