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【コラム】文学部の逆襲がはじまる

文学部卒という肩書きが優越感を運んできてくれた記憶は、ほとんどありませんでした。

文学部の進路といえば出版や新聞などがよく挙げられます。でもそれらの狭き門に入るのはごく一部で、僕含めて多くの学部生は、学問とは関係のない仕事に就きました。
広告はまだ遠からずだからいいかもしれない。それでも、「大学で事業戦略を学んだ」「広告論を学んだ」という人なんか会うと、人生の全種目で勝てる気がしなくなりました。

僕が大学の勉強で覚えているのは、先人たちの性の奔放さを古事記や源氏物語で力説した講義とか、谷崎潤一郎の『痴人の愛』を使った特殊性教育とか、三島由紀夫の肉体美に関する激論とか。

文学部を卒業してもあまり得はなかった。ずっとそう感じていました。
文学部不要論なんかも耳にしました。それに対する反論も、特に思い浮かびませんでした。


しかし最近、流れが変わってきている気がします。

競合する商品同士のスペック的な差異がほぼなくなった中で、消費者ひとりひとりの心理を掴むことが重視されるようになってきました。
SNSでも、お互いの真意の取り違いが大きな問題になることが増えました。

「もっと深く人の心を理解せよ」と、ビジネスで、世の中で、しきりに言われ出したのです。


人文学は、人間を研究対象とした学問です。もっというと人間の心。
文学研究では登場人物や作家自身の心理を探ります。また、最近は私大で心理学部が新設される例も増えましたが、多くの大学では、心理学も哲学もまだ文学部の守備範囲です。

つまり文学部とは、人間の心についていろんな角度から考え続ける学部。
応用学問でもある経済学部や法学部の方がそりゃ実践的かもしれませんが、文学部では、それらの全ての基礎になる「そもそも人の心って?」ということを考える。

文学部時代に使っていたこの思考回路が、最近急に役に立ってきたのです。
僕自身の仕事環境の変化も関係すると思います。だけど、大きな流れの変化は確かに感じる。本屋さんなんか行くとすごい感じる。理系賛美が落ち着いて、人文学系が間違いなくきてる。


最近、必殺のワンフレーズを見つけたんです。文学部卒のポテンシャルを遺憾なく発揮できるようになるマジックワード。

ビジネスでは、いろんな人がいろんな観点から意見を述べます。フレームワーク的な考えだったり、過去事例を引き合いに出したり、データ分析だったり。そんな喧々囂々の中、こんな言葉を投げかけるんです。

「でも人の心って、そんなふうに動きますかね?」

良いタイミングでこれを投げ込めると、フィールドの属性が変わり、僕ら人文学族のステータスが1.5倍に跳ね上がります。

決してフレームワークやデータを軽視するつもりはありません。しかし「人間心理」は、ビジネスにおいてもはや最上位概念のひとつになっていると思います。

だから僕は、もっと「人文学力」を磨きたいと、今ものすごく思っています。
もっと人の心を理解したい。
心に対する自分なりの考えを持ちたい。

心を動かす文章を書けるようになりたい。
心に刺さる物語を創り出せるようになりたい。
この先それが間違いなく、僕の武器になる。選んでもらう理由になる。

こんな気持ちになる日が来るなんて。
卒業論文の口頭諮問で教授にボロカス言われて、クソの役にも立たねえなと中指立てて去った文学部。それが10年近くを経て、僕の力になりつつあるのです。胸熱っ!

もしこれを読んでいる文学部卒の方がいたら、ぜひ一緒に、世の中に知らしめていきましょう!

さあ、文学部の逆襲が、はじまろうとしております!


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