シンシュウ的な人
今週はなんだか妙に疲れた。なんでだろう?と,今週の出来事を思い返してみた。
そしたら,ああ,あれかと思い当たることが2つあった。
どちらにも共通しているのは,エネルギーのデカい人の講義を受けたり,仕事で携わったことだった。
それは,エネルギーのデカさであって,量だ。そして,そのエネルギーは,明らかにわたしと違う異質のもの。
グワッとエネルギーが強くて,さらに異質なものだから,「侵襲(シンシュウ)」的なグイグイさにやられた。
侵襲って?
シンシュウなんて言葉は,普段,めったに使わない。
関東圏で平成の子ども時代を過ごした人なら,分かるかもしれないネタだけど,シンシュウって言えば,お味噌汁じゃあなかろうか。
「しんしゅういち,しんしゅういち,おっみそしる~♪」
親たちがお仕事に行ってしまって,子どもだけ過ごしていた夏休み,やることと言えば,テレビを見ること。
朝のローカル局(東京テレビ)を見ていたら,必ず流れるコマーシャルソングがこの曲だった。
わたしの祖母宅は長野県にあるから,長野は信州なのだということは,小学生の時から知っていた。
でも,シンシュウという言葉は,長野県の別名である以外,他の意味を知らないで,成人し,大学を卒業し,大学を修了してしまった。
そして,臨床心理士になって,やっと長野以外の「シンシュウ」に出会った。
たぶん,精神医学や臨床心理学を生業としている人しか使わないだろう。知らなくても,絶対に困らない。
侵襲とは,クライエントの心に必要以上に深く侵入してしまい,クライエントが守られるべき領域を超えてしまっているようなこと。
ざっくり言えば、推しの強さ。
クライエントに与える過度なインパクトがデカすぎるということだ。
他にも,心理士以外は知らなくて全く遜色ない臨床用語はたくさんあって,例えば,「イニシャルケース」。
イニシャルケースとは,初めて担当したクライエントとの心理カウンセリングのケース(件)。
シンシュウにしても,イニシャルケースにしても,インパクトのある言葉で,わたしの耳から離れない。
どちらも,わたしが臨床心理士になってすぐに勤めた精神科外来の先輩が良く使っていた言葉だ。
私の方が2歳年上だったが,先に入職した人は先輩になるので,同僚というより職場の先輩として,学ばせていただいていた。
ずいぶん仲良くさせてもらって,二人とも独身だったから,大晦日の深夜に飯田橋の神社「東京大神宮」にお参りに行って,婚活をしたり,それはそれはお世話になった。
心理士にとって,職場の心理職の同僚は,心理援助技術を教えてもらったり,教え合ったりする,とても大事なスキルアップの提供者になる。
このように,臨床心理学であれ実験心理学であれ(心理学にも多様な専門性に分かれている),心理学を生業とするものは,そのスキルを「クライエントの最善の利益のために」使うことをよしとすることを教えられてきた。
それが心理学を学び,仕事とするものの倫理だ。
だから,心理学の知識を乱用しているようにみえる人には,懐疑的になる。
先の侵襲的なグイグイのエネルギーを発していた人たちは,心理学の知識を商売に使ってお金を得ている方だった。
けれども,その侵襲的態度って,臨床心理的にどうなんだべさ?
心理士じゃないから,関係ないのだけど,「侵襲」という定義をご存じないのかもしれない。
というのも,われわれ,心理士はクライエント(カウンセリングの相手)に対して,極度に前のめりになって,ずかずかと相手の領地に入ってはダメ。
常日頃,「シンシュウ的でないか」と自問させられるからだ。
質の違うエネルギーを感じてしまい(心理屋は大抵ナイーブなセンサーを持っているから心理学を生業にする),ぐったり疲れた。
「売り上げが●億円」「心理学の知識を臨床に使わないで,ビジネスに使った」「学者さんたちの研究データを使って,言葉が上手だったら誰でもできます」
その方は,わたしたちを鼓舞するためにおっしゃったのかもしれない。
生きていく上で,稼ぐ力は大事だから否定する気は,毛頭ない。そんなに生きていくことは甘くない。
けれど,私たち研究者が汗水たらして(って比喩だけど)作った研究や臨床心理って,そんなに軽いものなのだろうか。
なんてすねて思うのは,社会心理学の教授に言われた一言が今でも,忘れられないからだ。
「あなたたち,臨床心理学の方はかわいそうね~。お給料がお安いんでしょ。社会心理学だとビジネスで重宝されて,アメリカではコンサルタント料がバカ高いのよ」
ぐうの音も出なかった。
だって,本当のことだから。
高学歴なのに低収入という悲しさを知っていて,それでも,臨床心理学を学ぶ大学院に入る段階で,もうまっとうな道を歩もうなんて考えは捨てる。
お金を稼ぎたいから大学院に行くワケではなく,研究をしたいから,臨床心理学を学んで薄給の臨床心理士になりたいからという思いだけで,突っ走る。
だから,稼げない臨床という本当のコトを言われると,言いようのない自己矛盾を感じてしまうのだ。
なんでケア職ってこんなに安く雇用されるのだろう。
ならば、自分で仕事を作ればいいじゃないか。
そう思って起業した。ビジネスの世界も当然甘くない。
そして,冒頭の異質のエネルギーを放ってビジネス展開されている人になんとも言えない不快さをちらりと感じてしまう。
心理学の研究データを一般の人に広めて,みんなが幸せになればいいから,どんどん使って欲しい。
だけど,お金儲けのためだけに,心理学の研究データを使うのは,なんだかモヤモヤする。
そのモヤモヤって,つい先日,ホームレスは無用の人である発言をして,炎上してしまったメンタリストに感じるモヤモヤだ。
メンタリストは,心理学者ではない。
心理学の研究を集めてくれるので,わたしもいろんな文献を彼から知ったから,彼のビジネスの功績にあずかっている。
だけども,それは文献の編集であって,彼自身が研究して得た成果ではない。
ましてや,調べたい事項に関する多くの文献を検索して,文献をレビュー(評価)するレビュー論文でもない。
彼のビジネスは,文献の二次使用に過ぎない。
リサーチ力は素晴らしいけれど,たぶん,彼自身がリサーチしているのではなく,分担してリサーチしたり,情報を買っているんだろうと思う。
それは悪いことではない。
けれども,以前にも,海外論文を恣意的に誤訳して,「宿題は効果がない」という結語にまとめたことが,実はそうではなかったという指摘が動画の視聴者から寄せられ,炎上していた。
炎上商法と言えば,それまでだけれど,なんだかなぁ~という,思いは残った。
彼のメンタルこそ,心理学者としては,とても気になるところ。
なので,公式lineに続きを書こうと思っている。
※国家資格化して3年目の心理の新資格「公認心理師」の職務の1つは,国民の心の健康増進に努めること。女性の心身の健康増進に関する啓蒙活動として「アネ4エバーヤング講座」を致します。
論文や所見書き、心理面接にまみれているカシ丸の言葉の力で、読んだ人をほっとエンパワメントできたら嬉しく思います。