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『おまえのせいで、うつになったんじゃ、ボケ!』第38話:なるべく外に出る

3月4日午前11時21分
某公園ベンチ


 
ボク「ふぅ、今日も結構歩いたなぁ」

ボク「ん?!」

ボク(あの人、よく見かけるなぁ

中年男性「あ、はい……。なんとか午後から行ければいいと思ってまし
て……」

ボク「……」

中年男性「いや、病院はその、すごく混んでいるんですよ」

ボク(なんだろ……)

中年男性「す、すみません。必ず午後には行きますので……」

ボク(あの人、誰かに似ているんだよなぁ

中年男性「はぁ……」
 

 
 
休職中、歩いて疲れると、公園で休憩することが多くありました。

公園の遊具では、小さな子どもと母親が遊んでいます。一方、ベンチでは、というと……。

仕事中のビジネスマンの方をよく見かけました。

ノートパソコンやタブレットを出して仕事をしているかというと、そういうのではなく、ボーッとしています。


実は、ボクも休職前、会社に行くことができず、公園にいることが良くありました。

コーヒーショップやハンバーガーショップで一番安いコーヒーを頼んで時間を潰していたのですが、金銭的につらかったこともあり、何よりも仕事バリバリモードのビジネスマンの方がいて、引け目というか、居心地が悪く、結局、たどり着いたのは公園でした。
 

公園のベンチでボーッとしているビジネスマンを見ると、当時の自分を見ているようで、どうしても気になります。

横のベンチに座っているビジネスマンは、顔色悪く、電話が終わると、ため息を何度もこぼしていました。


そして、カバンから、何かを取り出しました。

黄色い袋?……のような物に入った何かと、もう一つは、たぶん水筒です。

黄色い包み紙から、プラスチックの箱でしょうか、取り出しています。

そして、今度はその箱から一つずつ箸で拾い上げては、口に運びます。

あ!


ボクは思わず声を出してしまいました。その男性はこちらを見ます。

不審がられないように何かを落として探している振りをしていると、彼はまた先ほどの動作を続けます。
 

おそらく、彼が食べているのは、奥さんの手作り弁当だったのだと思います。

ボクも……全く同じことがありました。


朝、実は会社に行きたくないのですが、だからといって休めない。

それで、いつものように、妻が作った弁当と水筒をカバンに入れて家を出ます。

家を出て、少し時間を潰して、会社に電話をします。

「調子が悪いので、午前だけ休ませてください」

丸一日休むと上司に言えないあたり、ボクの気の弱さが出ています。


許可をもらって、出社をするのは午後からということになりました。

そうすると、その時点から午後の出社まで時間がたっぷりとあります。

だからと言って、余計なお金を使うこともできないので、いつもの公園へ。
 

公園で食べるお弁当は、おいしくありませんでした。

妻の料理が下手とかそういうんじゃなくって、気持ち的においしくないんです。


ボクが会社をサボって、公園で一人弁当を食べているなんて、妻が知ったらどう思うかなって、涙が出ることもありました。
 

隣のビジネスマンは、当時の自分を見ているようでした。

散歩の休憩をしていたのに、なんだか疲れてきました。そして、なぜか少し頭痛がしました。

「よし、休憩終わり!」

いつまでもそこにいると、昔に戻されるような気がして、怖くなってきました。

彼を見ないように、歩き出します。いつもよりさらに早足で、何も考えないようにするために。










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