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『おまえのせいで、うつになったんじゃ、ボケ!』第33話:会社への定期報告

2月20日午前11時1分
本社応接室


担当部長「どうですか、調子は?」

ボク「残念ながら良くもなく悪くもなく……といった感じです」

上司「病院、ちゃんと行ってるんだろ?じゃあ、大丈夫だろ、知らんけど」

ボク(なんだ、コイツ!

人事担当「病状が悪くなっていないなら、安心しました」


ボク「あ、ありがとうございます(……そうか、そういう考え方もあるか)」

担当部長「焦らせるつもりはないのですが、復帰の見込みは、どうですか?」

ボク「主治医と相談して、一応、来月を一つの見極めポイントとしています」

上司「あ、そ。じゃあ、そういうことで、こっちは忙しいんで」

ボク(コイツ!さっきから何で時計ばっかり気にしているんだよ!

担当部長「こっちの職場は大丈夫だから、しっかり直してくださいね」




普段、会社で部長と直接話すことはありませんでした。

こうやって話をしてみると、さすが部長になるだけの人だなぁと思うとともに、あることにピーンと気付きました。

上司から何も聞かされていなかったのか……


一方で、相変わらずなのが、この上司です。

おそらく、部下に余計な暴露をされたくなかったようで、ひたすら時間を気にして、ひたすらこの報告会を切り上げようとします。

会社への報告会ですが、月に一回ぐらいのペースで訪問して行っていました。


それには理由があります。

実は、通院の度に上司にはメールで報告していました。

その返信には、部長や人事とも情報共有をしているとあり、すっかり安心していたのですが、ある日、ボクは真実を知ります。

傷病手当の支給があまりに遅く、人事担当に電話で尋ねた際のことです。

「あ、そういえば、いまはどれぐらいの間隔で病院に通っているのですか?」

「え?……聞いてないのですか?」

上司から、きちんと情報が上がっていないことが分かった瞬間でした。


人事から部長へすぐに報告があったようで、それから、顔を合わせて関係者全員、つまり、“担当部長”“上司”“人事担当”“本人”の四者で話すことになりました。

回を重ねるごとに話すことがなくなってきたのですが、会社との接点を定期的にもつことで、社会復帰への意欲を持続的に保てたこともあり、意味はあったのかなと思います。

報告会のあとは、同期とランチを食べることが多くありました。

休職中の唯一の楽しみがこのランチでした。そこでは、お互いの子育てのことなど他愛のない話から始まって、

・いま会社で起きていること
・ボクが休んでどうなっているか
上司がいまどういう扱いを受けているか

といったことも聞くことができました。

休職していると、会社との距離がどんどん離れていってしまうのですが、こういった情報を直接聞くことで、「早く復帰したいなぁ」と思い、病気に立ち向かう気持ちを強く持つことができました。(三つ目の上司の受けている扱いは、聞いていて、スカッとしましたし。)

一方で、同期なので、食事前の報告会で会っていた会社の関係者よりも、ボクのことをとても心配してくれていることが伝わってきました。

「おまえが急に会社来なくなって、会社とかお客さんに、結構迷惑掛かっていると思うよ」

同期なので、言い方はキツイです。

「でも、それをどうにかするのが上司のツトメなんだから、気にしない気にしない」

その言葉の奥には、ボクのことを気に掛けているやさしさがあり、うれしかったです


お皿を下げられたあたりから、周りが少し慌ただしくなりました。

「ほら、そろそろ戻った方がいいんじゃない?」

そう声をかけるのは、いつも決まってこっちからでした。

同期から、「そろそろ仕事に戻るわ」と言われたことは一度もありません。

「じゃあ、またな!」
「治療、がんばってな!」

みんなは会社の方へ、自分だけ違う方向へ歩き出します。


よく、うつ病患者には「がんばれ」って言ってはダメだと聞きます。

でも、同期から言われる「がんばれ」は、素直に「がんばろう」という気持ちになる一言でした。

13時を過ぎて、そのまま駅まで歩いていると、スーツを着たビジネスマンとすれ違って、少しだけさみしく感じ家に戻るのでした。












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