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『おまえのせいで、うつになったんじゃ、ボケ!』第34話:貯金が底を突く

2月23日午後1時34分
某銀行某出張所ATMコーナー


ATM「オ取引金額ヲ押シ最後ニ円ヲ押シテクダサイ」

ボク「えーっと、………………よしっと」

ATM「シバラクオ待チクダサイ。タダイマ手続キヲシテオリマス」

ボク「……」

ATM「……」

ボク「?」

ATM「……」

ボク「……あれ、長いな」

ATM「残高ガ不足シテイマス」

ボク「え!?

ATM「モウ一度最初カラオ願イシマス」


その日は、ついにやってきました。

とうとう、貯金が底を突いてしまったのです。


ローンの引き落としまで、あと10日あまり。それまでに、なんとかしなければいけません。

ボクは、元々、貯金をしておらず、

万一の時?そんな時なんてねぇーよ!

と思っていました。

それが、うつ病になって、

万一の時は、突然やってくる

というテレビCMのようなシチュエーションを実体験により理解しました。

傷病手当が支給開始されるのは、まだまだ先のようです。

おそらくこの先10日間に入金されるということはないでしょう。

そもそも、いつから支給されるのか、その見込みすら未だに分かりません。


当時、お金の管理は妻ではなくボクが行っていました。

うつ病になってからは、自分の管理だけで精一杯となってしまい、家計についてはまったく考えることができず、で、気がついたら、スッカラカンの状態です。

それでも、いきなりローンの引き落としができないという最悪の事態ではなく、残高がほぼ0円だと事前に気がつくことができただけでも、ラッキーでした。

消費者金融で借りるしか、ないか……

インターネットで調べると、“年利18%”とあります。

違法のような気もしますが、もうすでに冷静な判断ができる状態ではありませんでした。


「え?ちょっと待って。例えば、うーんと、100万借りたら……118万円返さないといけないってこと!?」

これは衝撃でした。

しかし、最悪、この選択しかないかもしれません。


「そもそも、この数ヶ月、どういうお金の減り方になってたんだ?」

通帳をゴソッとめくって、半年ぐらい前から眺めました。

さらに、クレジットカードの利用明細も、一気に印刷します。


「な、なんだこれ!ずいぶんと、ムダ遣いしてるなぁ」


うつ病と診断される少し前から、何に使ったかあまり覚えていない引き落としがありました。

スーツの衣替えをしようとしたら、前年に来ていた物が太って着られなくて新調したぐらいは覚えています。

他は、お金を使って日々のストレスの憂さ晴らしをしていたのかもしれません。


「ん?」


明細を眺めていると、ある法則に気がつきました。

「毎月、決まった日に、決まった額が引かれて……いる?」

一年前にさかのぼっても、同じです。

「どこから引き落とされてんだ?“ショウケン”……?萩原健一?

“ショウケン”と言われて、“萩原健一”がすぐ頭に浮かんだのもつかの間、

「あぁ!証券会社!!」


そうなんです。ボクは、数年前から、少しずつですが、投資信託をしていました。

当時、偶然、美容院で読んだ雑誌に“投資信託”の特集があり、それに乗っかっていたのでした。(そういうのにホイッと乗ってしまうあたり、既に心が不安定だったのかもしれません。)

それが、毎月、決まったタイミングで自動引き落としがされていた原因でした。

総額はそれほどではありませんでしたが、全て解約して、一気にローンにあてることにしました。

そこから、うまく流れ出しました。傷病手当の支給も始まり、ゆとりはないものの、ローン等のお金の引き落としに困ることはありませんでした。

あと一方で、破産までのギリギリところでした。いま思い出してもヒヤヒヤします。












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