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介護福祉士とメンタルヘルス

▼毎週毎週、介護福祉士国試対策として制度系の過去問をえんえん並べているので、たまには国家試験とはあまり関係のない内容などいかがでしょうか❓❓

▼私の経験上の話ですが、各種福祉士養成課程の専修学校の1クラスを30人とすると、1~2人の学生さんが何らかのこころの病気を持っておられます。これは毎年だいたい同じような割合で、罹患率は3~5%程度になります。各種こころの病気の罹患率が5%前後ですので、福祉士養成課程がことさら多いわけではないと考えます。
▼新卒既卒を問わず、こうした学生さんは入学段階ですでにこころの病気を持っておられることが多く、入学後に発症する学生さんは比較的少ない印象を受けます。特に多いのが気分障がいとパニック障がいです。気分障がいのある学生さんでは朝がしんどいことや自傷(過剰服薬を含む)、パニック障がいのある学生さんでは通学中や授業中、実習中に発作が出て難儀するという生活課題をそれぞれ抱えておられます。
▼残念ながら、私も含め、福祉教員の多くは学生さんのこころの病気に十分対応できているとは言い難いです。この点、まずはお許しください。福祉士養成課程には看護師の教員が必ず配置されていますが、看護師であっても通学できるレベルの疾病への対応経験が極めて少なく、やはり十分対応できていないのが現状です。その上で、たとえばパニック障がいがあって授業中に発作が出るかもという予期不安のニーズがあれば、教室の後ろ、ないしは出入口に近いところ、目立ちにくいところに席替えをするなどの配慮は普通にできます。また、同じパニック障がいであっても、発作時はひとりにしてくれたほうが治まりが早い、逆に付き添ってくれるほうがよい、などなど症状の個別性が高いので、担任教員との信頼関係ができたならば、ご自身のニーズを申し出れば教員は最大限のサポートの努力を払ってくれるでしょう。私自身は、実習先への送り迎えをしたことが何度もあります。
▼一方、絶対に認められないことがひとつだけあります。それは欠課時数(=欠席日数)です。試験の点数評価をいくぶんゆるくすることはできても、欠課時数の超過だけはどうにもなりません。これを侵すと、学校が行政処分を喰らうのです。ただし、新型コロナ騒動のときにリモート講義が許されていたので、それを使った在宅での補習は可能かもしれません。私は現場を離れてずいぶん経つので、該当しそうな方は学校や担任教員に質問されることをおすすめします。

▼さて、問題は卒業後です。こころの病気を持ちながら対人援助にたずさわる方はたくさんおられ、また、お辞めになる方もおられます。要は人それぞれであって、「向き、不向き」という100か0か的な判断はしないほうがよいでしょう。
▼福祉教員を長年やってきて強く思うことは、学生さんはいつ花が咲くかわからないということです。こころの病気を持ちながらしんどい思いをし、教員としても対応に苦慮した学生さんが卒業後、どこかで何かのきっかけや出会いがあったのでしょう、よき専門職になっているという事例は決して誇張ではなく、たくさんあります。20年前は「実習がダメならあきらめてもらう」というのが福祉教育業界の常識でした。いまは、学生さんの可能性をとことん信じようという教育が主流です。ストレングスというやつです。

▼こころの病気がある以上、メンタルヘルスに留意すべきであることは他人がとやかく言う前にご自身が重々承知しておられるはずです。私個人としては次の2点を助言させていただきます。
▼一つ目。コミュニケーション力(非言語を含む)をできるだけ磨いてくださいますように。具体的には、自分の考えていること、やろうとしていることが同僚にきちんと伝わっているかどうか、です。ものすごく極端に申し上げますと、チームワークは以心伝心、ノーボイスでこなせるのが最良です(あくまでもたとえです、念のため)。また、行動や言動に裏表があると誤解や齟齬が生じやすいので要注意です。ただし、裏表がないようにする=すべての秘密を自己開示するということではありませんので誤解なきように。
▼二つ目。世の中に完璧な人などいないという点をぜひ受け容れていただきますように。たとえば、私は他人に知識を教えるという仕事をしていて、できる限り誠実であるよう努力をしていますが、だからといって街ナカを直角に歩いているわけでもなければ、すべての横断歩道を正しく渡っているわけでもありません。他人に対する要求水準が高くなる→他人に頼れなくなる→自分自身を頼るしかない→自分自身に対する要求水準が高くなる→しんどくなる・・・という、よからぬパターンに追い込まれる学生さんを数多くみますので、あえて助言申し上げました。

▼さいごに、こころの病気を持っておられるかどうかにかかわらず、ご自身がキャリアを重ねていかれるうえで、①モデルとなるような専門職と出会うことができるかどうか、②その人の性格や能力に対応した適材適所の人事配置がかなうか、この2つがその後の運命を分けるような気がします。最初の職場でその出会いがあるといいよね~・・・などということを同年代の専門職仲間とよく話している今日この頃です🍺🍺

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