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ながさご大介
2022年10月28日 10:57
ハイデルベルク行のトランクに詰めた三冊の文庫本の最後の一冊は、モンテーニュの『エセー(五)』だった。岩波文庫の『エセー』を見つけた日のことはよく覚えている。それは1977年4月のことだった。大学の教養のキャンパスが習志野にあり、家からは通えないので、生まれて初めて一人暮らしをすることになった。賄い付きの学生寮で大学の近くにあった。最寄り駅は北習志野駅だった。当時のわたしは、毎日書店に行くの
2022年10月17日 09:50
ハイデルベルクに持っていく二冊目に選んだのは、『斎藤茂吉随筆集』だった。斎藤茂吉は『赤光』で有名な歌人だが、医師・医学研究者でもあり、ウィーンに長らく留学していた。その時の思い出を綴ったエッセイがいくつかあり、『ドナウ源流行』や『探卵患』もそのひとつである。『探卵患』は、1922年12月27日の出来事を綴ったものだと著者は書いている。このタイトルは、著者がその時手帳に記した文字に由来するも
2022年10月3日 09:41
九月末で退職する女性からマドレーヌを貰ったので、わたしはお礼のつもりで「パンがなければマドレーヌを食べればいいんだよね」と言った。でも、言いながら、(そうじゃない、マドレーヌはプルーストだろう)と心の片隅で叫ぶ声が聞こえた。マリー・アントワネットは「ブリオッシュを食べればいいじゃない」と言ったのだ。しかもそれはケストナーが『点子ちゃんとアントン』の中で語ったおとぎ話で、そんな史実はない