採用ページの大きな分岐点〜時代は文字媒体から映像媒体へ〜
採用ページが変わった分岐点
ここ2〜3年で採用ページの作り方が大きく変わっています。
それはWantedlyがビジネス系SNSとして、台頭してきたことが大きなキッカケとなっています。
それに伴いYou Tubeや映像を加えた採用ページが増え始めています。
Wantedlyのページ構成を見てもらうとわかるのですが、ストーリー戦略に則って構成されていることに気づきます。
共感と等身大のマーケットが主流になりつつあることがあり、そのような構成になっています。
それまでは動画を使うことなく、写真についても無料のものを使うことが多かったのですが、現在では社員が仲良さそうに写っている写真がほとんどです。
映像を作っている会社も同じように社員が仲良さそうに、和気あいあいとしている映像でまとめているケースが多く、ゴールからつくられたストーリーで、ワクワク、ドキドキする内容というよりは、ポジティブにまとめているのが特徴です。
映画の予告編のように、この先どうなるの!?という不安と期待が入り交じることはなく、無難に会社にとって都合のいいことをまとめたものがほとんどです。
IT企業などによっては動画を取り入れたり、SNSをうまく活用して採用活動をしている企業が増えてきています。
それによって転職者が独自性を見出すことができずにいることに気づいていない。
同じような広告が続くことが多く、最初の10件ぐらいを見たら読み疲れてしまっているということが転職者の中では起きはじめています。
小手先のテクニックで母集団を形成して、その中からふるいにかけるという、いまだに昭和の採用をしている企業がほとんどです。
雇って上げている、選んでいるというのが企業側ですが、転職者側も同じ様に企業を選んでいるということに気づいてください。
転職者がほしい情報はなんなのか、どんな情報を発信していけばいいのか、正解はありませんし、試行錯誤しながら続けていくことが必要になる時代です。
転職者の立場からアプローチ
最近の相談でも多いのが、求人広告から自分の軸で探していくのですが、どの会社も同じに見えるんですという質問が増えています。
社内の環境や制度、代表メッセージ、社員の年齢・性別などのデータ、活躍している社員のインタビュー。
どの会社の採用ページにも同じようなものが並んでいる。
雑談的に「どうすれば良いんだろうねー」と話していたが、掲載する情報の質を変えると面白い。
ちょっとした切り口を変えるだけで、こんなに違うのかぁ−という発見が多かった。
仮に私が転職する立場だったら、現状の採用サイトや求人サイト、転職口コミサイトの情報だけでは、会社のことがわからず、転職に踏み切れない。
企業の採用サイトや求人情報サイトには、よく社員のインタビューが載っている。
ただ、彼らには良いことを言うぞ…という力学が働くので、どうしても宣伝臭くなってしまう。
実際にはポジティブな話しかしないというのが暗黙の了解。
そもそも、いま所属している社員の声だけだと生存バイアスが働いてしまうので…次のような切り口ではどうだろうか。
1:内定は貰ったが、他社を選んだ人の声
2:最近、辞めた社員の声
3:一緒に働くお客さんやパートナーからの声
まで載せてもらった上で意思決定したい。
少なくとも、提供しているサービスの満足度や継続率、加えて社員の離職率は教えてもらいたい。
この3つの切り口からはポジティブにも取れる情報でもあるが、ネガティブに捉えられてしまうリスクはあるが、共感と等身大のマーケットで戦いのであれば、第三者の目や意見というのは非常にわかりやすい。
企業版のミシュランガイドのように星で表記されてもいいぐらい。
口コミサイトについては、最近はあまり信用ができるレビューが載っていない。
辞めた人が書くことによって、そこには個人的な感情が入っており、冷静に判断をするための材料にはならない。
それより会社名でSNSで検索をかけてみて、投稿内容を見てみると面白いかもしれない。
ホンモノの情報に触れる機会がほしい
できるだけ、本音の情報に触れる機会があると良い。
会社の近くの飲み屋で交わされているような「実は●●の理由で転職しようと思っている」「新しくできた●●という社内制度がとてもありがたい」といった会話や、社内チャットの雑談部屋で繰り広げられる会話など。
その会社にフィットできるかを確かめるために、入社前には、配属先の部署のチャットに入り、会話に加わる期間があるのは有効だろう。
キックオフミーティングや全社総会、社内のイベントに呼んでもらうというのも一つの手段だ。
もちろん、秘密保持的な話があるのは承知の上で、求職者視点で欲しい情報を考えてみる余地がまだまだあることは間違いない。
新卒の内定者懇談会でよく使われる部署での飲み会というのもありますが、飲めない人への配慮を考えると、食事会程度またはランチ会程度にしておくのがいいかもしれません。
飲み会や食事会で素が出やすいというのも間違いではありませんが、クロージングとして構えられるとかなりきつくなってしまうので、フランクに楽しい時間にできるようにしてみてください。
フラットな情報が流れる時代へ
マーケティング文脈で近しいことを考えてみると、「導入事例」がわかりやすい。
導入事例は、導入した100社のうち、5社が満足・95社が不満足でも、満足した5社を取り上げれば良いサービスに見えてしまう。
これも生存バイアスが強くかかってしまう例。
誠実に情報発信するのであれば、プロジェクトの成功率と、不満足な会社の事例も載せた方が良いとなるけど、普通に考えればそんなことをする企業はない。
導入事例の話も、採用サイトの話も、性善説では解決されないと思うので、いつの日かテクノロジーが解決策を提供してくれることを期待している。
採用トレンドが大きく変わった
ここ数年で工業型生産性ロールモデルから、サービス型生産性ロールモデルへと産業構造が大きく変わりました。
長時間労働、会社への忠誠心が問われていたのはバブル経済までの話。
それから失われた20年となり、山一證券や北海道拓殖銀行などが倒産して、日本企業が吸収合併を繰り返す時代へと突入しました。
それと同時におこなわれたのが大幅なリストラ。
その後、2010年代に入ると企業の業績が伸びつつあるのと、労働人口の現象問題が重なりはじめて、人材の争奪戦が始まりました。
政府も女性の積極的な活用を掲げていますが、いまだにあまり浸透していないというのが現状です。
インフラの受け皿も同時にやっていることですが、現状としてなかなか追いついていないため、実感が少ない。
それにつられて採用についても大きくトレンドが変わってきました。
今の転職市場を象徴する3つのキーワードがあります。
それは「シフト」、「メルト」、「ビルト」の3つです。
社会の産業構造が変化(シフト)し、業種の垣根がなくなり(メルト)、新たなマッチング市場が創られつつある(ビルト)ということです。
今や、日本のGDPの7割近くはサービス業が占めています。
つまり、昔と違い、日本の産業はモノづくりでなくサービスづくりの社会となっているのです。
産業構造がシフトすると、転職者が会社を探す際、これからの自動車会社はものづくりの製造業なのか? それともサービス業なのかわからなくなります。
また、働く社員も自らの仕事を職種で説明する際に、例えば、モノ作りの設計者なのか、サービス創りのデザイナーなのか区分できなくなってきます。
時代遅れになりつつある転職サイト!?
産業構造が変わってきており、SNSやリファラル採用での転職が主流になりつつある昨今ですが、転職サイトの登録画面を見るといまだに昭和の時代のフレームを使っていることに気づきます。
人事が見るのは転職回数と会社名というのは古き良き時代のものであり、採用に関しても勘、経験、度胸で判断をしているため、めちゃくちゃブレることもよくあります。
いまだにあるのが、職務内容をしっかりみるというよりかは、ライバル会社にいたことがあるのか、同じ規模の会社での経験があるのかなど、表面的なことだけを追う人事が9割占めている。
しかも決定権を持っていないため、フィルタリングをするのは転職回数と会社名だけで判断をしています。
スピード重視の書類選考になると、人事が1次フィルタリング、現場サイドが2次フィルタリングというシステムを取る会社が増えています。
従来、転職サイトは職種で選択する仕組みとなっていましたが、業種の垣根が溶けて(メルト)いった時、旧来の職種名だけで仕事を探すことも意味を失います。
こうなると、字義のごとく、職種だけにフォーカスした、転『職』サイトの存在意義がもう無くなるのではない。
『職』種を転じるのでなく、職『場』を転じたり、『プロジェクト』を転じたりする。
そうすると、古い概念である転『職』サイトは有効なのか?と思うのです。
実際、ユーザーの検索行動をデータで見ると、職種検索でなく、休日の働き方、会社のビジョンなど異なる軸で動くユーザーが多くいます。
転職サイト含めた既存の人材サービス業では、ある会社を紹介する際に、一つの観点だけで掘り下げていくのは難しくなっていくと思う。
けれど、転職者には仕事を探す軸が必要であり、道筋を示す役割を果たす必要があるので、転職サイトはなくならないと思います。
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