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「No.23」「パリの室内装飾画」ル・シュウールのミューズたち
こんにちは!かずさです!
突然ですが、みなさんの家には、絵が飾ってあったりしますか?私の部屋には、妹が貼り付けたポストカードがあるのですが、壁にテープで直貼りなのでちょっとやめて欲しいです…
最近おしゃれだなあと思ったのは、友人の部屋にあったものです。(zoomの背景に映っていたのですが)
1つの額縁の中に展覧会のポスターをいくつか入れたもので、凝っていて綺麗でした。私はポスターを持っていてもファイルに入れてるだけなので、有効活用しているのを見ると憧れてしまいます。
さて今回は、ポストカードほど小さなものではありませんが、室内を装飾するための作品を取り上げたいと思います。
作品紹介
今回の作品は、ウスタッシュ・ル・シュウールの《クレイオ、エウテルペ、タレイアのミューズたち》(上)と《メルポメネ、エラート、ポリムニアのミューズたち》(下)です。
1652-1654 油彩画(画布) H130㎝×W130㎝ フランス、ルーブル美術館蔵
1652-1654 油彩画(画布) H130㎝×W130㎝ フランス、ルーブル美術館蔵
今回は主にこの2作品です。同じ大きさの画面の中に、それぞれ3人の女性が楽器を奏でたり、本を開いたりしています。服がはだけているところを見ると、普通の現実にいる女性というよりは、女神といった霊的な存在のようです。
実は今回、あと3作品あります。
ル・シュウール《テレプシコレ》 1652-1654 油彩画(板) H116㎝×W74㎝ フランス、ルーブル美術館蔵
ル・シュウール《カリオペ》 1652-1654 油彩画(板) H116㎝×W74㎝ フランス、ルーブル美術館蔵
ル・シュウール《ウラニア》 1652-1654 油彩画(板) H116㎝×W74㎝ フランス、ルーブル美術館蔵
これらの作品は一連のコンセプトで作られていて、パリにあるランベール館の「ミューズの間」と呼ばれる部屋にありました。
その部屋と作品について紹介する前に、画家のル・シュウールと「アティシスム」について簡単に見ていきたいと思います。
ル・シュウールと「アティシスム」
ル・シュウール
ウスタッシュ・ル・シュウール(1617-1655)はフランス生まれの画家で、イタリア・バロックをフランスに伝えた1人であるシモン・ヴ―エ(1590-1649)の弟子でした。
シモン・ヴ―エ
シモン・ヴーエ《エウロペの掠奪》 1640年 油彩画 H179㎝×W142㎝ スペイン、ティッセン=ボルネミッサ美術館蔵
シモン・ヴーエだけではなく、この時代のフランスには、ローマで生涯の大半を過ごした二コラ・プッサンなどイタリアの影響を受けた画家がいました。
それには、当時の王宮で絶大な権力を持っていた枢機卿マザランのはからいもあるようです。(ちなみにル・シュウールが絵を描いた50年代前半はルイ14世がまだ幼く、フロンドの乱が起こったような時代でした)
ル・シュウールは18世紀になると「フランスのラファエロ」呼ばれたほどイタリアの画家からの影響を受けていたのですが、本人はイタリアに行ったことが無いそうです。ル・シュウールを含む絵画の1つの流れは「アティシスム」と呼ばれています。
アティシスム
1640年代から20年くらいに渡り、パリで優雅で穏やかな表現を生んだ一派です。「簡潔な表現」、「優雅さの志向」、「余分な要素の排除」、「高貴な節度」が特徴とされています。アティシスムとは、本来、アテネを中心とするアッティカ地方の簡潔典雅な文体を指す言葉だったのですが、それを17世紀のパリの美術の流れに当てはめたものになります。
アティシスムの要素は言葉にするとちょっと分かりにくいのですが、当時、イタリア・バロックであったような
ピエトロ・ダ・コルトーナ《アレゴリー・オブ・ディバイン》1630年代後半 イタリア、バルベリーニ宮天井画
こういった絵の逆で、いくらか落ち着いた雰囲気のものだと思ってもらえれば(多分)大丈夫です。
ル・シュウールを含めてアルティシムスの画家は王立絵画・彫刻アカデミーの創立メンバーになりました。この一派の古典主義的な考えはフランス・アカデミーの規範になりました。
ランベール館の「ミューズの間」
今回の作品があったランベール館はパリのサン・ルイ島にあり世界遺産に登録されています。また、18世紀に哲学者のヴォルテールが住んでいたことでも知られています。
残念ながら2013年に火災にあってしまったのですが、現在は大分修復が進んでいるそうです。
この建物は、1640年代に資産家二コラ・ランベールが兄から譲り受け、改修を行いました。建物を設計したのは、その後ヴェルサイユ宮殿の設計にも関わったルイ・ル・ボーです。そして、中の装飾は、ル・シュウールを始めル・ブランといったアティシスムの画家が描いています。
「ミューズの間」はランベールの妻のために造られた部屋でした。ミューズの絵が飾られているために、このように呼ばれています。
ミューズ(ムーサイ)とはギリシャ神話に登場する学芸を司る女神たちで、アポロンに仕えています。現世にいる詩人たちはミューズから霊感を受けたものとされました。その人数はその時々によって異なるそうですが、大体9人です。(今回の作品も9人です)
それぞれが司っているものは下のようになります。作品の中の持ち物(アトリビュート)に照らし合わせて見てみてください。
クレイオ(アトリビュート:ラッパ、本):歴史・名声
エウテルペ(横笛):抒情詩
タレイア(仮面):喜劇
メルポメネ(本(ピンクの服の女神です)):悲劇 エラート(楽譜):独唱歌
ポリムニア(楽器):英雄への讃歌
テレプシコレ:舞踏
カリオペ:叙事詩
ウラニア:天文学
9人の女神たちはこんな感じなのですが、全員が集まると「調和」を意味しているそうです。このテーマが結婚祝いにふさわしいとされ、ランベールの妻の室内装飾のプログラムとなったのでした。
柔らかな色彩の中に、三角の安定的な配置でミューズがいます。演奏をしたり、楽譜を開いたりする姿はとても繊細で優美な感じです。調和というテーマもうなずけます。
この作品はアルティシスムの典型例のようですが、けばけばしい《アレゴリー・オブ・ディバイン》のような作品で飾られるよりも落ち着いて過ごせそうですよね。
「ミューズの間」は、18世紀の時に改修が行われてしまいプログラムが変わってしまったのですが、作品は部屋から外されルーブル美術館に納められています。
今回は室内装飾を取り上げてみたのですが、いかがでしたでしょうか?部屋ごとにテーマがあるというのは現代でもありますが、この時代のように大きな絵を飾って全体のテーマを決めるというのは無いので、少し想像しにくいです。(美術館が家にあるような感じでしょうか)
室内装飾は、額縁1つでは収まりきらないスケールで展開されていく「部屋の中のシリーズ」となっているところに魅力があります。また面白い作品があったら取り上げたいと思います!
次回は、アジアのアートを紹介します(o^―^o)
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