見出し画像

【詩】葦舟の手紙

葦舟で届く手紙は
いつも
真っ白で

初めのころは
言葉が流れてしまったのだろうかと
思い悩み

月の光に透かしてみたり
の光を受けて
あぶり出そうとしたり

あなたの言葉を受け取りたくて
あなたの言葉の痕跡を感じたくて

真白き手紙に
頬を寄せ
指を添えた

月の道
辿る葦舟
ふみをもて
言の葉散りぬ
跡ぞ恋ひ恋ふ

今は知っている

初めから
言葉など
記されていなかったことを

あなたは知っていたのだ

どんなに言葉を重ねても
想いを想いのまま
伝えることはできない、と

ようやく生まれ落ちた言葉は
届く前に嘘が混じり
真実をはじき出し

我が物顔で
ふみのおもてに
居座るだけなのだ、と

葦舟から
そっと
手紙を取り出し

月の光で
封を開けると

折り畳まれた手紙から
貴方の息が
秘やかにたちのぼる

わたしは
真白な手紙に
息を吹きかけると

息の混じり合う指で
折り畳み
封を閉じ

葦舟の中に
静かに戻す




以前の
わたしの詩に綴った
葦舟で運ばれる白い手紙

この詩では
文字が流されてしまって
真っ白になった、としたのてすが、
もともと文字はなかったのではないか?
と思いました。

何も記されていない真っ白な手紙を
ただ、やり取りする。
そんな姿を描いてみたくなりました。

自分の詩に
自分で返詩を贈る

ナルシシズムも、ここまでくると…。

あなたの葦舟は
どんな手紙を運んでいるのでしょうか?



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?