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芥川龍之介と夏目漱石と菅虎雄

こちら展覧会に芥川龍之介の「或阿呆の一生」の草稿が展示されていました。芥川龍之介の肉筆を見るのは初めてのことでした。

芥川龍之介と美の世界 
二人の先達ー夏目漱石、菅虎雄


『或阿呆の一生』は死後に発表された遺稿の一つです。
原稿用紙のマスにぎゅっと押し込められた字。
しかもそれは非常に個性的で、男とも女ともつかない、これだけでフォントができそう…そんな特徴的な字。

約十年前に書かれた「鼻」「芋粥」の草稿とは全く違うその筆跡には、確かに何か病的な匂いが漂っています。

とはいえ、芥川龍之介は書画をよくする人です。
菅虎雄に宛てた手紙は 中林梧竹なかばやしごちく 風であるとすぐにわかるものでした。

中林梧竹は佐賀県小城市出身の明治時代の書家です。彼の字はとても味わい深く、表現力豊か。
書を学んでいない方からすると、「これの何がいいの?」と思われるかもしれませんが、梧竹の字からは過去の名跡をよく学んでいることがわかります。


一年ほど前、私も梧竹の書を学んでいて、その雰囲気を表現した作品を展覧会に出品しようとしたことがありました。
今となってはもう少し解放感を出したかった。



菅虎雄の字からは「漲る気」というものを感じました。

『羅生門』の題箋の字も菅虎雄が書いているそうです。小さいながら、本の全てと一体となり見事です。
下のホームページに写真があります。よく見ますよね。



夏目漱石の字に関しては特別巧いな〜というような印象はありません。
というか寧ろ、表出するテクニックみたいなのを嫌った人ではないかと思います。作為性も含めて。だから彼の字は嫌味がない。

この展示を通して、三人の多彩な才能に終始圧倒されました。
これを機に、改めて彼らの作品を手にとってみようと思います。

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