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小さな地球の音楽旅

日本から見て、地球の反対側はどこでしょう!?

公園の通りがかりに、小学生らしき子どもたちがクイズを出し合っている声が聞こえます。

ブラジル!」と勢いよく心の中で答えてしまうほど、私はこの国に強い憧れを抱いています。



ブラジルは“音楽大陸”と呼ばれるほどに、多種多様な音楽を生み出しました。

ブラジル音楽といえば、で真っ先に連想されるサンバにとどまらず、サンバにジャズをミックスしたボサノヴァショーロセルタネージョフォホーといったカントリーミュージック、サンバとレゲエの融合したサンバヘギなど、数えきれないバラエティ豊かな音楽があふれています。

いつか、現地で地元の人たちと一緒に、そんな曲が聴ける日が来るといいのですが。


それまでは地球の反対側でにぎやかな音の響きを楽しむほかなく、手持ちのCDやサブスクのプレイリストは、まるで小さな宝物です。
けれども私は運命論者のため、もっと劇的に、未知の名曲との出会いを希望します。

そうなると、最適な選択肢のひとつがラジオです。
こちら側が操作せずとも、ごった煮のごとく色々な音楽がかかりますし、ブラジル人DJが現地の人に向けて愛嬌たっぷりに喋るのですから、異国情緒と面白さに関しても言うことなしです。

ひと昔前なら味わうのに苦労したかもしれないこんな楽しみも、今ならスマートフォンのアプリを開くだけ。
海外電波を受信する複雑な技術や巨大アンテナ無しで、都市名、あるいはラジオ局の名前だけで、簡単に望みが叶います。


たとえば、まずブラジリアのラジオ局の放送に耳を傾け、次の都市はポルト・イグアス、やっぱりリオ・デ・ジャネイロがいいな、などとあちこちへ飛び放題。
ポルトガル語の早口のトークが流れ出し、ほんの一部分だけ聞き取れた、と満足するうちに、お目当ての軽快な音楽が流れ出します。

もちろん南米だけでなく、世界中どの国、どの都市の放送だって聴けてしまい、音楽ジャンルも選び放題。

ポーランドのクラシック専門局でショパンのピアノソナタを聴き、スペインでフラメンコの一種セビジャーナスを、ポルトガルでは物憂いファドフランスシャンソンミュゼットあるいはフレンチポップトルコではベリーダンスの定番曲を。


世界中の音楽に触れることができ、たとえ言葉はわからなくても、DJのトークまで楽しめる。
私にとって、こんなに愉快なことはありません。

しかも自分で選んだのでは、決して辿り着かなかったであろう曲たちとの出会いが素晴らしい。
世界にはこんなにも多種多様な音楽があり、それを歌う優れた歌手がいるのだと知り、嬉しさと興奮でくらくらするほどです。

曲名や歌手の名がわかる方が珍しいくらいでも、一期一会の音楽との出会いは堪能できます。


半年ほど前、地図の上で指をスライドさせて未知のラジオ局に飛んだ時、流れてきたのはナット・キング・コールの歌声でした。私の大好きな、エレガントきわまる歌手です。
嬉しさに浸っていると、次にはフランク・シナトラの歌声が。
オールディーズ特集をしているのかと耳を澄ませていると、続いて聴こえてきたのはビング・クロスビー

そこで、さすがに私も気がつきました。
これ、クリスマスソング特集だ、でもなんだってこの時期に?

窓の外には蝉が鳴き、日差しはかんかん。ちょうど夏の真っ盛りです。
こんなエキセントリックなことをするのは一体どこの何というラジオ局かと、画面を確認するなり笑ってしまいました。

ラジオ局の所在地がこう表記されていたからです。

クリスマス島

だからクリスマスソングを流していたのかと納得です。
それにしても、一年中そうなのかと興味がつきません。


こんな思いがけない出会いもあり、音楽に国境はない、というのがただの慣用句でないことを実感します。こうして音で巡ってみると、地球はとても小さく、どこも親密な土地に思えるのです。

いつものお気に入りの音楽もいいけれど、たまにはちょっと趣向を変えて、音によるこんな世界旅行はいかがでしょう?

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