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アラフォー夫婦 東南アジア最高峰キナバル山に登る(後編)

マレーシア在住1年の夫婦がボルネオ島に聳えるキナバル山(4095.2m)に挑戦する記事後編です。
ちなみに前編はこちらとなります。

山頂アタックの朝を迎える

いよいよ山頂アタックの日を迎えました。
出発は午前2時のため、起床は午前1時です。
昨晩夕飯を食べてから夕焼けを楽しみ、結局寝たのは20時ごろでしたので、5時間寝れたかどうか。
しかも高山のためか、緊張のせいか、あまりよく寝れなかったので一抹の不安がありました。
ただアンメルツのおかげか昨日の筋肉痛は和らぎ、二人とも体調は悪くないです。
階下の食堂でビュッフェスタイルの軽食とサバティーをしっかりいただきました。

本日のルートは、山小屋から標高差800mほど登り山頂を目指します。
山頂で御来光を拝んだのち下山開始。
山小屋で休憩・朝食・チェックアウトを終えた後、登山口まで1400mを下ります。
つまり、この日は800m登山の後、合計2200mを1日で下るというかなりハードな行程です。
登山前は登りの不安しかなかったのに、急に訪れる下山の不安。。
それでもようやく迎えた山頂アタック、思う存分楽しむぞ!

いよいよ山頂へ出発

また山小屋に戻ってくるので装備は必要最低限です。
ただ、標高4095mまで登るので防寒対策はしっかりとしていきます。
フリースの上にレインジャケット、ニット帽とグローブを身につけます。
山頂の御来光待ちが寒いと辛いので、ネックゲイター・ホッカイロ・保温アルミシートも念のため持参します。
そして山頂で一服楽しむために食堂から温かいサバティーをいただき保温水筒に入れました。

キナバル山登山の持ち物準備についてはこちらに書いています。

ガイドと午前2時すぎに食堂で合流し、いよいよ出発です。
と、この日は登山客が多いのと出発時間が集中したため、小屋からしばらく渋滞がおきました。
時期にもよると思いますが、渋滞を避けたい場合早めに小屋を出発した方が良いかもしれません。
しばらくは整えられた階段をヘッドライトの灯りを頼りにのろのろペースで登っていきます。

この日の天候はほぼ無風であまり寒さを感じません。
そして…見上げた空は満天の星が!!
澄んだ空気と漆黒の闇の中で満点の星空を見上げると、まるで宇宙へ吸い込まれていくような不思議な錯覚を覚えました。
星空はうまく写真に収めることができなかったので心のシャッターを切ります。

すでに森林限界を過ぎ、花崗岩の岩稜帯をひたすら登ります。
昨日の疲れと低酸素もあり体は思うようには動きません。
途中ロープありのエリアもあり、危険というほどではなにせよ、足場も見えにくいため、前日は後ろについていたガイドは今日は前で先導します。
ガイドはこれまでのコースで我々のペースをしっかり把握していて、遅過ぎず速過ぎずのジャストなペースで登っていきます。
これにはプロフェッショナルを感じました。
私は息を整えながらひたすら前をいくガイドの足運びに合わせ、無心で一歩ずつ登っていくだけです。

登頂、果たす

やがて緩やかな岩稜の向こうに黒々とした小高い丘が見えました。
それが目指す山頂、Low's Peakでした。
そして山頂を捉えたと同時に空が白み始めていることに気づきました。
時刻はもうすぐ6時、日の出が近づいていました。
あと数十メートル、、果たして間に合うのか。。。
すでに標高4000mを超えており、足も重くいきなりペースを上げることはできません。
横目に光を感じながら焦る気持ちを抑えつつ、今までのペースを守りながら一歩一歩、もう少し、もう少し。。

果たして、到着した4095.2mの山頂。

ご褒美は、今ちょうど出てきたばかりの柔らかく温かい御来光でした。

それまで闇だった世界が一気に光に包まれ、花崗岩の山肌を染めていきます。
ただただ、神々しい光景でした。

山頂はとても狭く、山頂を示す看板の前は写真撮影を待つ人で混み合っていました。
撮影の順番を待ちながら、キナバル山の御来光を心に刻みつけます。

思い返せばちょうど一年前、コロナ禍真っ最中のマレーシアに渡航したときは二週間のホテル隔離に始まり、その直後厳しいロックダウンが始まり数ヶ月間思うように外にもでれない生活が続きました。
慣れない土地で物理的にも心理的にも辛い思いをし、そんな環境で始まったマレーシア生活にどこか落ち着かない、消化不良な気持ちを感じていたんだと思います。
山頂に経った時、「ああ、ここまで来れた。私たちは大丈夫だ。」と自分達を認めて褒めてあげられる気持ちにようやくなれたのを感じました。
山頂に立てた達成感はそのままマレーシアでの一年間の達成感でした。
本当に来てよかった、来れてよかった。

お日様に、今までの感謝とこれからの健康を祈って手を合わせました。

周りを見渡すと登頂を果たせた他のグループも一様に笑顔で、"Enjoy the moment!"と声がかかります。
看板の前に立つと、ガイドから"You've done it! Congratulations!"と言われ、しっかりと握手しました。
寡黙な彼ですが、特に最後のペース作りが素晴らしく、無事登頂することができたのは彼のおかげです。

山頂での一枚は達成感に溢れたいい笑顔、最高の一枚になりました。

Low’s Peak 4095.2m!

後続のグループに場所を譲り、Low's Peakを下ると、少し緩やかな場所に出るので、岩に腰掛けてしばらく眺めを楽しみました。
朝日に照らされた光景は想像以上でした。
100リンギット札に描かれて有名な尖ったSouth Peakの背景には、山麓が広がって見えます。
右手には遥か先にコタキナバルの海が見えます。
また、朝日と逆側の雲海にはキナバル山が影となって裏キナバル山を見ることができました。

大パノラマを背景にSouth Peak
影キナバル山

2人で温かいサバティーをゆっくり飲むと、登頂の興奮はじわじわと安堵に変わっていくのを感じました。

下山、そして旅の終わり

景色を存分に堪能して、いよいよ下山開始です。

登りは闇の中に沈んで見えなかった景色がくっきりと見渡せる大パノラマ。
見えてしまうととたんに高所の恐怖が出てきてしまうんですね。
なかなかのスリルでした。

山麓がくっきりと見渡せる一大パノラマ

風がなくまた日差しを遮る木々もないので汗ばむ気温でした。
念のため持参したホッカイロの出番はなかったです。

山小屋まで到着すると朝食をいただき、荷物をまとめてチェックアウトです。
ただここまでの標高差800mの往復で多少疲れていて休憩していたら、10時に出発しようと思っていたのが結局10時半になりました。

お世話になったラバンラタレストハウス

山小屋から登山口までの下りは標高差1400m、正直とてもしんどかったです!
下りは登りよりも足に負荷がかかるので、長距離の下りは徐々に足が辛くなっていきます。
普段下りに強い私も、中盤をすぎると太ももがガクプル。。
何がしんどいって、途中トイレで便座につかないように中腰姿勢なのですが、太ももがもう踏ん張れない。。泣
弱い雨も降り出しトレッキングポールに寄りかかるようになりながら黙々と下ります。

なんとか登山口近くまでくると、最後は少し登るんですね。
最後の階段を登りきり、結局5時間以上かかって登山口まで戻ってきました。
ああ、終わったんだ。。

戻ってきたティンポホンゲートでガイドと共に
登山口にはYou are successful climbersの文字が

安堵感とともに、この美しいトレイルを後にする寂しさがじわじわと湧いてきました。

ちょうど来た送迎バスに乗り公園事務所まで戻ると、待っていたスタッフから登頂証明書をもらいました。
登頂成功するとこのカラフルな証明書がもらえます。
ちなみに体調や天候不良で山小屋までの到着の場合は、これが白黒バージョンになるそうです。
大人になってからもらう賞状ってこんなに嬉しいんですね。
しばらく見入って嬉しさを噛み締めます。

マレーシアらしい鮮やかな証明書、良い記念になりました

そして二日間お世話になったガイドにチップを弾み、お別れをしました。
寡黙だけど、真面目でプロ気質の良いガイドでした。

手配されていた送迎バスに乗り込むと名残惜しくキナバル公園を後にしました。
コタキナバルのホテルまで送ってもらうと、我々のキナバル山ツアーは終了したのでした。

キナバル登山を振り返る

ガイドブックには初心者でも登れる山と書いてあります。
ガイドがつきますし、大きく危険な場所がないという意味では正しいと思います。
ただ体力という意味では、日頃全く運動してませんという人にはやや厳しいかと思います(特に下りが。。)。
私たちは週一の低山ハイクとウォーキングや宅トレをしていました。
また麓から山頂まで気温が大きくかわるので装備の準備も重要になってくると思います。
天候については、あとからツアー会社に聞いたところゴールデンウィークの頃は毎年比較的晴れが多いとのことでした。

マレーシアに来て一年間、厳しいロックダウンの日々を経て、ゆるゆるのんびり暮らしてきました。
そんな中キナバル山という目標ができ、ツアー予約をしてからの4ヶ月は心の中にポッと光が灯ったようでした。
本当に自分にできるのか不安でしたが、道中の景色・人・動植物の美しさに後押しされ、自分の足で辿り着いた山頂で見た御来光の美しさはきっと一生忘れないでしょう。
大きな達成感と共に大自然にたくさんのエネルギーをもらったので、マレーシア2年目も元気に過ごしていこうと心に誓った、思い出深い旅行になりました。

最後にラバンラタ小屋の壁にかかった言葉を心に刻みます。

EMBRACE LIFE,
ENCOUNTER ADVENTURE
NOTHING IS IMPOSSIBLE

おしまい。

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