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アラフォー夫婦 東南アジア最高峰キナバル山に登る(前編)

マレーシア滞在1年の節目にボルネオ島に聳える名峰キナバル山への登山を決意したアラフォー夫婦の旅行記です。
前回はキナバル山登山に向けた持ち物準備について記事を書きました。

今回は実際の登山について書きたいと思います。

キナバル山とは?

キナバル山はボルネオ島北部に位置する東南アジア最高峰の山(4095.2m)です。
世界自然遺産に登録され、周辺一帯が自然公園として保護され、熱帯雨林〜高山帯〜岩稜帯と標高が上がるごとに変化する景色や珍しい植生が非常に美しい山となります!
よく「初心者でも登れる4000m超の山」と言われますが、トレイルが整備されており特別なクライミング技術を必要としない、という意味であり、結論から言うと普段全く運動していない人にはかなりきついと思います。
我々もマレーシアのロックダウン期を経てなまりきった体を週一の低山ハイクと宅トレで鍛えたつもりではあったものの、下山後の筋肉痛は凄まじいものがありました。。

さて、キナバル山はその自然の美しさから大変人気の山であり、入山制限のため山小屋での宿泊も完全予約制となりますので、早めの予約が必須です。
我々は日本語で対応いただけるボルネオトレイルさんで「キナバル登山2泊3日キナバル公園&ポーリン温泉ツアーあり」を予約しました。
ちなみに費用は時期や宿泊部屋の種類によって異なってきますが、送迎費・ツアー代・ガイド料・宿泊費・食費・入園料・登山許可費・保険費等々を含み決してお安くはありません。

ポーリン温泉ツアーではスリリングなジャングルのキャノピーウォークと念願のラフレシアを拝むことができ素晴らしく満足なツアーでしたので、また今度記事にしたいと思います。

キナバル公園で前泊

さて早朝にコタキナバルを出発しポーリン温泉ツアーを終えた我々は夕刻キナバル公園に到着しました。
この日はキナバル公園事務所で待っていたスタッフの指示に従い、ロッジのチェックインを行いました。
その後、事務所横の窓口で入山届けの書類に記入すると登山許可IDタグを受け取ります。

キナバル公園内にはいくつかの宿泊施設があり、それらは公園事務所が一括管理しています。
公園は広大なのでチェックイン後ミニバンで宿泊施設まで送り届けてくれました。
我々の宿はLiwagu Suiteというロッジです。

Liwagu Suite外観
広々とした室内 窓越しにはジャングルの緑が
メゾネット上階がベットルーム
ロッジ共用部

部屋は広々とメゾネットタイプです。
大きく空いた窓からはジャングルの緑が広がり、気持ちの良いロッジでした。
公園内に数軒あるロッジのうちどこになるかは、予約時の空室状況によって割り当てが変わるようでした。希望があれば予約時に伝えるのがベターです。

滞在の注意点としては、大自然の中にあるが故に虫さんが多いです。
マレーシアに住んでいながらまだ虫が怖い私。
我々のほうが大自然にお邪魔している立場ですし、公園内のどこの宿も同じだと思うので、がまんがまん。

この日の晩御飯はロッジ併設のレストランでビュッフェ。
登山前日ということもあり、炭水化物を多めにカーボローディングをし、荷物のチェックを終えて早めに寝ました。

登山当日!いざ、出発!

いよいよ登山当日の朝を迎えました。
日頃の行いが良かったのか(?)、素晴らしい天気に恵まれました。
体調も万全、ご飯も進みます。

食堂テラスで出来立てオムレツ

ロッジを後にし再び公園事務所へいくとすでに多くの登山客が準備を整えている最中でした。
国境が空いて間もないこともあり外国人客は少ない様子。
ハリラヤ休暇中ということもあり一見してマレー系はあまりいないようで、中華系とインド系の登山客がメインでした。
日本人登山客は我々とあともう1〜2組くらいのようでした。

事務所前からの景色。快晴!

スタッフの指示に従い、チェックアウトと同時にスーツケースを事務所に預け(RM12)、その後ガイドと合流します。
我々は事前に山小屋までのポーターを依頼していたところ、今回はガイドがポーターも兼ねるということで、登りに必要なもの以外を大きなバッグに入れガイドに預けました(10kgまでRM130)。
我々のガイドは寡黙な方で最初は静かで大丈夫かな?と思ったのですが、後々彼のガイド技術に大いに助けられることに。

ランチBOXと水(ずっしり荷物が増えた、、)を受け取ると出発準備完了です。
登山口にあたるティンポホン・ゲートまでの送迎車を待つ間最後の準備を整えます。
目前には青空にキナバル山が眩しいほど美しく映えます。

いざ、キナバル山へ!
登山IDタグは登山中ずっと首にかけて行動する

ゲートに着くと、ガイドからルートの説明がありました。
我々は道中噂に聞く食虫植物ウツボカズラが絶対見たかったので、ガイドにその旨伝えると、寡黙な彼は少し嬉しそうに「見れる場所にいったら教えるね!」と約束してくれました。

ゲート窓口でサインをすると、果たして我々のキナバル登山は始まりました。

登山口ティンポホン・ゲートにて
ルート説明を受ける他のグループ

苔むすジャングル 美しいトレイルを登る

キナバル山のトレイルは驚くほど綺麗で、よく整備されています。
山小屋までの道は急登が続くものの、階段が整備され、特に足元が危ないと感じるところはありません。
山小屋までのルート上には7ヶ所の屋根付きの休憩所があり、全てに水洗トイレ(!)とゴミ箱が設置されています。
登山客は山を登ることと景色を楽しむことに集中し、それ以外は心配しなくていいのです。

登山口から少しいくと大きな滝が現れ、熱帯雨林のジャングルが続きます。
トレイルは深く苔むし、美しいシダが茂っています。
体力づくりのため歩いていたKL近郊の低山もジャングルだったけど、ここは登り始めてすぐ2000mに達する標高のため植生が異なり、見たこともない花や草木が生い茂っています。

トレイル入ると大きな滝が
可憐で可愛い花
小さいながらも力強く咲く花々
野生の蘭かな?

そんな珍しい植物に励まされながら登ることしばらく、ガイドがすすっと前に進んだかと思うと、「ここにあるよ」と指差してくれた先にお目当てのものがありました。

原生するウツボカヅラ
中には虫を捕らえる液体が

図鑑でしか見たことのなかったウツボカズラです。
思わずうわっと声が漏れ、こんな不思議な植物が実在するのかーとしばし感激に浸り、疲れも忘れて撮影しました。
捕虫袋の中にはしっかり液体がはいっていて、見れば見るほど不思議な植物。。
ちなみにこの綺麗な緑色の種類は比較的下の標高で見たもの。
山小屋に近い3000m辺りになると巨大でグロテスクなものが現れます。
トレイルから横の脇道にガイドが案内してくれた先にあったのは、こちら。

手のひら大の大きさのウツボカズラ
空いた口が生き物のよう
色も鮮やか

標高があがると虫も減るのでより虫を捕まえやすく大きくなるのだとか。
こう見るとなんだか意思のある生物に見えてきますね。
ガイドによると大きなものは2リットルくらいの大きさになるのだそう。
すごい…!
このような独特の植生はキナバル山登山の大きな見どころであり、それだけでもいく価値があると思います。
ガイドもなんだか自慢するように嬉しそうに説明してくれるのでほっこりした気分になり、ウツボカズラのおかげで疲れが癒されました。

ちなみにガイドですが、つかず離れずの距離感で一緒に進んでいきます。
あくまで我々のペースで歩き、休みたいところで休み、それを少し離れたところから見守るスタンスです。
当初日本人の我々はガイドというと、先頭を歩き色々指示を与えて説明をどんどんしてくれる、と思っていたのですが、そうではないんですね。
初めは拍子抜けしたもの、途中からそれが心地よくなってきます。
というのも1400mの高度を約6時間かけて登っていくわけですから、自分のペースを守り無理しないことが大事です。
あと後半になると登りに必死になるので、色々説明されても対応がしんどかったかもしれません。
かといって放っておかれるわけではなく、我々の質問や要望には丁寧に対応してくれたので、信頼できる真面目なガイドでした。

我々のペースはゆっくりだったので、後発グループにもどんどん抜かれます。
だけど気にない、これが大事。
下ってくるグループが「Good Luck!」「加油(ジャヨウ)!」と声を掛け合いながら、すれ違います。
まだまだこれからの急登で息を切らしながら登っていると、前から「もう少しでゴールだよ!」と絶対嘘の掛け声がかかり、笑いがおきます。
みんな思い思いに山を楽しんでいる様が見て取れ、トレイルは終始良い雰囲気でした。

また驚くべきは歩荷さんの数です。
のちに書きますが、3272mに位置する最大の山小屋ラバンラタレストハウスは水洗トイレ・シャワー・タオル付き、食事はビュッフェで食べ放題という驚くべき山小屋です。
使用する日々の物資はすべて人力で上げていきます。
我々の荷物の数倍もある重量を背負い、すいすいと登っていく歩荷さんには追い抜かれるたびに驚かされました。
彼らの働きが裏にあるからこそ、快適な登山と宿泊が可能になっていることに素直に頭が下がりました。

山小屋用のリネン類を運ぶ歩荷さんたち

高山帯を行く〜山小屋に到着

途中ランチを挟み、登りの後半戦をどんどんすすんでいきます。

見た目はアレですが山で食べるご飯は美味しいです
休憩所には食べ物を狙ってリスが駆け回る

標高が上がるにつれて、植生はジャングルから低木の森へと変わっていきます。
ちょうど霧が立ち込みはじめ、幻想的な雰囲気の中を進んでいきます。
最初団子のように登っていた各グループもこのころにはだいぶ間隔がばらけていたので、我々のみの静かなトレイルとなっていました。
植生は異なるもののなんとなく屋久島の深く神秘的な森を思い出し、しんとした厳粛感と高揚感に包まれます。
ああここは神聖な場所なんだな、と山への敬意が自然と湧いてきます。

しっとりと神秘的な森を歩く
標高が上がると低木の森が広がる

あと1kmの看板があってからがとても辛かった。
霧雨と薄くなった酸素の中、進んでも進んでも到着しないんじゃないかという気持ちになってきて、小屋が見え始めたころには、足元がだいぶ重くなっていました。
小屋手前のパナラバン看板前で写真をとろうにも3段の階段が辛いよ、、、
という情けない姿でなんとか本日の宿、ラバンラタレストハウスに到着したのでした。

この3段が辛い。トレッキングポールにつかまり立ち笑。左手がラバンラタレストハウス

ラバンラタレストハウス

3272mの標高に位置するラバンラタレストハウスは、キナバル山最大の山小屋でその規模・設備からいっても小さなホテルのような山小屋です。
大変人気の山小屋だそうで、我々が4ヶ月前の1月に予約した段階ですでに部屋の確保がぎりぎりな状況でした。
1月当時コロナ状況もまだ先が見えない状況だったので、二人部屋の個室を予約しました。
確かに人気のはず、個室はシャワールームがあり、トイレも水洗、シャンプーやタオルなどのアメニティも揃っています。
マットレスのベッドは清潔に整えられています。
このタオルやシーツはあの歩荷さんたちが上げてくれたのかーと思うととても有り難く、この標高で快適に過ごせることに幸せを感じました。
同じ階の大部屋を覗くと4人の相部屋のようでしたが、どの部屋も満室のもようで、山小屋内は大変賑わっていました。

2人部屋個室内部と疲れ切った人
水洗トイレ タオル・アメニティ付き
広々としたシャワールーム 冷水のため足を洗っただけ

ところで、私は山小屋という場所が好きです。
なぜかと聞かれるとうまく答えることが難しいのだけど、山という大自然の中の心の拠り所というだけでなく、山が好きな人が集まり不自由ながらも素朴で豊かな空気感があり、日帰りでは味わえない景色に出会えるから、とでも言いましょうか。
登山という超アウトドアな体験の中で、山小屋での滞在にはなぜか文学的な味わいを感じてしまうのです。
ラバンラタレストハウスは日本の一般的な山小屋と比べ設備が整いすぎているほどでしたが、旅好きにはたまらない、温もりと味に溢れた素晴らしい山小屋でした。

山小屋の廊下
たくさんの写真やアートが壁にかけられ雰囲気のある山小屋内部

さて、到着は15時すぎくらいだったでしょうか、16時から夕飯開始でしたが、食堂は混んでいたで、少し部屋でのんびりし、着替え・汗拭きなどして過ごしていました。
しばらくして食堂へ降り、いまだに大賑わいの食堂でビュッフェをいただきます。
オープンスタイルのキッチンの中でコックさん数名がせっせと鍋を振っています。
出来立てのご飯を美味しくいただきます。
明日は山頂まで800mの登り、その後は2000mの下りが待っているので、この日もカーボローディング。
売店でビールも買えますが、明日に備えてお酒は封印。

もぐもぐタイム!
大賑わいの食堂
活気のあるキッチンとビュッフェカウンター

食後はゆっくりと名産の紅茶サバティーをいただきます。
キナバル山の麓は紅茶の産地でもあるのです。

食堂テラスからは晴れていれば雲海上に絶景が見れるのですが、この時はあいにく霧が濃く景色は望めませんでした。
それでも高地独特の澄んだ冷気が気持ちよく、しばし深呼吸をしたりしてテラスで過ごしました。

ラバンラタレストハウスのテラスにて

食堂内の売店でお土産として小屋オリジナルTシャツと翌日用のペットボトルを購入し、部屋に戻って翌日の山頂アタックの準備を始めました。
何しろ明日の出発は午前2時。
起床は午前1時です。
19時には就寝目標でもくもくと翌日の準備をしつつ、痛む足にアンメルツを塗り込んだりしていたとき、部屋の窓がほんのり赤く染まり始めたことに気づきました。
霧が晴れ始め、突然夕焼けが現れたのです!

慌てて1階の食堂テラスに行くと、上と下に雲が広がり我々のいる山小屋はその雲の隙間にすっぽり浮いているような不思議な光景が広がっていたのでした。

上下雲の狭間での夕焼け
標高3300m、まるで新海アニメの世界
淡いグラデーションの絶景
窓上に掛けられた言葉が印象的
Embrace life, Encounter adventure, Nothing is impossible

夕日が上下の雲を染め隙間の青空と不思議なグラデーションを作り、今までに見たことない不思議な夕焼けを見ることができました。
山に泊まらないと見れない絶景。
そしてこの時、夕焼けと逆の方向に小さな彩雲を見つけたのです。

彩雲、わかるでしょうか?

これは瑞雲に違いない、明日は晴れてきっと我々は登頂するんだ!と確信をいだいた瞬間でした。
果たして明日はどんな絶景に出会えるのでしょうか。
なんとも幸せな気持ちで結局この日は20時ごろ眠りについたのでした。
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ここまで読んでくださりありがとうございます。
キナバル山の旅は後編につづきます!

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