nakazumi

長野の高原で喫茶店をやっています。https://r.goope.jp/cafe-na…

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長野の高原で喫茶店をやっています。https://r.goope.jp/cafe-nakazumi/

マガジン

  • 本や映画のこと

    おすすめの一冊や映画についてまとめた文章です。

  • 人々との日々

    ちょっと笑顔で心をほぐしたい時に。誰かとのやりとり、小競り合いから生まれた文章です。

  • お店をめぐる色々

    営んでいる小さなカフェをめぐる出来事、思いなどをまとめています。

  • ジーンとした話

    嬉しかったり切なかったりしんみりしたり、ちょっぴり心震えたお話をまとめています。

  • つれづれと思うこと

    山暮らしの日々の中で考えていることを綴った文章をまとめています。

最近の記事

『女の勲章』山崎豊子 著

カフェ店主おすすめの一冊と、個人的に気に入っているツボをご紹介します。 今回は、過去に何度も映画・ドラマ化されている山崎豊子の小説『女の勲章』です。 以前、長い長い船旅の際に持参して、船内で読み切りました。 早々に船酔いでまったく動かなくなった夫の横で、じっくりと読んだ記憶があります。 船内の売店やレストランが閉鎖されるほどの揺れでも、乗り物酔いをしたことのないわたしは食欲も読書欲も失せることがありませんでした。 さて、『女の勲章』は、大阪船場生まれのヒロイン式子が、商才

    • 虫めづるおば君

      店のテラスに睡蓮の鉢を置いていた頃、夏になるとその鉢の水にボウフラがわきました。 気持ちが悪いし蚊が増えると嫌なので、時々網ですくっていたわたし。 ボウフラが呼吸のために水面に浮上してきたところを、金魚すくいさながらにサッと取るのです。 そして鉢の外に落とす。 するとほどなくアリがやってきて、テラスのタイルの上で乾いて弱ったボウフラから順に運んでいきます。 まだ息のあるボウフラが、ジタバタしながらアリに運ばれていく様を、しみじみと眺めてしまうヒマで残酷なわたし。 しばらくする

      • 6月のお客様

        「6月の花嫁は幸せな結婚生活を送る」と言われるジューンブライド。 梅雨時に需要を増やそうという結婚式場の戦略かと思ったら(そういう面もあるらしいのですが)、これはヨーロッパに古くからある言い伝えだそうです。 ローマ神話の6月を守護する女神ユノ(Juno)が由来で、結婚・出産・育児の象徴であり、女性・子供・家庭を守る神だから、とのこと。 (他、6月は農作業がひと段落する季節だからという説、ヨーロッパでは6月が一番気候が穏やかだからという説も) ちなみにユノには、子供たちを守る母

        • 水色とラベンダー色の姉妹

          人に色がついて見える、というお客様がいらっしゃいます。 彼女は占い師でもカウンセラーでもなく、オーラとはまったく関係のないお仕事に就かれている方で、ある日突然、人の周りに色が見え始め、いわゆるオーラというものなのかどうかもご本人にはわからず、その色が何を意味しているのかもわからないそうです。 店で居合わせた常連様を見てもらうと、「〇〇色。疲れている感じ」とか「すごく勢いのある○○色で個性が強い感じ」とか「とってもキレイな〇〇色! いい人だと思う」とか、わたしにこっそり教えて

        『女の勲章』山崎豊子 著

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        • 本や映画のこと
          14本
        • 人々との日々
          34本
        • お店をめぐる色々
          35本
        • ジーンとした話
          16本
        • つれづれと思うこと
          48本
        • かんたんアナログゲーム
          6本

        記事

          人間の器

          ある朝目覚めたら、「人間の器」が見えるようになっていました。 夢の話です。 わたしにだけ、「人間の器」が見える夢を見たのです。 最初に見えたのは自分の器で、それは白くてザルのように浅い器でした。 ちょうどおヘソの辺りに水平に付いていて、大きさは、自分の胴回りくらいのサイズ。 「ふむふむ、自分の器はこのぐらいか」 と、妙に感心しながら、ちょっと浅いけど、自分の体の幅と同じ大きさというのはおそらく人並みなのでは? むしろ、人並み以上かも? お茶碗サイズじゃなくてよかった、な

          人間の器

          2つの貯金

          あるカップルのお話です。 彼の名は、太郎さん。 彼女の名は、花子さん。 2人が結婚する前の交際期間、花子さんは貧乏生活をしていました。 主食はパン耳、嗜好品は断念、毎月の光熱費の請求額を前月よりもいかに少なくするかに情熱を注ぐ節約生活真っ最中。 デートで外食する際は、いつも太郎さんがご馳走してくれました。 でも、花子さんは自分の手料理も振舞いたい。 恋する女のパワーはすごいので、限られた食材で、喜んでもらえる料理を作る術を、花子さんはその時期に得ることができました。 す

          2つの貯金

          メンドクサイこだわり

          ある日、Amazonプライムビデオを視聴しようとしたらなぜかエラーが出てしまい、解決法を探るべく「Amazonプライムビデオ」「見られない」と入力してネットで検索しました。 すると、検索画面の一番上に、「『Amazonプライムビデオ 見れない』ではありませんか?」との表示が。 瞬間的に「ええっ?!」とわずかに身を乗り出してしまう程度に、わたしは「ら抜き言葉」に反応しがちです。 さらに検索結果リストには、「アマプラが見れない時の……」「プライムビデオが見れない場合の……」などと

          メンドクサイこだわり

          連小説女子会

          以前、友人達と4人でやってみた「連歌女子会」をご紹介しました。 この時とまったく同じメンバーで、今度は「歌」ではなく「小説」を作りました。 連歌と同じ手順で、「起・承・転・結」それぞれを4人が担当してその場で一つの短編小説を作るという「連小説」ゲーム。 「連小説」は勝手に作った造語です。 手順は、まず4名それぞれが、思い思いの小説のタイトルとその導入部にあたる「起承転結」の「起」の部分を200字程度で作って用意します。 これで4つのタイトルとそれぞれの「起」の文章ができあ

          連小説女子会

          ヨシタケシンスケ展と上田映劇

          上田市立美術館(サントミューゼ)で開催中の「ヨシタケシンスケ展に行ってきました。 以前、虹色のかめと花笑のさるさんが記事にされていて、ぜひ行ってみたいと思っていたのです。 やっと長野県にもやってきました。 ヨシタケシンスケさんの本は、そんなに持っていません。 でも、当店で定期購読している『暮らしの手帖』でイラストの連載をされていて(『みらいめがね』)、毎号届くたびに、荻上チキさんの本文よりもまずヨシタケシンスケさんのイラストを真っ先に見てしまうのです(チキさんすみません)

          ヨシタケシンスケ展と上田映劇

          『奔馬』三島由紀夫 著

          店主おすすめの一冊と、個人的に気に入っているツボをご紹介いたします。 今回は、『豊饒の海』の第2巻『奔馬』です。 以前、第1巻の『春の雪』をご紹介しました。 その後、magobee66さんの衝撃的なタイトルとともに素晴らしい『春の雪』についての記事が上がり、 つい先日、さらに『奔馬』についても、これまた大変鋭いユニークな記事を上げていらっしゃいました。 タイトルの斬新さに意表を突かれますが、「まあでも、たしかにそういう内容ですよね」と思ってしまう的確さがあります。 本文

          『奔馬』三島由紀夫 著

          『笑わぬでもなし』山本夏彦 著

          カフェ店主おすすめの一冊と、個人的に気に入っているツボをご紹介します。 今回は山本夏彦のエッセイ集『笑わぬでもなし』の中から、「犬と私と」です。 たしか30年ほど前に、『ダメの人』(同じく著者のエッセイ集)とともに立て続けに読んだと思うのですが、その中で、この「犬と私と」だけは、ハッキリと今も記憶している大好きなお話。 ある夜、生まれたばかりの捨て犬が、著者の自宅の門前に辿り着きます。 哀れなひもじい子犬の鳴き声を放っておけない妻が、その子犬を自宅に引き入れ牛乳を与えます

          『笑わぬでもなし』山本夏彦 著

          冒険のすすめ

          旅先で食事をする際、利用するお店を事前に調べてから訪れるという人が、今は多いのかもしれません。 わたしも、以前は絶対に「調べる派」でした。 旅行中の「食べること」というのは最大の楽しみで、前もって現地のお目当てのお店をいくつかチェックして、ある程度満足が期待できそうなお店を選んでいました。 せっかくの初めての場所で、貴重な一食を失敗したくなかったからです。 ところが、夫は全然「調べない派」。 行き当たりばったりで、その場で選んだお店に入ります。 と言いましても投げやりなので

          冒険のすすめ

          オシャレキラー

          ずいぶん前のことですが、IKEAでオシャレなフックを購入しました。 壁に取り付けるタイプのもので、シンプルなキューブ状。 こういうシュっとして角ッとしたデザイン、わたしは大好きなのです。 自宅用にいくつか購入して取り付けて余ったので、夫が「店でもどこかに付ける?」と聞いてくれました。 そこで、「そういえば、トイレ内に上着とかバッグとか掛けるところ無いから、フックあるといいかも!」ということになり、さっそく店のトイレにて二人で設置場所を検討しました。 ただ、このデザインの

          オシャレキラー

          ベテラン夫婦の極意

          実家に帰省した時のこと。 金婚式をとっくに過ぎた両親が、茶の間で何やら揉めておりました。 ちょうど隣の部屋にいたわたしは、(いつもの小競り合いだなー)と思っていたのですが、そのうち母がピシャっと何か一言放ったようで、それを機に空気が一変しました。 普段は温厚でのんびりしていて、母に小言を言われてもまったく口調が変わらない穏やかな父が、珍しく少し間を置いた後に言ったのです。 「どうして、そういう言い方をする……!」 けっして大声ではないけれど、ゆっくりと、強い口調で、襖越

          ベテラン夫婦の極意

          夢見る喫茶店

          古文の世界では、夢に誰かが現れたら、その現れた人の方が夢を見ている自分を想っている、という解釈をするそうです。 学校の古文の授業で初めてそれを聞いた時、「なんて都合のいい捉え方なんだろう!」と驚きました。 どう考えても自分の方が寝ても覚めても熱烈に想うからこそ、夢にまで見るのだろうに自惚れも甚だしいなあ、と。 でも、店を営むようになって、あの古文の世界の考え方はあながち間違いでもないのでは、と思うようになりました。 本当によくあることなのですが、朝の店の開店準備中に、何の

          夢見る喫茶店

          映画『かもめ食堂』

          まだ当店が影も形もない2006年、だけど「店をやろう」と決めていたこの年、映画『かもめ食堂』を観ました。 小林聡美演じる主人公が、フィンランドでひとり開いた食堂を巡る物語です。 映画の序盤、なかなかお客様が訪れず、それでも主人公が毎日グラスを磨き、テーブルを拭いて空っぽの店内でお客様を待つ様子に、わたしは覚悟しました。 「きっとこれから始めるわたしの店も、そうなるだろうな。だけど、信じて辛抱しよう」と。 でも、見ていてだんだん落ち着かない気持ちになります。 お客様が来ない

          映画『かもめ食堂』