虫めづるおば君
店のテラスに睡蓮の鉢を置いていた頃、夏になるとその鉢の水にボウフラがわきました。
気持ちが悪いし蚊が増えると嫌なので、時々網ですくっていたわたし。
ボウフラが呼吸のために水面に浮上してきたところを、金魚すくいさながらにサッと取るのです。
そして鉢の外に落とす。
するとほどなくアリがやってきて、テラスのタイルの上で乾いて弱ったボウフラから順に運んでいきます。
まだ息のあるボウフラが、ジタバタしながらアリに運ばれていく様を、しみじみと眺めてしまうヒマで残酷なわたし。
しばらくすると、落とされたボウフラは働き者のアリ達によってきれいさっぱり片づけられます。
ご近所の友人 K は、スズメバチvs.クモの様子を語ります。
「うちのベランダのクモの巣に、スズメバチがかかったの! でも羽が引っかかっただけのスズメバチじゃ、クモも命がけでしょう? どうなるかと思ってずーっと見てたんだよ。案の定、近寄ってきたクモをスズメバチが逆に捕まえて、『スズメバチの勝利⁈』って思いきや、なんとクモ、危機一髪で糸吐いて下にスーッと落ちて逃げたんだよ~! それからスズメバチはもがいてクモの巣から外れて飛んでいったの。痛み分けだね。いい勝負でしたあ!」
わたしにとっては十分にテンションの上がる話で、一緒に聞いていたやはりご近所の友人 M も、「なんで動画撮らなかったのー!」と言うほど興味津々だったのですが、同じ話を K が職場で興奮気味に話したところ、街に暮らす同僚達は若干引き気味で大して盛り上がらなかったとのこと。
ということは、これを読んでくださっている多くの皆様も、とくに興味が無いかもしれません。
昆虫の世界、山に暮らすわたしたちはどうしても惹かれてしまうのですが。
そして、友人 M も自宅の庭で見たアリジゴクの戦いを語ります。
アリジゴクはウスバカゲロウの幼虫で、砂地にすり鉢状の巣を作って獲物を捕る虫ですが、子供の頃、この巣の中にいろんなものを投入したものです。
ところがこの友人 M は、アリジゴクの巣に、なんと別の巣のアリジゴクを投入してみたと言うのです。
アリジゴクvs.アリジゴク。
M が語るその結果は、「もともと居るその巣の主のアリジゴクが勝つの。やっぱり、ホームが強いってことだね」。
山のおばさんは、昆虫観察が大好き。
そしてちょっと残酷。
自然界には、人間なんかよりずっと多くの昆虫が、生きて戦って暮らしています。
食うか食われるかのギリギリの戦い。
自分もその自然の中の一部のはず、とボンヤリ思いながら、今日も昆虫たちに見入って時を忘れる午後。
ヒマなのだな。
こんな時間を持ちつつも、これでもわたしも戦っているのです。
「お客様がいらっしゃらない時間」という精神的ダメージとの食うか食われるかのギリギリの戦い。
梅雨が明けたらいよいよ繁忙期です。
ヒマ地獄からの脱却、目指したいと思います。