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連小説女子会

以前、友人達と4人でやってみた「連歌女子会」をご紹介しました。

この時とまったく同じメンバーで、今度は「歌」ではなく「小説」を作りました。
連歌と同じ手順で、「起・承・転・結」それぞれを4人が担当してその場で一つの短編小説を作るという「連小説」ゲーム。
「連小説」は勝手に作った造語です。

手順は、まず4名それぞれが、思い思いの小説のタイトルとその導入部にあたる「起承転結」の「起」の部分を200字程度で作って用意します。
これで4つのタイトルとそれぞれの「起」の文章ができあがり。
そして4人で輪になって隣へその原稿を渡し、他人の書いた「起」を読んでそれに続く「承」にあたる部分を同じく200字程度で即興で書くのです。
同じように「承」「転」「結」も隣へ回しては書き、と繰り返して、4人で力を合わせて作った短編小説が4作品できあがる、というゲーム。

もちろん、自分以外の人が書いた文章はその場で初めて読むことになります。
連歌以上に前の人が書いた内容から、どんなストーリーに展開するのか、材料となる情報をどう絡めてどう繋いでいくのか、どんな結末にするのか等々、なかなかに脳みそを使う思考を巡らせて悶絶する時間が流れました。
読んで続きを書くのに、だいたい10~20分くらいかかったと思います。
アラフィフ4名女性が頭を突き合わせ、無言で机に向かってカリカリカリカリ……とペンを走らせる音だけが響く不思議な光景。
なにこれ、合宿? 研修? という妙な雰囲気が漂っておりました。
これだけの分量の文字を「入力」ではなく「書く」という行為が久しぶり過ぎて、もどかしくも懐かしかったです。


そういうわけで、4人で作った4つのショートストーリーのうち、恥ずかしながら一つご紹介いたします。


『花見車』

 花見車というサービスがあるらしい。とあるベンチャー企業が始めたとかで、その車に乗り込むと、自動運転で満開の桜の下へ連れて行ってくれるのだという。
試作段階のため予約は受けていない。ただ、前の乗客が降りた時だけがそれに乗ることができるチャンスだという。

以上A子担当

 私が花見車のことを知ったのは、行きつけの居酒屋だ。隣り合わせた若い女性客が大将を相手に話しているのを何気なく耳にしたのだ。
「ナニ、乙女チックなことを言ってやがる。第一、地元の桜は今が満開だ。わざわざ車に乗ることはないじゃないか」
そう思っていた矢先、私は見つけてしまったのだ。

以上B子担当

 居酒屋を出た私の目の前に、桜模様がペイントされたワゴン車が停まり、中から若い男性が小さな女の子の手を引いて降りてきた。心なしか男性は涙ぐんでいるように見えた。
 運転席から、「こちら『花見車』です。どうぞご乗車ください」と優しい女性の声がかかる。戸惑う私にさらに「あなたはラッキーですよ。今このタイミングしか乗れないんですよ」と。
 今しがた居酒屋で聞いたあの花見車だろうか、まさか、と思いつつ、何かに背中を押されるように私は車に乗り込んだのだ。

以上C子担当

 車内で再び先ほどの女性の声が流れる。
「ご利用ありがとうございます。この花見車は時代を遡って満開の桜を見に行くことができます。運が良ければ、その時代を生きる誰かに会うこともできるかもしれません。それでは、ご希望の時代を西暦でご入力ください」
 俄かに信じ難いアナウンスではあったが、さっき降りた男性が涙ぐんでいた理由がわかった気がした。そして迷わず、私は母が亡くなる前の年を入力した。
 車は動き出した。窓の外の景色が動く。少し古ぼけた街の桜並木の中に、私は母の姿を探した。

以上D子担当


いかがでしょうか。
まったくの素人がその場で初めて前の人の文章を読んで書いたにしては、一番うまいことまとまったストーリーになった気がします。
他3作品も、ほっこり系にホラーに自然派民話系にと、驚きの展開を見せてゾッとしたり笑ったりと、それなりに面白い作品になりました。

真剣に考えながらも、時々、「あー、もうどうしよう!」とか「ごめんね、ごめんね!」(おそらく次の人へ放り投げる時)とか「ちょっとコレはどうしろってこと?」(おそらく前の人から放り投げられた時)とか、ブツブツと呟きながらそれでも筆を進め続けた4人のおばさん達。

4つの物語が完成した後、順番に1作品ずつ朗読されるのですが、それがまたとても楽しいのです。
自分が生み出した「起」の物語が、どんな作品に仕上がっているのかも楽しみですし、「承」「転」を担当したお話は、他の人によってどんな結末を迎えたのかワクワクするし、そして自分が担当した「結」が他の3人にどう受け止められるのか、それもまたドキドキします。

皆さんだったら、どんなストーリーを繋げてどんな世界が広がるでしょうか。
いろんな物語になる可能性がありますよね。
お天気に左右されずに、紙とペンがあればできるお楽しみ、いかがでしょうか。

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