海で目覚める
朝、夢から目が覚めたとき、どうしようもなくやるせない気持ちになる。それはとても静かな気持ち。早朝の海辺の、湿った砂浜で、ひとりきりで目覚めたみたい。朝から感傷的になりすぎる。とにかくやりきれない。なにかがたまらなく恋しい。さっきまで一心同体でいたはずの、誰かの気配を感じる。寂しい、悲しいというよりも、苦しい。どこへ帰っても、帰りきれないようなホームシック。深刻な懐郷病。
本当に恋しいのはどっちなんだろう? 夢の世界に何千年もいたみたい。果てしなく遠い未来から、今日に帰ってきたみたい。恋しいのは、目の前の、この現実なんだろうか。
それとも、夢の世界が恋しいのだろうか。あっちが本当の故郷で、わたしはまた、長い旅の途中で目覚めたの?
わたしの魂は朝、冷たい海で泳いでいた。昼は太陽のもとで草原をかけて、歌をうたい、あの人と詩を読みあい、疲れたら大きな木の下で眠った。夕暮れは涼しい風を服の中に吹き込ませ、夜はなつかしい夜空に少し泣いたり。
そんな毎日が、いつからおとぎ話になったんだろう?
わたしの魂は、今もそこにいるのに。なにをしていても、本当のわたしはそこにいるのに。
本当に恋しいのは、どっちなんだろう?
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