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ロンドン行きの長距離バス


その週、全国の鉄道ストライキと重なって電車が止まっていた。
空港の街まで電車なら1時間40分のはずだったのに、長距離バスだと4時間近くもかかる。

バスは始発で既に半分の席が埋まっている。車掌さんにチケットを見せたら、
「好きに座って」と言われた。

イギリスの道路はラウンドアバウトと言う交差点のため信号が少ない。
一方でラウンドアバウトは名前の通り丸い交差点なので、何度もぐるぐる回って車に酔いやすい。
酔いを避けるため眠りたくなってきたけど、出発してすぐ、隣の女性は携帯で電話をし始め、延々喋って切ったらまた別の人にかけている。
多分東ヨーロッパ言語なので何話しているかはわからない。


誰かの荷物が、何かの拍子に荷物棚から落っこち、前方の席の若い女の人がわざわざ立ち上がって痛路から拾って彼に渡す。

男の人が「親切にどうも」と言ったので、このお礼の「親切にfor your kindness」の部分が実際に使われているのを初めて聞いたなと思った。

肌の色の濃い女の人が「どういたしまして」と荷物の持ち主に笑顔で振り返った。


次のバス停でバスが停まっていた時、2列ほど前の彼女の列に行く。
「隣に座っていいですか」
女の人は今度も素敵な笑顔を見せた。

「どこ行くんですか」
「ロンドン。友達の家に預かった荷物を取りに。あなたは」
「Leeds。Leedsの空港から明日、ポーランドに飛ぶの。このバスロンドンまで行ってるのね!」
Leedsからロンドンまではさらに4時間位だと言う。


彼女も、私と同じで北部に引越したばかりで、仕事を探しているらしい。

彼女がまた北部に戻ったら会うことがあるだろうか。
そしたら友達になれるだろうか。
考えている間にもう、Leedsに到着している。

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