マガジンのカバー画像

マリリンと僕

35
小説『マリリンと僕』をまとめました。
運営しているクリエイター

2021年11月の記事一覧

マリリンと僕 6 ~その桜は秋に咲く~

マリリンと僕 6 ~その桜は秋に咲く~

「俺、役者辞めようかと思ってるんだ」
「え、なんで?」
「もう28歳じゃん?これ以上ズルズルやってると、後戻り出来なくなる気がしてさ。生活もずっとギリギリだし、普通に仕事して、普通の暮らしして、普通に結婚してる同級生見てたら、ちょっと羨ましくなったんだよね。今まではそんなこと思わなかったから、急に冷静になった自分にちょっと引いちゃってさ」

劇団の仲間であり先輩であり、専門学校の同級生であり、そし

もっとみる
マリリンに色が付いた日

マリリンに色が付いた日

今日はここ最近で一番嬉しい出来事がありました。
noterのアリエルさんが、私の『きっかけはロリータ少女から』シリーズの登場人物である主人公(名無し)とマリリンをイラストにして下さいました!

彼らに色彩を与えて下さって、記事のオススメまでして下さって、もう感謝しかありません。

アリエルさんの記事も、通勤中にニヤニヤさせられてしまう愉快な物がたくさんあって、なんと言っても直筆のイラストが素敵です

もっとみる
マリリンと僕5 ~マリリンの憂鬱~

マリリンと僕5 ~マリリンの憂鬱~

「本当ですか!?」
「ウソだよ」
「え…、ウソなんですか…」
「いや、ほんとほんと。本当だよ。」

劇団の主宰である小山さんに呼び出され、僕らは中野の片隅にある、古びれた喫茶店にいる。築40年越えの木造建築、店内はランプの灯りのみで薄暗く、天井は低いし床は歪んでいて、メニューもブレンドコーヒーのみ。かろうじてホットかアイスは選べるけれど、作っている主人の顔は見えないし、声も出さない。コーヒー以外の

もっとみる
マリリンと僕4 ~マリリンに逢いたくて~

マリリンと僕4 ~マリリンに逢いたくて~

7月も終わりが近づき、いよいよ長梅雨が明けると、雲一つない晴天からは、悪意すら感じられるような、強烈な陽射しが大地を照り付ける。
初夏の趣きを感じる間もなく気温は35℃を超え、テレビでは気象予報士が「各地で猛暑日になります。日中の外出は控えて下さい」と伝えている。

近所の公園に行くと、気象予報士の言葉も虚しく、たくさんの子ども達が、きゃーきゃーとつんざくような奇声を発しながら、水風船や水鉄砲を手

もっとみる