名古屋でいちばんゆるい読書会 第98回 梶井基次郎『檸檬』

本日開催した読書会の模様を書きます。

企画趣旨

元々は谷崎潤一郎『細雪』読書会の予定だった。
しかし、来週の『カラマーゾフの兄弟』読書会の準備の為、
『細雪』が読み切れないと思い、自分の積ん読本の中から
短篇で手に取りやすい作品ということで、『檸檬』に変更した。

参加者の顔ぶれ

今日の参加者は3人。
ひとりは『春琴抄』読書会にご参加いただいた、読書会主宰の方。
ひとりは初参加。『春琴抄』読書会直後に私の読書会を知って、
興味を持っていただいた。『細雪』を読み進めていたようですが、
課題本を変更しても参加表明していただいた。
もうひとりも初参加。今月から大学院で近代文学を専攻されている方。

関連して言及された作家及び作品

川端康成『片腕』
三島由紀夫『仮面の告白』
田山花袋『蒲団』

話題に出た作家

谷崎潤一郎
中原中也
大江健三郎

読書会の感想

わずか数ページの短編でありながら、読者によっていろんな読み方、
視点がある事が面白かった。
随所にハッとさせられる表現があり、作者の心象風景であろう描写
があり、私自身が特に思ったのは周りの物質の視点を移動させながら
描写していく技術に感心した。
心理描写が巧みであると言われていると聞いてたが、読みにくい文体でないのですいすいと読めてしまう。
純文学を普段読み慣れていない人でも、梶井基次郎の『檸檬』は有名で、
手に取りやすく(青空文庫で無料で読める)、読みやすく、お気軽に文学を味わう体験ができるというのも永く読み継がれる理由の一つだと参加者の意見を聞いて思った。
そうは言っても、文学好きからすると、良い作品である事は前提として、
「ナナメ上の表現がない」という感想が参加者から出た。
つまり多くの人から共感を持って支持されるのは、大多数の人の思考の枠、
あるいは価値観の枠からはみ出ない表現であるから。
その枠からはみ出ないから、多くの支持を集めて名作として永らく読まれるのではないか。
我々が持っている価値観をはみ出る作品として参加者が挙げられたのは、
川端康成『片腕』、三島由紀夫『仮面の告白』。
その意見を聞いて本作が多くの人に共感を持って受け入れられるのは何故なのか、名作として今でも読み継がれるのかが腑に落ちた。

まとめ

課題本型の読書会全般に言える事だが、梶井基次郎の作品を全て読んでいなくても、周辺作家及び作品を知っていれば話題に事欠かない。
上記に挙げた作家以外にも、漱石、鴎外、芥川、泉鏡花、等々近代文学の作家の名前が挙がった。
この点は現代作家とは違う所だと思った。

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