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【芥川賞】奥泉光 「石の来歴」【読書めも】

 大学の授業で、教授から出される課題を1週間で読み、その感想を次週に言い合うという授業がある。

 その授業で扱われた作品の1つが、奥泉光「石の来歴」だ。


 太平洋戦争に行っていた主人公は、戦地で死にかけのとある男にこんなことを言われる。
「君が河原で拾う石ころは、どんなによそよそしく疎遠にみえようとも、君とは無縁ではありえない。」
 岩は石となり、石は砂となり、砂はまたマグマとなり、マグマはまた岩となる。そういう歴史が石にはある、という壮大な話を、男は主人公に語った。

 その話を聞いて戦地から帰った主人公は石の研究にのめり込む。
 初めは初心者で、本を片っ端から読みながらの研究だったが、次第にその道専門の研究者とも肩を並べられるくらいの知識や技術を持つようになる。

 そして主人公には妻ができ、子供が二人生まれる。兄のほうは聡明で、石の名前を教えて欲しいとせがんだり、一緒に標本採取に出かけたりするようになった。
 しかし、子供はある日、ひとりで標本採取に出かけた先で殺されてしまう。殺したのは誰なのかわからず、母親は「石の採取を教えた父親のせいだ」と主人公を責め、アルコール中毒になり、家庭は崩壊してしまう。

 時は過ぎ、主人公が独り身になった頃、息子を殺した人間のヒントが現れてくる。


 その壮絶なストーリーに、私は食い入るように読み進めてしまった。最後には衝撃的なラストが待ち受ける。

 この作品は非常によくできている。教授も仰っていたが、「このような作品を書けと言われても書けない。芥川賞受賞作の中でもずば抜けている。」

 初めて読む人は必ずストーリーに吸い込まれるように、ぐんぐんと読み進めてしまうだろう。

 しかし最後は人によって解釈が分かれる終わり方となっている。

 この作品を読んだ人と、結末について是非ディスカッションしたいとさえ思う。 いつでもTwitterでリプライ・DMお待ちしております。



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