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【書評】あの日の、あの時の自分がよみがえる 『マンガでわかる LGBTQ+』



コロナ禍の学生生活も二年目となった。
湧き出てくる活字読みたい欲をTwitterやネット記事でとりあえず満たす毎日を送っているが、そんな中、本当に久しぶりに一冊の本を通読した。

『マンガでわかる LGBTQ+』 著:パレットーク 講談社 

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パレットークとはSNSを通じてLGBTQ+とフェミニズムについて発信しているメディアである。マンガの中の登場人物が様々なセクシュアリティやフェミニズムに関する問題に向き合っていく様子を読者が追体験することで、自然に社会の問題点自らの中に眠る課題について考えることができる。

SNSではマンガのみの投稿が主だが、この本ではテーマ別に5のチャプターに分かれておりいつものマンガと編集長による解説、Q&A、ワークブックなんかもついている!(ワークブック大事!素敵!)

私は、女性として生き、女性と恋愛をする、いわゆるLGBTQ+当事者である。セクシュアリティを自覚する前後から大小様々な悩みももってきた。
社会の中で自分を偽ることへのストレス
親の期待に応えられないことへの申し訳なさ
どうしても同性へ向いてしまう恋愛感情のコントロール方法(もちろんコントロールできなかった)
将来への不安 などなど

相談できる友人はいた。それでも、当事者ではない友人との会話はどうしてもすれちがってしまう。完全に共感された経験はなかった。だからだろうか、自分がよく発する言葉のなかに以下のようなものがある。
「この程度の悩み事なんてみんなもってる。」
「私の悩みなんて、たいしたことない。もっとつらい人がいる。」

そんな中、この本を読んだ。そして、驚いた。
私がいたのだ。
高校生の私も、中学生の私も、今の大学生の私も。
この本の中の登場人物として存在したのだ。

LGBTQ+当事者は、その性質と公表しづらい社会の状況から、自分の悩みを完全に共感されるという経験を持つ人は少ないと思う。パレットークのマンガの登場人物の心情やエピソードに共感する経験というのは、私の心の中に大きな安心感を生み出した。

そして、マンガの中の登場人物とともに、問題について考えていく中で、私の悩みは社会の構造やシステムの変革によって改善されうるものだということを確信した。(今までは頭ではわかっていてもどこか仕方がないとあきらめている部分があった。)
自分の経験や悩みは間違っていなかった、持っていていいものなんだ、そしてそれを発信しても変に思われず聞いてくれる環境がこの世にはあるのだと感じることができる。
大切で貴重な場所である。パレットークが理念としてかかげているように、この本はまさに私のセーフスペースとなった。

このセーフスペースに、もっと早く出会いたかった!全国の公立小中の学級文庫に加える運動があれば必ず参加する。微力の応援しかできないけれど。
自らのセクシュアリティに悩む前に、この本に出会えるかもしれない下の世代の当事者たちに激しく嫉妬する、そして心からの祝福する。

本の中でも述べられているが、パレットークの成立の背景上、当事者周囲にいる当事者以外の人たちへのメッセージも多くみられる。
知識をつめこむのではなく、この本の中で登場人物たちと一緒に自分で考えていく、その過程を一度おこなうだけで、周りの当事者は少し息をしやすくなる。
なんと素敵な役割を果たしていることか。
読んでよかった。明日からも頑張ろう。


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