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弱いから強くなれると教えてくれた。

強いと弱い。
強くなくていいよと誰かに言って欲しくて
ずっと生きてきたようなところがあった。

弱いと強いなら、わたしの担当は断然「弱い」にあると
思っていた。

 だから、『強さの磨き方』という格闘技ドクターで
いらっしゃる二重作拓也先生のご著書のタイトルに
出会った時に、すこし遠くから眺めていた。

じぶんにとって対岸にある書だと思っていた。

そもそもわたしは「弱い」のだから「強さ」にたどり
つくまで百万年かかってもむりだって。

 でもそれなりに生きてきて薄々感じていること。

それは人はすごく敬遠するものにはきっとそのなかには
「憧れ」があるはずなのだ。

大嫌いはときに大好きの仲間だと思っている。

対岸においやってしまいたくなるものへの羨望。

それはわたしの人生の逆テーマでもある「強さ」だったの
かもしれないと気が付いた。

 メンタルの弱さを自覚していたわたしは、いつしか本書を
手にしていた。

その近づき方はおそるおそるだったかもしれない。

 『強さの磨き方』。

 病弱 で 運動音痴だった二重作先生が強くなりたいと
カラテを始めた経験から綴られている本書に
親近感を覚えた。

そこには答えがあるのではなく、「問いの共有」が
あったことにも。

答じゃなくて問い。
 
この情報化社会と言われて久しい現代のわけのわからない
波に巻き込まれそうになるじぶんを立て直すためには

「誰かの答えに自分をあわせなくてもいいと」いう
二重作先生が仰るやり方がわたしにあっている気がした、
とても。

 そして「強さ」カモンな気持ちにまだなれないわたしを
引っ張ってくれた言葉があった。

 「 強 さへの モチベーション は 弱 さから 生まれる から です」。

『強さの磨き方』二重作拓也著
「弱さを眺める」p55


じぶんの「弱さ」を眺めることの大切さが説かれていた。
こよなく「弱さ」を愛しているわたしは惹かれていた。

そこには弱さから出発してそこに立ち止まらなかった人々が
紹介されていた。

 「わたしは知っている」とか「もう強い」とかいう人はそこで
行き止まりなのだよと。

それはやっぱりそうなんだなって答合わせを
するように読む。

 そこには二重作先生がカラテの選手として経験された試合
結果やプロセスのパターンから、

いかに「負けを想像」しながら想定外に対して準備することの
大切さも記されていた。

 弱さから出発すること。

何度も言うけど弱さに馴染んでいるわたしはそれなら
できそうな気がした。

 ほら、そうやって少しずつ強さに惹かれているん
じゃないかわたし。

 そうこうしていたら「逃げるの肯定」という章に出会う。

うれしい。

いろいろなことから「逃げて」きたわたしはそこに
それでかまへんといってもらったみたいで、いそいそと
近づいていた。

 かつて逃げてきたことを思い出す。

 たとえば、小学校の時のドッチボール。

ほんとうにこずるかったので、あたっても痛くない
ところ手の甲とかにわざとボールに触れにいって、
外野にでる。

いちどみずから負けに行く。

そしてもう当てられることのない外野から内側で逃げ回る
クラスメイトたちを狙ってボールを投げるのが好きだった。

逃げてるけど戦っているけど。

でもそのやり方は逃げだと思っていた。
ちょっと後ろめたくもあった。

 でも逃げるについて書かれた章では。
逃げることへの思いに光が差した。
ラグビーが紹介されていた。

ラグビー の トライ は「 逃げ切る」 の 芸術的 な 極み で あると。

『強さの磨き方』二重作拓也著
「弱さを眺める」p59

生きるために時には逃げることの選択肢もおおいにあることを
教えてもらう。

トライは守るために逃げること。
あの楕円のボールは守りたいたいせつなもの。
ラガーマンはたいせつなものを抱えて守るために
逃げ切るのだと。

逃げるは負けじゃない。
まっすぐ逃げること戦略的に逃げた時、じゃあ逆にどこは
逃げて行けないのかも知ることになる。

 もうノックダウンです。

 そしてわたしに近しい項目に、「書くことも運動である」と
説かれていて大いに前のめりになっていた。

身体を動かして前に進むこと。わたしは身体のことはなぜか
信じている。

おかしないい方だけど、じぶんの心以上に信じている。
身体で感じたことを信じていたい。

 そして「書くはいったん体の外にだすという行為であると」。

 そうすることでたとえば不安になっているのならそこから
切り離せるのだと。

だからわたしはあんなにくるったように書いていたのだなと。

不安から逃げるために自分のテリトリーを守るために
書いていたのかと。

 読み進めながらこの書は、「強さ」というわたしが
かつてイメージしていた世界とはまるで違う景色をみている
気持ちになった。

 ひとつの試合やコンテストに勝つとか負けるというちいさな
世界じゃなくて。

 「人間として」どう生きたいのかと問われてる気がした。

最後のロールモデルの章ではまさに、彼らがどう「生きた」かの
エピソードが散りばめられている。

 「生きる」「生きていく」のはほかならない「わたし」なのだ、
誰かがわたしの人生を生きてくれるのではない。

 戦うのが嫌いだったのは、戦うことから自由でいたかったから。
負けたくなかったのも負けることから自由でいたかったから。

でも勝ちと負けのアングルを変えると、勝ちは負けに反転する
ことも本書で知った。

 心地よかったし、どこかで小気味よかった。

 わたしが本書のページを開き始めたころとおしまいのページを
めくる頃になにかが変わっていた。

 弱いじぶんを愛しながらも「強さ」に憧れていたじぶんを
発見した。

 本書を読んでいる時いつもここに登場するたくさんのひとたちの
存在を感じながらも、親しい身近な誰かのことも、思い描いていた。

弱さから出発したわたしはだれかと一緒に「つよく」なって
みたいんだなってそんなことを思っていた。

最後に著者の二重作先生が愛してやまないプリンスの曲の
タイトル

The Question Of U

をじっと眺めていた。

日本語に訳すなら「キミという問い」らしい。

わたしはキミのなかにじぶんの名前を入れながら
キミの名前も重ねていた。


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二重作拓也先生の新著『パフォーマンス医学』が発売されます!
読み終えた時の心の変化をとても楽しみにしております。

 

 

 

 

 

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