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『一匹のモンタージュ』リクリエーション|メンバーインタビュー(中條玲)

2023年10月13日(金)〜23日(月)の期間、こまばアゴラ劇場にて上演される『一匹のモンタージュ』リクリエーション。
クリエーションメンバーへのインタビュー記事を連載していきます。
2022年5月に初演された『一匹のモンタージュ』からどのような変化が訪れているのかそれぞれが「作」としてどのように『一匹のモンタージュ』をつくっているのか。その片鱗をインタビューを通して紐解きます。

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 http://busstrio.com/one-montage


中條:中條玲です。24歳です。長崎生まれで、舞台に出たり舞台の周りに色々関わってて、植物のこととかご飯のこととか取り組みをやったりしています。

今野:バストリオに関わって何作目だっけこれ。

中條:5作目?6作目か。

今野:そのぐらい今関わってきてますけど、どうですか、バストリオに関わってみて。1回だけ関わるのとはまた違うと思うんだけど。

中條:そうですね。それこそこの前まで作る感覚みたいなのがうまくいってない時もあったんですけど、 そういうのも込みでというか、こうしたらこうなる、こういうチャレンジをしたらこういう風に見えるみたいなのが、「パターン」というか、自分なりの経験として出てきて、それを上手くしたりとか、ちゃんと失敗したりとか、やってる時の冷静に見れる目が徐々にできてきてて。本当に掴み取りたいところに徐々に近づいていってる感じはありますね。
なんというか、「感覚」みたいに言ってるいわゆる言葉で説明しきれない部分とか状態とか、その人がやる、みたいな、有機的なところをそのままやりたいっていうのが僕は舞台に関わる上で大きくあって、そこにバストリオのやり方で、徐々に近づいていってる感じがあって。
しかも今回は、1回やった作品をもう1回やるので。新しく作る部分もありますけど、足場がしっかりしてきてるからちょっと遠くを狙えるみたいなことは起きてる気がしますね、今。

今野「本人であること」みたいなのが、バストリオは結構強いと思うから、その意味みたいなものがよりわかってきてるんだろうね。本人でなんでやんのか、みたいな部分と、本人でやったとしても本人じゃなく見えちゃったり、みたいなのも含まれて起きるじゃん。本人でなんでやるのか、の時に見る側が勝手に根拠作りたがるからさ。そこは多分やらないとわかんない部分で。

中條:うん、なんか、どんどん愛おしくなってくる感じはありますね。一緒にやってる人たちのこととか、自分のことも。そんなことってあんまないというか、そんなに大事にしようとするのって、結構大変だし怖いっていうか…

今野:ナルシシズムにもなりかねないからね。下手したらね。

中條:先週とか、僕は別の現場でバタバタしてて、クリエーションに参加しながら別のことやりながらって感じだったんですけど、その時も、それがあることが大事だったというか。単純に忙しいだけだったら、結構な大変な感じだったけど、作れるから、 作って、ちゃんと落ち着いてというか、そういう、ちょっと恥ずかしいかもだし、怖いかもだし、普段じゃあんま起きないような、「大事にする」とか、うん、ちゃんと愛するみたいなことが、稽古の区切られた6時間とかの中でもしっかり考えると大丈夫でいられるようになる、っていうのは嬉しいですよね。
そこはやっぱ生活のことと紐づいてるなあって思う。何回かやってきてはっきり自覚するようになりました。

今野:うん、確かに。

中條:なんか最近、やり過ごす、みたいな、やり過ごしてるなって思う瞬間がいっぱいあって。そこにもう1回目を向けることができるっていうのは、いいっすよね。やり過ごそうとするって、何も起きてないような、暇とか退屈とか耐えてるみたいな、そういう、盛り上がってない時間のことを結構楽しめるようになってきたっていうのは大きいですね。

今野:そこすら表現するときに繋がると思うと、結構幅広いもんね。では、『一匹のモンタージュ』という作品は1回やってるけど、その作品についてのイメージは?

中條:僕がバストリオで1番最初に関わったのが『一匹のモンタージュ』で、いろんな人がいるなみたいな感じがそのままある気がしてて、なんていったらいいんだろうな、個が強い人たちがやってるから、でも、それが嫌な感じでぶつかったりとか、 変にまとまったりみたいなことじゃなくて、それぞれがバラバラだけど一緒にいるみたいなことの要素が強いイメージがありますね。
初演の時に誰かが言ってたんですけど、みんながそれぞれの地図を書いてて、 みんな視点の『一匹のモンタージュ』があるみたいな。それぞれ視点、見えてないところとか見えてる角度が全部それぞれ違う。『一匹のモンタージュ』をやってる人たちの認識もバラバラだよね。みたいなことを言ってた人がいて。本藤さんだったかな。誰かが言ってて。
その感じは、今、バストリオの他の作品をいくつかやって、もう1回思うと、その要素が強いなってなんとなく思ってて。知らない場面ってあるんですよね。

今野:あー、その作品の中に?

中條:自分が出てても見えてないとこで起きてることって多分いっぱいあって。その感じが、舞台上でやってる時に心地良いなって思ってた気がして。今回のクリエーション期間が始まった時にそのことを思い出しました。

今野:なるほど。

中條:あとは、僕は「舞台」と「ご飯つくる」みたいなことは自分の中で繋がってるって思ってたけど、 それをちゃんと舞台上でやってみようみたいなことを考えた作品だったんで、そのことがおっきいですね。
なんだろうな…、人との関わり方の、なんかこう、ギフトみたいな感じというか…、そういうのが起きちゃう。プレゼントとして、わーってやることじゃない、自分の中でぐるぐる回ってることが、ぽんって人にギフトとして手渡されるみたいなことが起きて欲しいと思ってるし、起きるっていう気がしますね。なんか、そんな感じです『一匹』のイメージ。

今野:今、前回の『一匹のモンタージュ』と違って、リクリエーションってなってるんだけど、ちょっとプラスして、自分の中で前回と違う意識でやろうとしてる部分ってある?

中條:そうっすね、いくつかあって。ご飯のことだと、1個前の作品の『ちちち』では、自分が食べることみたいなことを考えたので、それを経過した後に、もう一度人が食べるみたいなことを考えることは全然違うことだなと思ってて、そのことは今も、どうしようというか、どうやることができるかなって、ずっと思ってるのが1つ大きくあって、 あともう1個は、前回の時はまだ自分の中で意識してなかったんですけど、植物とのことが最近結構大きくなってきて。植物預かる量が増えたし、自分も預けたりしたし。

今野:実際にここにたどり着くまでに、1年間でそういう発表が増えてたしね。

中條:それを選択することが自分の中で自然だったし、 今やりたいことの1つなんだなってはっきり思ってて。それが結構クリエーションに入ってきてて。 意識してやってるところですね。植物とか、もうちょっと要素が分解されて土とか葉っぱとか木とか、そういうところまで行けると。例えば、劇場に単純に植物を持ち込むみたいなことじゃない何かとしてやりたいなっていうのが大きく違う気がしますね。

今野:でかいよね。トレイルでも植物のことを1回宣言して去る発表あったじゃん。あれとかも割と色濃く出そうとしてるよね、その部分は。実際に中條くんにとって料理を作るってことと、植物を預かるみたいな行為が、ちゃんと並んだんだな、みたいな感じはあるね。

中條:そうですね、あと、初演の『一匹』の時と『ちちち』の時も、劇場に入ってから「土が欲しい」ってなって、土を持ってくるみたいなシーンがあって。ま、なんとなくその感覚わかるし、 土があった方がいいなって思ったんだけど、そのことが単純に劇場に入ってからの隙間に入る行為とかじゃなくて、クリエーションの時間とちゃんと引き継いで、もうちょっと長いスパンで考えて、土とか植物を持ち込みたいって思ったっていうのもありますね。

今野:なるほど。じゃあ、今回アゴラでやるんですけど。今、中條くんの職場だから。来てくれる人へなにかメッセージありますか?

中條:毎回毎回、見てほしいなって。自分が出る舞台って、いろんな人に見てほしいなって思うんですけど。今回それが、すごいひとしおというか…本当に見てほしいって思ってて。 わかんなくてもいいから見に来てほしいって思ってるところもあるし。あー、なんか、結構、母親のことを考えてて。母親たまに見に来てくれるんですけど、もうちょっとわかりやすいやつに出てよってよく言われてるんですけど、でも、わかんなくても今回の作品は、ちょっとでも何か持って帰れるって思うし、単純に見に来てもらえたら始まることが何かあるかもな、みたいな期待というか、 希望みたいなのがあって。何かを伝えたり手渡したりみたいなことじゃないけど、たまたますれ違う場所が劇場で。そういうこととして、やりたいって思ってます。そのためには来てもらわなきゃいけないって強く思ってて。あと、劇場でやるってことで、美術も立て込むみたいな感じになってるし。広く使えたり、、

今野:そうだね。あと、隙間も作れるね。劇場をいっぱいいっぱい使うかわかんないけど、余りが出るっていうのは、結構楽しい。

中條:そうですね。単純に上演の様子がこれまでとちょっと違う形になるだろうっていうのが、普通に楽しみだし、見に来てほしいポイントだし、あと、さっき言ったみたいな、そういうことを起こしたいタイミングだなと思ってるし。
まあ、3300円で1時間って考えたら、ちょっと高いような気もするかもなんですけど、そのぐらいのことは起こるだろうなと思ってるし、起こそうと思ってるから。
手を振るみたいな、見えるところでちゃんと手振って、できたら握手して、みたいなことな気がするんですけど…、なんか、その、見に来てくださいのニュアンスはそんな感じなんすよね。

中條玲(ちゅうじょうれい)
長崎生まれ。主に舞台芸術に関わっています。つながる形で、日記やテキストの執筆といくつかの取り組みを行っています。「植物ホテル」では、植物を預かり日々の世話をすることで、存在(不在)にながれる時間をやり過ごすことについて考えています。「転達」という名前でごはんをつくり振る舞うことを通して、味覚や嗅覚そのものを直接的な操作の対象として扱い、接触の捉え直しを行っています。

(編集:坂藤加菜)


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