見出し画像

【対談】コンサルの新時代 サラサラ経営のススメ/横山直宏×舩井勝仁

この記事では、月刊『ザ・フナイ』vol.205(2024年11月号)に掲載されている、横山直宏氏と舩井勝仁氏による巻頭対談の一部を抜粋して公開いたします。



左から、横山直宏氏、舩井主幹

横山 直宏 (よこやま なおひろ)
Catch the Webグループ創設者。
20代のうちに日本を代表するwebコンサルティング会社「Catch the Web」を創設し、15年間で100億円の売上を達成。また国内外で10社の経営に成功し、母校である千葉大学にて「起業論」非常勤講師も務めた。コーチ・コンサルタント・士業・講師・治療院・デザイナー・スピリチュアル・音楽家・俳優など幅広いジャンルにてインターネット集客を成功させ、影響力を持つクライアントを次々と輩出。経営歴19年目となる現在、自身の集大成である「YCS」というコンサルティング&コミュニティサービスを運営。「インターネット集客を軸に、楽しみながら売上を伸ばす」というコンセプトのもと、日々、インターネットを活用した集客コンサルティングに尽力している。

舩井 勝仁 (ふない かつひと)
本誌主幹。1964年、大阪府生まれ。1988年、㈱船井総合研究所入社。1998年、同社常務取締役。2008年、㈱船井本社の社長に就任、「ミロクの世」を創る勉強会「にんげんクラブ」を中心に活動を続ける。2014年1月19日、父、舩井幸雄が永眠。父の志を継いで本誌の主幹となる。著書多数。

コンサルの新時代
サラサラ経営のススメ


舩井 はじめまして。今日はよろしくお願いします。

横山 お会いできるのを楽しみにしていました。よろしくお願いします。

舩井 横山さんは、いろいろなビジネスを手掛けていますが、どのようなことをされているか教えていただけますか。

横山 もともとはインターネットを使ったマーケティングをやっていて、そこからどんどん広がっていきました。昨年は、沖縄の古宇利島こうりじまという所に、研修もできる宿泊施設「Totonou Space」を作りました。クラウドファンディングもやりながら資金を集めて、多くの方に協力いただいて完成しました。おかげさまで予約もいっぱいで、多くの方に利用していただいています。それから、最近は農業に目覚めまして、農地を買って農業を始めたり、また有機農法のお米を安定的に供給できるような仕組み作りを始めたりしています。まだまだ農業は開拓の余地のあるジャンルだと思うので、これからも多角的に取り組んでいこうと考えています。

舩井 古宇利島は、10年以上前に行ったことがあります。当時はまだまだ何もない所でした。

横山 今はもうずいぶん開発されてきています。いい所ですから、ぜひ、いらしてください。「Totonou Space」にはサウナもありますし、きっとリラックスしていただけると思います。

舩井 ぜひうかがいます。

横山 僕は起業したときから舩井幸雄さんの本をたくさん読ませていただきました。特に印象深いのは、『即時業績向上法』(ビジネス社)です。売り上げがすぐに上がる方法について書かれているのかと思って読み始めたら、全然そうじゃない。ツキが重要だとか、素直で勉強好きな人がビジネスで成功する、運を上げていくことが重要だと書かれていました。 当時は運のことはまったく考えていなかったので、すごく衝撃を受けました。

経営者が神社に行かれたりするのは知っていたので、やはりビジネスをやるには運を良くすることが大切で、そうした見えないものが重要なのだなと思いました。当時からそういったスピリチュアルな発言をしておられたことに驚き、また一方で、書籍の後半では、非常に論理的に数字の分析などもやっておられるので、両立しているのはすごいなと思いました。

舩井 父が使っていたマーケティング戦略は、ほぼランチェスター(※1)です。当時のビジネスは、現在よりもはるかに単純でした。わかりやすいと言えばわかりやすいのですが、単純だったからこそ、逆に難しいところもあったのではないかと思います。占い師であったり、信仰している宗教であったり、社長さんたちはそれぞれに信じている神さまともいえる存在がいらっしゃいましたから。

※1 ランチェスター:ランチェスター戦略。強者と弱者それぞれがどのように戦えば戦局を有利に進められるかをフレデリック・ランチェスターが定義した軍事的法則。日本では軍事より経営論として用いられることが多い。

横山 確かに、そうかもしれません。

舩井 コンサルタントの言うことと神さまの言うこと、どちらを聞くのかと言ったら神さまなのです。だから、神さまを説得できなかったらコンサルティングができない。それで神さまのような目に見えない世界の研究を始めたというのが、父の大義名分です。
父はエドガー・ケイシー(※2)にアクセスし、人々からの相談や質問に答えていた。「エドガー・ケイシー療法」とされる独自の病気治療がある。)が大好きでした。父の目に見えない世界の話の背景にあるのは9割がエドガー・ケイシーで、あと1割くらいがスウェーデンボルグ(※3)です。エドガー・ケイシーの研究をすると、父の言っていたことのバックボーンがわかってきます。

※2 エドガー・ケイシー:1877-1945。預言者、心霊診断家として知られる。催眠状態で潜在意識(アカシックレコード)にアクセスし、人々からの相談や質問に答えていた。「エドガー・ケイシー療法」とされる独自の病気治療法がある。

※3 スウェーデンボルグ:1688-1772。スウェーデン王国出身の科学者・神学者・思想家。生きながら霊界を見てきたという霊的体験に基づく著述で知られる。スヴェーデンボリとも。

横山 見えない世界を経営に落とし込むことを始められたのですね。

舩井 流通小売店のコンサルタントをしていると、例えばお客様に主に歩いてもらう動線を作ろうとするとき、普通なら絶対作らないような所に「神さまが入り口を作れと言っている」というような話になったりすることもあります。でも、それでは困るし、実績も上がらない。だから、神さまを説得できなければコンサルタントができない、というのは本当でした。

それで父は主にエドガー・ケイシーを研究して独自のコンサルティングをやるようになったら、コンサルティング結果が良くなってきた。さらに、売れている商品は「運がいい商品」だから、そういったものを売っていこうという考え方でした。横山さんはインターネットで集客をされていますが、扱う媒体は違えども、そういったことは考えられますか?

横山 確かに、今売れている“運の良い商品を売り、売り上げも伸ばそう”と考えるようにしています。それはお客さんが欲しいというものを売るということだからです。

舩井 インターネットを使ったマーケティング戦略には、さまざまなノウハウがあって、それぞれにちゃんと裏付けがあるように感じます。そうしたノウハウの中には、共通する法則みたいなものがあるのではないでしょうか。父はそれこそが「運」だと言っていました。「運を良くすればいいんや」と。

横山 当時の経営者たちは、「大事なのは運だ」と言われて、みなさん、「そうなんだ」と素直に聞きましたか。

舩井 厳しい環境で意思決定を絶えずしなければいけなかった経営者は、内面では神さまを信じている人が今よりもはるかに多かった時代ですからね。コンサルを受けているときや、セミナーでは、みなさんも真面目まじめに理屈を言っています。でも、コンサルが終わった後の飲み会になると、運の話や神さまの話ばかりになりました。そういう内容のほうがはるかに説得力があって、面白い話が聞けます。実際は、経営の世界は、理屈で割り切れるようなことは一つもないんです。なぜこれがうまくいくのか、なぜこれでうまくいかないのか、さっぱりわからないことだらけです。

経営や経営者には、強いネバネバした部分とそうでない部分、言ってみればサラサラした部分があると思います。父の時代は、ネバネバをどこでどう発揮するかが経営センスであり、それを教えるのがコンサルタントの役割といった面がありました。ただし、外に向けてそういう話をするのはタブーでした。まぁ、運やツキと言うぐらいは、まだ大目に見てもらえたと思うのですが、ちょっと言い過ぎたために父はマスコミからだいぶたたかれてしまいました。

横山 舩井幸雄さんは、運や本質にかかわることをきちんとすればうまくいくから、自然の法則に従っていればうまくいくというお話をされていますね。もっともだと思うのですが、時代的には叩かれてしまったのですね。

舩井 父としては、これからはネバネバではダメでサラサラの方に行かなければとわかっていたと思います。それを、いろいろと言い方を変えて伝えようとしたけれど、なかなかサラサラの方に持っていくことはできなかった。父の時代は、「これからはサラサラで行かないと通用しなくなる」なんて言っても、経営者は誰も理解しなかったのだと思います。

詐欺師の代名詞時代から、
憧れの職業へ


舩井 1980年代ぐらいまでは、コンサルタントという職業は、“怪しい商売”の代名詞みたいなものでした。それを世間でまっとうな商売として認められるようにしたのは、大前研一先生と父の功績が大きいと思います。

あるとき、父が新幹線のグリーン車に乗っていて、隣の人と意気投合して盛り上がったそうです。降りるときに名刺交換をしたら、相手はある大手銀行の常務さんだったそうです。その人は父の「経営コンサルタント」という名刺を見て、「座ったときに君の名刺をもらっていたら、僕は君と一言もしゃべらなかった。できれば車掌しゃしょうを呼んで、席を替えてくれと言っただろう」と言ったそうです。「どうしてそんな失礼なことを言うんですか」と聞いたら、「コンサルタントなんて、社会のクズだ」と言われたそうです。

横山 コンサルタントというのは、そんな扱いだったのですか。

舩井 銀行の人からすれば、「コンサルタント」と名刺に書くということは、「僕は詐欺師です」って言っているのと同じに見えたわけです。今で言うなら、ブローカーという感じでしょうか。

横山 ああ、悪いことをする人が多い、というイメージがあるかもしれません。

舩井 むしろ、ほぼ悪いことをする人しかいなかったようです(笑)。一方、当時の銀行の地位というのは、今とは比べものにならないぐらい高かった。ですから、大手銀行の常務さんからすると、そういうふうに見えたということでしょう。
父は負けず嫌いなので、「どうしたら僕のことを認めてくれますか」と聞いたら、「絶対にできないと思うけれど、上場したら認めてやる」と言われた。それで上場しようと決心したそうです。そして、実際に上場したことで、コンサルタントというビジネスを社会に認知させることができたのです。

横山 新幹線で偶然、そのような人と隣に座るというのも、すごい巡り合わせですね。

舩井 父の時代はそんなポジションだったのが、コンサルタントが人気職種になるまで変わってきた。横山さんのように優秀な人がコンサルタントを名乗られるような時代になりました。そう思うと感慨深いものがあります。

横山 僕はコンサルタントにあこがれて、この仕事に就きました。論理もすごく学びましたが、舩井幸雄さんの本を読ませていただいたら、とにかく運のいい人と付き合いなさいなどと書かれていて、最初は驚きました。「あれ? 7割とか8割が運なの?」と。でも、そちらが本当かもしれないと思い始めたのです。

舩井 コンサルタントの論理というのは、大半がアメリカの理屈をそのまま持ってきたものです。大企業向けにはそちらの方がうまく適応しますが、船井総研のクライアントは中小企業の経営者が多いので、分析やマトリックスなどを説明しても、「そんなものはどうでもいいから早く売り上げを上げてくれ」と言われる。そうすると、場合によっては「運をつければいいんです」と言った方が、説得力があります。それに加えて、父の時代には論理的にはランチェスターの法則で十分でした。

中小企業は、トップで決まります。父は99.9%はトップで決まるといつも言っていました。とにかく組織のトップで会社の命運が決まるから、トップの運を上げることが重要なのだと。さらには、父は晩年になって「俺はな、トップで99.9%決まるっていつも言ってるけど、あれうそや。お前だけに教えとくけど、ほんまはトップで100%決まるんや」とまで言っていました。

横山 組織を構成する人たちの運にはかかわらず、トップの在り方、トップの考え方が全部なのですか。

舩井 トップよりも(総合的に)優秀な人は、その組織にいませんよね。もしいたとしても、辞めて出ていくでしょう。だから、その組織で一番優秀な人がトップになり、そのトップがどんな心構えを持って、どんな組織を作り、どんな戦略を持ってやっていくかで全部決まる。すべてトップの力量一つ、というのが父の頃の考え方でした。

横山 僕のセミナーには、経営者や個人事業主の方、独立をしたいという方がたくさん来てくださいます。僕は毎回、いつも舩井幸雄さんがおっしゃっていた成功の三条件、「素直、プラス思考、勉強好き」が大切だという話をさせていただいています。聞いたことはとにかく素直に取り組むことと、トップがしっかり勉強することが重要という話と、学んだことを使えるようにプラス思考でやっていきましょう、と言っています。

舩井 父はいつも、「素直じゃない社長だったら、(仕事を)断れ。勉強をしない社長だったら断れ。プラス発想のできないやつだったら断れ」と言っていました。そうでないと、コンサルしたところでうまくいかないのです。勉強好きな経営者が良いというのは、わかりやすいのです——

お読みいただきありがとうございました!

\ 続きはぜひ『ザ・フナイ』で!! /

全国の書店・ネット書店にて発売中です

『ザ・フナイ』とは?


マス・メディアには載らない本当の情報

選りすぐりの豪華執筆陣による、新聞・テレビなどが報道しない世界の裏の動き・情報を、毎月お届けしています。経営コンサルタントであった故・舩井幸雄が、日本と世界の将来を見据えて2007年に創刊した雑誌。舩井幸雄が自らの多様な人脈の中から選りすぐった豪華執筆者からの情報をはじめとして、まだ広く知られていない諸分野の情報、先がけた情報を、偏った一方的な見解ではなく様々な視点を用いて、毎月お届けしています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?