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確定申告とは、そもそも何だ? / すがやみつる著『ネットで簡単&得する確定申告』試し読み

超スピードテク満載!数字が苦手でも大丈夫!!
税金のことがよくわからない人のために、マンガ家のすがやみつるさんが確定申告の基本から、時間と手間を省いて得する方法までをわかりやすく解説します。

はじめて確定申告をされる方、確定申告に悩むフリーランスで働くすべてのクリエイターのための一冊!

この記事では2024年2月21日発売のすがやみつる・著『ネットで簡単&得する確定申告』の「はじめに」と本文の一部分を公開いたします。

はじめに


こんにちは。この本の著者で〈すがやみつる〉と申します。職業はマンガ家ですが、小説も書けば、この本のような実用書や学術書も書くライターもしています。また、2013年から21年までの8年間は、京都精華大学マンガ学部で教授も務めていました。

マンガ家としてデビューしたのは1971年末のこと。21歳でした。この年から確定申告をはじめたので、確定申告歴は50年以上になります。マンガ家は究極の文系職業で、数字が苦手な人が多いため、確定申告も税理士さんのお世話になっている人が多いとか。しかし、私はマンガ家としては変わりダネで、確定申告は、ずっと自分の手でやってきました。

世の中にパソコンというものが出てくると、すぐに手を出し、プログラムを作りました。BASICという言語で生まれてはじめて作成したプログラムは、確定申告の提出用紙をシミュレーションしたものでした。1980年のことです。

確定申告は、1年間に稼いだ「収入」から「経費」を差し引いた「所得」を計算し、そこから各種の「控除」を差し引いて「課税所得」を求め、さらにその金額に応じた所得税率をかけて「所得税額」を計算し、納税することです。

パソコンの自作プログラムで計算する以前は、必要経費となる領収書やレシートを項目別に分類し、それぞれの合計額を電卓で計算していました。出版社から支払われた原稿料や印税(収入)から必要経費を差し引いて金額(所得)を求め、さらにここから医療費や生命保険料などにかかった金額を控除して課税所得を求め、そのうえで所得税額を計算するといった面倒な計算が必要でした。

そのため、毎年、2月から3月にかけての確定申告の季節になると、数日間は電卓片手に徹夜になったものです。しかし、パソコンを導入してからは、自作の確定申告プログラムに経費や控除の金額を入力するだけで、短時間で税額が計算できるようになりました。

当時はプリンターが高価で買えなかったため、画面に表示される数字を確定申告用紙にボールペンで書き写す方式でしたが、それでも電卓で計算していた頃に比べると、大幅な時間短縮になりました。

マンガ家の原稿料は、あらかじめ出版社が所得税と復興特別所得税を源泉徴収しているため、確定申告の計算次第では、払いすぎた税金を取りもどすことができます。これを税金の「還付」といいますが、売れていないマンガ家にとっては、ボーナスのように思える臨時収入でもありました。

そんな意味で確定申告は、払いすぎた税金を取りもどすための手段であり、同時に、1年間の仕事の決算をして前年の仕事と比較することで、自分の仕事ぶりが客観視できる便利な機会でもありました。さいわいにしてデビュー後10年ほどでヒット作が出たことから、節税のためにマンガの仕事は法人化し、税理士の先生(監修をお願いした神津信一先生)に、経理や決算の面倒を見てもらうようになりました。

その際、神津先生が個人の確定申告の面倒も見てくれるというので、過去の確定申告用紙と自作のパソコンプログラムをお見せしたところ、「しっかりできているので、こちらでやる必要はありません。今後も自分でやってください」とのことでした。

そのようなわけで、その後も、表計算ソフトのロータス1-2-3やエクセルが発売になるたびに、すぐに飛びついては確定申告のフォームを作り、所得や控除の計算に使っていました。愛用していた手帳は、税理士さんからいただいた「税務手帳」というもの。この手帳で「変動所得の平均課税」という制度を知ったおかげで、自作マンガが突然ヒットしたときも、大きな節税ができました。

こんなことをつづけていたら、いつのまにか「税金に詳しいマンガ家」と誤解され(?)、『こんにちは税務調査です』というマンガ版入門書を税務専門出版社から上梓したこともあります。多くのマンガ家が反対運動に加わったインボイスについても、わりと冷静でいられたのは、長年、自分で確定申告をしてきた経験があったからでしょう。

重要なのは、パソコンを経理と確定申告に使っていたことでした。パソコンがなければ、いまでも経理の帳簿付けや確定申告で、徹夜をつづけていたことでしょう。インボイスでも頭を混乱させていたかもしれません。e-Taxイータックスによる申告も、初年度からはじめました。理由は、もちろん「便利だから」。この一言に尽きます。

近年は、高齢になって家内と2人分の医療費負担が増え、医療費控除を受けるための医院や薬局への支払額一覧を作成するのが大変になってきていました。しかし、マイナンバーと健康保険証の番号を紐付けることで、e-Taxでの申告時に、医療費の支払額は自動で入力できます。これは年金も変わりません。

e-Taxの利用にはマイナンバーカード(マイナカード)の個人認証が必須になります。高齢で確定申告の必要がある人ほど、マイナカードは必需品といえるでしょう。

この本は、確定申告が未体験の方を第一の想定読者としています。それ以外に、紙の申告用紙を使って確定申告している方にも、節税と時間短縮をはかるうえで、IT化を進めるための参考情報を詰め込みました。参考にしていただければさいわいです。

確定申告とは、そもそも何だ?


この章では、高校・大学や専門学校を出てフリーランスの仕事に就いた人、サラリーマンから独立して個人事業主になった人など、はじめて確定申告をする必要に迫られた皆さんを対象に説明します。

「そんなこと知ってるよ。それよりも手っとり早く、確定申告でラクする方法や得する方法が知りたい」という方は、この章はスキップして、第2章からお読みください。なお、この本では、フリーランスの仕事に就く人を「フリーランサー」と呼びます。

学校では教えてくれない確定申告

私は2013年から21年まで、京都精華大学マンガ学部の教授職にありました。キャラクターデザインコースでコミックイラストを教え、大学院ではストーリーマンガの指導もしていました。

学ぶ学生の大半が目標としていたのは、フリーランスのイラストレーターやマンガ家です。そのため、どの学生も、クロッキーやデッサンのトレーニングにはげみ、面白いストーリー作りの方法を熱心に学んでいました。当然、授業内容も、絵やストーリーの上達を目的とした科目が中心になっています。

私は、大学教員になったとき、卒業後にプロになった若いマンガ家数人に、「学校でいちばん教えてほしかったことは?」と質問したことがあります。個別のインタビューだったのですが、ほぼ全員の回答が「確定申告のやり方」でした。

大学を卒業して、会社員になることもなく、マンガ家のアシスタントやアルバイトを経てデビューし、プロとして活躍しはじめている若いマンガ家たちでしたが、デビューして最も困ったことが「確定申告」だったと口をそろえたのです。

大学や専門学校でイラストレーターやマンガ家を志望する学生は、ほぼ全員がフリーランサーをめざしています。フリーランサーということは、自分でビジネスをする個人事業主になることです。個人事業主は、「自分のやった仕事の利益を計算し、税務署に届け出て、その所得額に応じた税金を払う」ことを義務付けられています。

この一連の手続きが「確定申告」で、厳密にいえば「所得税の確定申告」になります。「厳密にいえば」というのは、ほかに「消費税」や「贈与税」の確定申告もあるからです。

「所得税」とは?

「所得税」とは、1年間の「所得」に対してかかる税金です。この所得とは何でしょう? よく混同されるのが「収入」です。収入は1年に仕事で得られた金額で、ここから「経費」を差し引いた金額が「所得」になります。

さらに各種の「控除」が差し引かれた金額が「課税所得」となり、決められた「税率」に応じて「税額」が決定します。確定申告は、個人事業主が自分で税額の計算をしたうえで、申告・納付する一連の仕組みです。

収入-経費=所得
所得-控除=課税所得
課税所得×税率(*1)=税額

*1:所得税の税率は、課税所得額に応じて段階的に増加する「超過累進税率」が採用されている。

支払うのは所得税、連動して地方税も

確定申告で支払う税金は「所得税」です。これは国税庁を通じて国庫に納められます。この所得税額が決まると、連動して地方税の「住民税」や「社会保険料」「個人事業税」の支払額も決まります。

住民税には「都道府県民税」と「市町村民税」(東京都23区の場合は「区民税」)があります。また、社会保険料には「国民健康保険料(税)」や「国民年金保険料」がふくまれます。

個人事業税は、職種によって税率が異なります。ただし、マンガ家、イラストレーター、小説家、ライターなどの著述業者は、個人事業税の法定業種の対象外です。つまり個人事業税を支払う必要はありません。

一度企業に就職し、会社員となった人でも、フリーランサーとして独立すると、否応なしに個人事業主として確定申告をしなければなりません。プロとして仕事をしている人なら、誰もが1年に一度やらなければならないのが確定申告なのです。

それなのに、学校で確定申告の方法を学ぶ機会はまずありません。また、教えてくれる人もいません。大半の新卒フリーランサーは、仕事をはじめた翌年の2月になってから、確定申告というものをやらなくてはいけないという事実を知り、あわてて本を買ったり、ネットで調べたりして対応しているのが実状です。

この本は、そんな確定申告の未経験者を第一の読者対象にしています。また、すでに確定申告をしているものの、もっとラクに申告をしたい人にも役立つ情報も詰め込んでいます。知識ゼロでも大丈夫!安心して、ついてきてください。

\ 続きは本書で /
なぜ確定申告をするのか?
へ続く

目次


第1章
確定申告とは何?何のためにするの?

・確定申告とは、そもそも何だ?
・なぜ確定申告をするのか?
・サラリーマンでも確定申告をすることがある
・白色申告と青色申告、どちらが得?
・e-Taxとマイナカードの連携が便利
・会計ソフトを使おう
・インボイス制度について知りたい!
・課税事業者と免税事業者のちがいは、どんなところ?
・インボイスの「2割特例」について知りたい!

第2章
確定申告に必要なものは?

・マイナカードは必需品
・会計ソフトはクラウド型がオススメ

第3章
入出金はキャッシュレスで管理しよう!

・会計ソフトと銀行口座の連携が基本
・これからデビットカードを持つなら、ブランドデビットの一択

第4章
どこまで必要経費にできるの?

・個人事業主の必要経費とは?
・必要経費として認められるのは、どんなもの?
・経費として認められる代表的なもの
・飲食をともなう会合の費用は、経費にできる?
・消耗品費と雑費のちがいは何?
・減価償却費って何?
・従業員の給与や外注費は、どのように計上するか?
・報酬や料金に対する源泉所得税の計算方法
・家賃や資料費、飲食代…どこまで経費として認められる?
・ノマド・ワーカーのカフェ代は経費にできる?
・経費の計上には領収書・レシートが必要
・領収書がない支払いは、経費として認められない?

第5章
税金がもどってくるかも?
「控除」について知っておこう

・所得控除とは何か?
・医療費、社会保険料、生命保険料、地震保険料などの控除
・寄付に関係する控除
・家族、および家族構成に関する控除

第6章
e-Taxで確定申告は簡単にできる!

・e-Taxとは何か?
・e-Taxで確定申告する手順
・医療費控除の申請はどうする?
・所得税の納付方法

第7章
電子帳簿保存法への対応はこれでOK

・電子帳簿保存法に必要なもの
・そろえたいパソコンと周辺機器は?


お読みいただきありがとうございました!本書は全国の書店・ネット書店にて発売中です、ぜひお手に取っていただけたら嬉しいです。



すがやみつる 著
『ネットで簡単&得する確定申告』

すがやみつる
1950年、静岡県富士市生まれ。県立富士高校を卒業後、マンガ家をめざして上京。マンガ家アシスタント、編集プロ勤務などを経て71年から石森プロに所属し、同年、『仮面ライダー』(原作・石ノ森章太郎)でマンガ家デビュー。『仮面ライダー』シリーズや『人造人間キカイダー』『がんばれ!!ロボコン』など多数のコミカライズ作品を手がけた後、児童マンガ家として独立。79年より「コロコロコミック」に連載した『ゲームセンターあらし』がアニメになるなどしてヒット。

83年、同作と『こんにちはマイコン』の2作で小学館漫画賞を受賞。84年より大人向け学習マンガを多く手がけ、『一番わかりやすい株入門』(講談社)がベストセラーに。85年よりパソコン通信を開始し、ニフティサーブでフォーラム管理人に。87年、パソコン通信普及への貢献が認められ、第1回ネットワーカー大賞(アスキー主宰)を受賞。94年、『漆黒の独立航空隊』で娯楽小説作家として再デビュー。以後、60冊以上の小説を刊行。

2003年、仮想歴史レース小説『旭日のGP』で第1回日本モータースポーツ大賞(社団法人自動車工業会)を受賞。05年、早稲田大学人間科学部eスクールに入学し教育工学を専攻。11年、早稲田大学大学院人間科学研究科修士課程を修了。11~12年、早稲田大学人間科学部eスクールで教育コーチ職に就き、学生の卒論指導などを担当。

11~14年、財務省、総務省で統計学研修講師。12年、京都精華大学マンガ学部非常勤講師。13~21年、京都精華大学マンガ学部および国際研究センターにて教授。22~23年、ヒューマンアカデミー・ヨーロッパにてフランス人学生にマンガ制作を指導。

近著に『ゲームセンターあらし 炎のベストセレクション』(小学館)、『こんにちはPython』(日経BP)、『コミカライズ魂』(河出書房新社)がある。日本マンガ学会、日本推理作家協会会員。

[監修者]
神津信一(こうづしんいち)

東京都出身。1968年、東京都立日比谷高等学校卒業、69年に慶應義塾大学経済学部入学。79年に税理士試験合格し、翌年、神津信一税理士事務所を開設。98年に慶應義塾特選塾員となる。2010年、KMG税理士法人(現 神津・山田税理士法人)を設立。11 ~ 16年、東京税理士会の会長を務める。15年、東京出身者として42年ぶりに日本税理士会連合会の会長に選出され、インボイス制度等の税制改革に貢献。4期8年活躍し、23年に退任した。19年に旭日中綬章受章。

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