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嫉妬する書籍 〜「数字の翻訳」〜

「これを言語化している人がちゃんといるんだ」

それが最初の感想。読んでみると、私の広めたいことが、私より遥かに高いレベルで書かれていました。嫉妬するほどに。

数字の活用に課題を感じている人はぜひ読んでください。


『数字の翻訳 〜スタンフォード経営大学院教授の「感情が動く数字」の作り方〜』
チップ・ヒース/カーラ・スター (著)
櫻井祐子 (訳)


少しだけ私の話を。

私の開発した企業研修プログラムの中に、「数字で伝える・説得する技術」というものがあります。おそらくこれまででもっとも企業の研修やビジネスセミナーに採用されてきた、「人気プログラム」と言えるものです。そのプログラムの中で、私は「エモい数字」という概念を提唱しています。

「成果を出すビジネスパーソンは正しい数字で伝えるのではなく、エモい数字で伝える」

ビジネスパーソンにとってこの「エモい数字」という考え方はとても新鮮のようです。数字というものに冷たく無機質な印象を持っていた人が、とても血の通った温かい言語という認識に変わる。この意識改革ができると、ビジネスにおける数字の活用、とりわけコミュニケーションにおける数字の活用に革命が起きます。

…みたいなことを完璧に説明しているのが、ご紹介した「数字の翻訳」です。完璧に説明しているのは私ではありません。「数字の翻訳」です。

勉強不足で恥ずかしい限りですが、スタンフォード経営大学大学院教授が「感情が動く数字」について研究し、教えていることを初めて知りました。妙な表現かもしれませんが、嬉しかったです。冒頭のあの言葉はそのような理由から生まれた感想といえます。

「これを言語化している人がちゃんといるんだ」

どんなことが書かれているか。

たとえば、日本には「イナバ物置」という物置のメーカーがあります。私と同じくらいの世代ならば、あまりに有名なテレビCMとキャッチコピーをご存知でしょう。

「やっぱりイナバ、100人乗っても大丈夫」


ものすごい重さにも耐えられる、頑丈な物置であることの訴求です。しかし実は、重さに耐えられることの表現は、正確な数字と単位が存在します。「100人乗っても大丈夫」はあまりに大雑把で、乱暴な表現とも言えます。正確さという観点から言えば。

しかしイナバ物置は、重要なプレゼンテーション(テレビCM)の場において、「100人乗っても大丈夫」を選びます。いったいなぜ??

…という問題提起に対する答えと、理論、具体例が示されています。繰り返しですが、私のコンテンツより遥かに高いレベルで。

今後、類似の研修やセミナーの講師をする際は必ず本書を推薦図書としてご紹介しようと思っています。私の研修で学んで、課題図書として本書を読めば完璧でしょう。この記事をお読みのあなたも、興味があればぜひ読んでみてください。

文脈を完全に無視して、最後にひとつの問いをあなたに。

「フローレンス・ナイチンゲール。この人物は何がすごかったのか、あなたはご存知でしょうか?」


余談。

本書は担当編集者であるダイヤモンド社の今野良介さんからご献本をいただきました。私のビジネス数学と親和性があることを感じてのことでしょう。でもそれは当然なのかもしれません。

今野さんはかつて私の著書『わけるとつなぐ』(ダイヤモンド社)を担当してくださった方でもあります。著者・深沢真太郎をよく理解してくださっている方。ご献本そのものも大変嬉しいことですが、その背景にある物語に感慨があります。ありがとうございました。

そういえばかつて今野さんと、「たとえばなし」の説得力や説明力について対話があったことを思い出します。物事を別の何かにたとえるとは、一体どういうことなのだろう。私にとって、人生において初めていただいた問いでした。

私は力不足だったため(そのときは)その答えは出なかったかもしれません。しかし今野さんの中ではずっとこの「たとえばなし」に関する探究心や熱量が残っていたのかも。なぜならこの「数字の翻訳」で語られていることと、「たとえばなし」に必要なことは同じだからです。




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