今野良介|編集者

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今野良介|編集者

書籍編集者。aikoを聴きます。写真を撮ります。 【全編集担当作一覧】 booklog.jp/users/aikonnor

マガジン

  • 日常の編集

    書籍編集者が、生活者として考えたことを書きます。月2回は更新します。

  • aiko雑記

    aikoについて。不定期。

  • 会計の地図

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    2021年3月16日発売『会計の地図』(ダイヤモンド社・刊)を、全文無料公開するマガジンです。全200ページを22の記事に分割して、順次公開していきます。 本のお買い求めはこちらから↓ https://www.amazon.co.jp/dp/447810557X

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拝啓2018年9月13日のaiko様

久しぶりです。今日は1人で来ました。たまたま連れが来れなくなって。高校生の時に、陸上競技の大会前に初めて来たのも1人でした。あなたに会いにNHKホールに来るの何度目になるかな。最近たまたま近くの会社で働くことになって。今日は会社から歩いて来ました。 薄闇にそびえる丹下健三の遺物を横目にウキウキステップ気味で歩いて、会場着きました。入口、500人くらいワイワイしてます。春日部あたりに住んでそうな、50代の夫婦がいます。ロックが好きそうな寡黙そうな1人で来てる男性がグッズのタオ

    • 会葬礼状

      葬儀は儀式であり葬儀屋は数が求められるビジネスなのでシステムが洗練されていて、いまはあらゆる工程に葬儀屋が用意したテンプレートがあります。ただ、今回、会葬礼状だけはテンプレを断って自作しました。「礼状」なので参列者への礼を述べるものですが、慣例を逸脱してひとつ「お願い」を入れました。 後日、何人もの方から「返信」が届きました。それは、いちばんそばにいたはずのわたしが全く知らない物語ばかりでした。終わりを始まりにすることが、いわゆる「喪の仕事」における大切な要素なのではないか

      • 父が逝った日記

        父が逝った。あれ以来、北枕で寝ている。 晩年と言うには長すぎる15年間、闘病した。肝炎からの肝硬変、脳梗塞、脳梗塞、脳梗塞の後に胃癌が見つかり、胃の全摘手術が成功してまもなく肺血栓塞栓症で逝った。 『夜と霧』とか『はだしのゲン』とか、ボブサップにマウントから拳を振り下ろされ続けた高山善廣とか映画『アレックス』の消化器で顔面を破壊するシーンだとか、人が徹底的に傷めつけられる描写を目にすると虫唾が走り、正気を失いそうになるほどのやり場のない殺意に近い衝動が生まれる。致死級のヘ

        • 「モテたい」ですか

          「モテたい」というのがよくわからない生涯を送ってきました。 とくにヘテロセクシュアル・シスジェンダーの男性と飲み会とかでその話になると、わたしもヘテロのシス男性であるはずなのだが全く同意できない上に話を合わせないので、蚊帳の外で中に入りたくもないままフワフワそこらへんをモスキート級に浮遊しています。 「嘘つくな。気取りやがって。モテたいだろ、誰でも。男なら」と有無を言わせぬ感じになってしまうんですよね。多様なジェンダーが表面化してきたからって安易に仲間を作ろうとすんじゃね

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          「呼び捨て」と「敬称略」 : 無料記事

          「敬称略の敬意」があまり通じない。 俺が、 などと書いたときに、 「そこはaiko"さん"と書かないと失礼ではないのか」 と言われる。あなたはaikoかと言いたい。 たとえば、歴史上の人物に敬称はつけない。日本史の教科書に「織田信長さんが安土城を築城し」などと書いてあれば違和感があるし、「ソクラテス様の口述をプラやんが筆記し」などと書いてあれば「知り合いか」と言いたくなる。プラやんは愛称だけど。 歴史上の人物に敬称をつけなくてもいいと思う最もわかりやすい理由は「決

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          本と金

          勝手な決意表明なんですが、「安い本」を作るのはもうやめようと思っています。 どの業界もそうだと思いますが出版業界も紙代の高騰や流通の問題などがあり、価格を下げることがどんどん難しくなっています。人々が「本を買う」ことの優先順位は下がり続け、トップミュージシャンのMVがYouTubeで軒並み数億単位の再生数を稼いだり書店ではなくTikTok経由で本と出会う人が増えたりする中、「読書」という行為の相対的なポジショニングを考えない限り、どれだけ手間をかけて作ろうが誰の目にも触れず

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          待つことのコスパ

          わたしは速読ができない。というよりも速読が嫌いです。 「本を読む」というのは、言葉に圧縮された何かを自分の中に眠る体験でゆっくり解凍していくような趣があります。小説を読んでいるときに一度も思い出すことのなかった同級生の顔が浮かんだり、エッセイの一節が旅行先で心に焼きついた風景をバレンで擦るように浮かび上がらせたり、ビジネス書を読んでいていつかの限りなくパワハラじみた役員の言動と表情がフラッシュバックしたり。 目の前の言葉と体験の記憶がゆっくり結びつくところに自分にとっての

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          本と子ども

          「日常の編集」というマガジンを始めます。 書かないと考えられません。でも最近書いているものと言えば仕事に直結するメールばかりで、ちょっと窮屈になりました。40過ぎてあと半分も生きられない直感があるので、自由に書きたいことを書く場所にします。 わたしにとっての編集のおもしろさというか生きてることのおもしろさは「異質なもののあいだに接点を発見する」ところにあります。本の企画がそうですし、人との出会いもそうですし、ダジャレもそうです。なので、そういう視点で書いていきます。 ま

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          書く習慣が、「聞く力」を支える。

          「人の話を聞けるようになるにはどうすればいいか」と質問されることがある。 人の話を、最後まで聞ききることができない。 人の話を、純粋におもしろがることができない。 途中で自分の話を挟んでしまう。 正直、自分の話を聞いてほしい。 聞けなくて自己嫌悪。 そういう悩みからくる質問である。 わたしはいわゆる「聞き上手」でもなければ、カウンセラーでも弁護士でもレンタル何もしない人でもないが、人の話を聞けないとやっていけない職業に就いているから、経験的に確信に近い考えはある。 人

          書く習慣が、「聞く力」を支える。

          匿名の言葉が人を殺す

          Twitterにおける匿名の悪意について。 Twitterは俺にとってひとりごとを流す場で、自分の考えを整理したり、物事を自分なりに捉え直したり、自分を元気づけるために使っている。しかしTwitterは「ひとりごと」のためだけに作られていない。「つぶやき」という表現もほとんど使われなくなった。 そもそものTwitterのアルゴリズムは、大まかに「ニュースの発見」と「ポジティブな会話」を促すように設計されていると感じている。結果として自分のタイムラインは「自分自身の広告」に

          匿名の言葉が人を殺す

          Everybody finds love, In the end.

          友人の母が亡くなった。 2年半前、こういう文章を書いた。読んでいただかなくていい。 人生で最初に友達になった、幼稚園の同級生5人と今も関係が続いていて、その中のひとりの母が、また去った。それだけの話である。 別の1人の母親は、彼女が40歳付近の時に亡くなっている。俺たちはもう40だから、「もう誰が死んだっておかしくないよな」という話をした。人の死に触れることは、自分の死を思うことだ。自分が、死の連鎖としての人類史の砂粒の一つであることを教えてくれる。 一方で、3歳で出

          Everybody finds love, In the end.

          撮った理由を考える

          引き続き撮っています。 「なぜそれを撮ったのか」はあまり語られない。語る必要もないし、それを言っちゃあおしめぇよ的な向きもある。ただ、自分でも理由がよくわからないまま撮って逃れようのない具象になるのが趣味としての写真の楽しさで、正解のない理由を探しにいく時には抽象としての言葉の出番だ。 ちょっとアホみたいに、キャプションに撮影の意図を添えて32枚載せます。 見ての通り横浜周辺です。 近所や通勤路付近や知り合いを撮るのは、見慣れたはずの景色に異なる見方を発見する訓練にな

          撮った理由を考える

          写真が撮りたい

          毎日撮ってる。首から提げてる。 カメラ買って写真を撮り始めて2ヶ月が経った。 そのまま狭い小料理屋に入ったら料理長に「写真家さんですか?」と聞かれて煮物を噴いた。見た目の態度がデカいとそういうことになる。それくらい中尾彬さんのネジネジストールみたいにして常にカメラを持ち歩いている。 常に持ち歩くのは撮りたいときに撮れるようにしておきたいのと、昨日撮っているのに今日最初にファインダーを覗いて昨日の感覚が戻ってくるまでにはかなりのタイムラグがあるからだ。 陸上競技をやって

          写真が撮りたい

          シャッターとリロード

          今野良介です。38歳。写真を撮り始めました。カメラを買ったんです。新宿で。2週間前に。Nikonの軽いミラーレス。 たぶん1年後には目を覆いたくなる内容になるのですが、2週間で感じたことは今しか書けないので記録しておきます。 なぜカメラを買ったiPhoneを持ってから、ずっとスマホで写真を撮っていました。カメラを買う前にスマホに残っていた写真は61,000枚ありました。作った本とか食べたものとか、動物とか友達とか酒とか徐々にハゲていく頭部の変遷とか、家族とかが写っています

          シャッターとリロード

          読んでから書こう。

          知識は呼吸だ。 吸って、吐く。 入れて、出す。 吸う前に吐こうとするから苦しくなる。 自分の中には何もない。 「心に残った大切なことを書こう」 そうではない。 たっぷり吸って、要らなくなったものを吐く。 とどめておけなくなったものが出てくる。 心に残ったものは、もう残っている。 ほんとうに大切なものは、書けないものだ。 あなたに知られることなく、身体が勝手に吸収している。 読む前に書かなくていい。

          読んでから書こう。

          3人で本をつくる

          『子どもが「学びたくなる」育て方』という本をつくった。 「教育」の本。幼児期から思春期までの「子育て」の本。おもに小中学生のお母さんお父さんそのほか保護者のみなさんに読んでほしい本だ。ということは小学生前の子の親であるあなたにも読んでほしい。 「親が望む進路に導く方法」ではなく、「子ども自身が望む道」を見つけるために「親ができるいちばん大切なこと」を伝えていく。 誰が。 横浜に「知窓学舎」という小さな学習塾がある。いま教育界で注目されている「探究型学習」を27年前から

          3人で本をつくる