今野良介|編集者

書籍編集者。aikoを聴きます。写真を撮ります。 【全編集担当作一覧】 booklo…

今野良介|編集者

書籍編集者。aikoを聴きます。写真を撮ります。 【全編集担当作一覧】 booklog.jp/users/aikonnor

マガジン

  • 日常の編集

    書籍編集者が、生活者として考えたことを書きます。月2回は更新します。

  • aiko雑記

    aikoについて。不定期。

  • 会計の地図

    • 27本

    2021年3月16日発売『会計の地図』(ダイヤモンド社・刊)を、全文無料公開するマガジンです。全200ページを22の記事に分割して、順次公開していきます。 本のお買い求めはこちらから↓ https://www.amazon.co.jp/dp/447810557X

最近の記事

  • 固定された記事

拝啓2018年9月13日のaiko様

久しぶりです。今日は1人で来ました。たまたま連れが来れなくなって。高校生の時に、陸上競技の大会前に初めて来たのも1人でした。あなたに会いにNHKホールに来るの何度目になるかな。最近たまたま近くの会社で働くことになって。今日は会社から歩いて来ました。 薄闇にそびえる丹下健三の遺物を横目にウキウキステップ気味で歩いて、会場着きました。入口、500人くらいワイワイしてます。春日部あたりに住んでそうな、50代の夫婦がいます。ロックが好きそうな寡黙そうな1人で来てる男性がグッズのタオ

    • 自作カクテル13レシピとその写真

      家族が寝たあとでぼんやり1日の出来事を思い返しています。生活の中で心が動いても明日になると忘れてしまうので。 そういう時はだいたい酒を飲んでいて、今夏は缶ビールではなくカクテルを自作していました。何かを作っていると無心になれてよいです。料理する人もいると思いますが、1日の終わりに料理だと胃もたれするし家族にぶっ飛ばされかねないので軽めのカクテルくらいがよいです。 写真と一緒にレシピをまとめます。どこにでもある材料でできるやつです。正式なレシピを少し外してます。よかったら作

      • 子どもの「反復」を責めるな

        子どもが同じことばかりしていると、親として少しヤキモキすることがあります。同じ服ばかり着るとか、同じものばかり食べたがるとか、ずっとゲームしてるとか。他の服も着なよ、いろいろ食べなよ、目が悪くなるよ、とかの小言が口を衝いて出そうになります。しかし、大人はどこかで「それは言わないほうがいい」とわかっているはずです。 同じことを繰り返す子どもを見るとき、「これは何か危機的な状況から自分を守っているのではないか」と思うと、見方が変わります。子どもは基本的に元気だし、元気な時はむし

        • 誹謗中傷の投稿に共通する2つの特徴

          実名顔出しの芸能人が実名顔出しの芸能人を誹謗中傷した件と、パラアスリートを誹謗中傷していた匿名アカウントの正体が同競技のライバルであるパラリンピアンだったという件が続いた。実名匿名の問題は置いて、「あえて不特定多数の人から見える場で個人攻撃する」という点で共通している。 誹謗中傷が社会問題化するのは当事者と関係のない大量の他人が加担した時であり、関係ない人が加担するのはもちろん良くない。ただ、根本的な問題は、他人の見ていないところで直接本人に言えない弱さを、関係のない他人を

          ¥400
        • 固定された記事

        拝啓2018年9月13日のaiko様

        マガジン

        • 日常の編集
          初月無料 ¥500 / 月
        • aiko雑記
          3本
        • 会計の地図
          27本

        記事

          メモリと記憶

          また訃報。眠っていた記憶がよみがえる。 2012年製のiMacを処分することにした。iTunesとApple IDからサインアウトし、初期化する。眠っていたメモリを削除しながら、このiMacで作った本のことなどを思い出す。感慨と言えるほどのものではないので、業者に渡せば二度と思い出すことはないだろう。わたしは機械と一体化せず、切り離された外部記憶はわたしの肉体と接続しない。 人が死ぬと脳内のメモリが一度だけ強制的に再起動する。あんなことを話したな、あんな表情をしていたな、

          ¥300

          メモリと記憶

          ¥300

          再現性のないグラス

          へちかんだグラスというものを買った。 「へちかんだ」とは飛騨の方言で「歪んだ」の意味であるそうだ。吹きガラス職人が手を怪我していたときに歪んだ失敗作にヒントを得て、意図的に整っていない形を完成形としている。だからすべてが一点物である。再現性がなくて、個性がある。展示された数ある中からわたしは懐かしい牛乳瓶のような個体を選んだ。 そこに、コンビニに再現性のある形で並んだ板氷を買ってアイスピックで砕き、再現性のない形にして再現性のない組み合わせで投入し、再現性によって大量生産

          ¥300

          再現性のないグラス

          匂いの螺旋

          帰ると娘が俺の寝室のエアコンを19℃に設定して最強風速でガンガンに冷やしていて、勘弁してくれとリモコンに手を伸ばした瞬間に物凄い郷愁に襲われた。35年以上前に嗅いだ、生家の寝室の匂いがしたのだ。 幼い頃、俺が同じように、木造の部屋を木製の旧型冷房の最低温度で冷やした部屋の匂い。あれは黴の匂いではなく、人の生活空間を一定の温度まで冷やした匂いだったのか。 無数のぬいぐるみと箪笥と布団が置いてある部屋の匂い。豆タンクみたいに、ミニクーパーみたいに小さいが力の強かった親父と相撲

          ¥300

          ここ半年の写真50枚+5枚

          このマガジンのタイトルは「日常の編集」としましたけど、「写真を撮る」というのは日常の編集そのものだなと思います。 今年に入って撮った写真の中から、自分が好きな50枚と雑感をランダムに載せます。写真日記です。 亡き義母のガラケーのデータを復元した。俺の知らない妻の写真が出てきて、いっしょに見た娘は、自分が生まれるずっと前の世界が存在していたことを不思議に思っているようだった。 結婚記念日。家にいると「夫」や「父」や「妻」や「母」を演じているので、たまに二人で飯を食うと新鮮

          ¥500

          ここ半年の写真50枚+5枚

          ¥500

          会葬礼状

          葬儀は儀式であり葬儀屋は数が求められるビジネスなのでシステムが洗練されていて、いまはあらゆる工程に葬儀屋が用意したテンプレートがあります。ただ、今回、会葬礼状だけはテンプレを断って自作しました。「礼状」なので参列者への礼を述べるものですが、慣例を逸脱してひとつ「お願い」を入れました。 後日、何人もの方から「返信」が届きました。それは、いちばんそばにいたはずのわたしが全く知らない物語ばかりでした。終わりを始まりにすることが、いわゆる「喪の仕事」における大切な要素なのではないか

          父が逝った日記

          父が逝った。あれ以来、北枕で寝ている。 晩年と言うには長すぎる15年間、闘病した。肝炎からの肝硬変、脳梗塞、脳梗塞、脳梗塞の後に胃癌が見つかり、胃の全摘手術が成功してまもなく肺血栓塞栓症で逝った。 『夜と霧』とか『はだしのゲン』とか、ボブサップにマウントから拳を振り下ろされ続けた高山善廣とか映画『アレックス』の消化器で顔面を破壊するシーンだとか、人が徹底的に傷めつけられる描写を目にすると虫唾が走り、正気を失いそうになるほどのやり場のない殺意に近い衝動が生まれる。致死級のヘ

          父が逝った日記

          「モテたい」ですか

          「モテたい」というのがよくわからない生涯を送ってきました。 とくにヘテロセクシュアル・シスジェンダーの男性と飲み会とかでその話になると、わたしもヘテロのシス男性であるはずなのだが全く同意できない上に話を合わせないので、蚊帳の外で中に入りたくもないままフワフワそこらへんをモスキート級に浮遊しています。 「嘘つくな。気取りやがって。モテたいだろ、誰でも。男なら」と有無を言わせぬ感じになってしまうんですよね。多様なジェンダーが表面化してきたからって安易に仲間を作ろうとすんじゃね

          ¥300

          「モテたい」ですか

          ¥300

          「呼び捨て」と「敬称略」 : 無料記事

          「敬称略の敬意」があまり通じない。 俺が、 などと書いたときに、 「そこはaiko"さん"と書かないと失礼ではないのか」 と言われる。あなたはaikoかと言いたい。 たとえば、歴史上の人物に敬称はつけない。日本史の教科書に「織田信長さんが安土城を築城し」などと書いてあれば違和感があるし、「ソクラテス様の口述をプラやんが筆記し」などと書いてあれば「知り合いか」と言いたくなる。プラやんは愛称だけど。 歴史上の人物に敬称をつけなくてもいいと思う最もわかりやすい理由は「決

          「呼び捨て」と「敬称略」 : 無料記事

          本と金

          勝手な決意表明なんですが、「安い本」を作るのはもうやめようと思っています。 どの業界もそうだと思いますが出版業界も紙代の高騰や流通の問題などがあり、価格を下げることがどんどん難しくなっています。人々が「本を買う」ことの優先順位は下がり続け、トップミュージシャンのMVがYouTubeで軒並み数億単位の再生数を稼いだり書店ではなくTikTok経由で本と出会う人が増えたりする中、「読書」という行為の相対的なポジショニングを考えない限り、どれだけ手間をかけて作ろうが誰の目にも触れず

          ¥300

          待つことのコスパ

          わたしは速読ができない。というよりも速読が嫌いです。 「本を読む」というのは、言葉に圧縮された何かを自分の中に眠る体験でゆっくり解凍していくような趣があります。小説を読んでいるときに一度も思い出すことのなかった同級生の顔が浮かんだり、エッセイの一節が旅行先で心に焼きついた風景をバレンで擦るように浮かび上がらせたり、ビジネス書を読んでいていつかの限りなくパワハラじみた役員の言動と表情がフラッシュバックしたり。 目の前の言葉と体験の記憶がゆっくり結びつくところに自分にとっての

          ¥400

          待つことのコスパ

          ¥400

          本と子ども

          「日常の編集」というマガジンを始めます。 書かないと考えられません。でも最近書いているものと言えば仕事に直結するメールばかりで、ちょっと窮屈になりました。40過ぎてあと半分も生きられない直感があるので、自由に書きたいことを書く場所にします。 わたしにとっての編集のおもしろさというか生きてることのおもしろさは「異質なもののあいだに接点を発見する」ところにあります。本の企画がそうですし、人との出会いもそうですし、ダジャレもそうです。なので、そういう視点で書いていきます。 ま

          ¥300

          書く習慣が、「聞く力」を支える。

          「人の話を聞けるようになるにはどうすればいいか」と質問されることがある。 人の話を、最後まで聞ききることができない。 人の話を、純粋におもしろがることができない。 途中で自分の話を挟んでしまう。 正直、自分の話を聞いてほしい。 聞けなくて自己嫌悪。 そういう悩みからくる質問である。 わたしはいわゆる「聞き上手」でもなければ、カウンセラーでも弁護士でもレンタル何もしない人でもないが、人の話を聞けないとやっていけない職業に就いているから、経験的に確信に近い考えはある。 人

          書く習慣が、「聞く力」を支える。