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たとえばビジネスパーソンの研修や大学の講義などで損益計算をさせると、正解を出す人がいます。いいですね。私はその人に「説明してみて」と求めます。するとこんな反応がほとんどだったりします。

「いや・・・ちょっと無理っす」

「なんとなく答えが出ちゃったんで、ちょっと自信ないっす」

驚きます。だって、正解を出せているのです。自分では理解できているということではないのでしょうか。それを説明してと要求しただけです。正解を出せていない問題の解説をしろと言っているのではありません。正解した問題の解説をしてとお願いしただけです。私はこれがとても不思議でした。

こんなこともあります。ある研修において参加者たちに「何か質問はありますか?」と尋ねると特に何もない様子。ところが休憩時間や終了後に私が話しかけたり、ある種の「誘導」をすると彼らは私に質問をしてきます。なぜあのときにそれを質問しなかったのだろうと不思議に思ったり。

何度もこのような「症状」の方に出会うことにより、これはけっこう深刻なことを示していると思うようになりました。なんとなく思っていることはある。でもそれを自分以外の人に、わかるように、言葉にすることができないということだからです。

言語化とは、思っていることを、自分以外の人に、わかるように、言葉にすることです。(もちろんそれを伝えることでもある) 現代人は言語化ができない。仮にそうだとすると、繰り返しですがこれはけっこう深刻なことを示しています。ほかの教育者の皆様とも意見交換したいところです。学校や企業の現場ではどうでしょうか。

そんなことをちょうど考えていたとき、妻の本棚にこの本を見つけて思わず読んでみました。ここまでの話に何かを感じる方はぜひ読んでみてはどうでしょう。きっとヒントが見つかると思います。

『すごい言語化』木暮太一(ダイヤモンド社)


この書籍の中で、「ぼくらは言語化することを教えてもらってこなかった」という言及があります。その通りだなと思っていて。そのような背景もあり、私は数学の授業とは「解く」ではなく「説明する」ことを訓練する時間であるべきと思うようになりました。次のような言葉を公の場でわざと使うようになったのもそんな理由によります。

「数学とは説明である」

私が来月出版する新刊もまさにこれがテーマでして。これからの時代、とても重要なビジネススキルになるような気がしています。個人的に興味深いので探求してみようかと思っています。

ともあれ、言語化に興味のある方はまず『すごい言語化』、読むべし。


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